宇宙航行中「定員オーバーなので降りてください」とは言えないわけで…「密航者」の極限状況。
Netflix映画「密航者」(Stowaway)を観る。
極限状況に於ける人間のモラルを問いかけてくる。しごく真面目なSF映画であった。
火星に向け出発したロケットには、船長と医学者、生物学者の3人が乗っていた。彼らは2年かけてそれぞれのミッションをクリアする予定だ。ところが出発してほどなくして、機体内部に意識を失った黒人青年を発見してしまう。彼はエンジニアで、離陸前整備のため乗り込み作業中に昏倒し、そのまま出発してしまった、というもの。しかも彼の発見をした際、機内が損傷してしまい、最悪な状況に向かって進みだす。飛ぶ前にわからんのかよw。
とはいっても、乗っちゃったんだから仕方がない。ここで降りてくださいとも言えないから、クルーも受け入れざるを得ない。しかし、船長は頭を抱えていた。なにしろ、人数が増えたうえ、機体にトラブルが生じたため、酸素が足りなくなってしまったのだ。地球からの支援も間に合わない。彼らはいかなる解決を試みるか、という話。
まぁスーパーヒーローが助けてくれるわけではないので、クルーは迫りくる最悪の事態に向けて、持てる専門知識をぶつけ合う。生と死の宗教観や学者のエゴ、良心と犠牲の心など、「あなたならどうする?」の問いかけを直球で投げてくる。…のだが、さすがにキツい選択しかないんだよな。この決着は冒頭から予想通りのものだったため、途中の無謀なトライが物語としては段取り描写になってしまってるのが惜しい。
主演は我らがアナ・ケンドリック。20代の頃とは違う落ち着きがありました。いつも怖いトニ・コレットが船長さん。「LOST」のダニエル・デイ・キムが苦悩に満ちた生物学者をやってました。人間の闇部分(弱さ)を請け負うある意味悪役なんだけど、彼の存在が実に人間的でよかったかと。逆に招かれざる男(シャミア・アンダーソン)の「僕が悪いわけじゃないですし、まさか追い出さないすよね?」な厚顔がイラつくわ。
日本人だと解釈が変わるw。
監督はブラジルのジョー・ペニャ。これまた極限状況映画「ARCTIC 残された者ー北の極致」を撮ってる。未見だけど、つらそうだなぁ。
閉所恐怖症が卒倒しそうな船内と、音のない宇宙空間のみが描かれる。こういうのは音響のしっかり再現された映画館の方が向いている。