だめだ。やっぱり怖いよ「マラソンマン」…今回も「安全じゃない」です。
「Is it safe?」
こわーいナチス残党物で白眉なのが「マラソンマン」だ。74年にウィリアム・ゴールドマンが出した小説を自らの脚本で映画化した。小説はいま絶版で、文庫本がプレミアついてる。
76年にパラマウントが製作、ジョン・シュレシンジャ―が監督、プロデューサーには破天荒ロバート・エヴァンス(くたばれ!ハリウッドですね)。日本にBDはあるんだけどさ、U-NEXTで配信されてたもんで思わず。
主人公はヘタレな大学院生ベーブ(ダスティン・ホフマン。当時30代後半なので見た目に無理がある)で、彼はマラソンが生きがいだ。開巻、オリンピック記録映像(アベベ)に続いて、セントラルパークを走るベーブの姿をステディカムが追い、「マラソンマン」のタイトルが出る。って、スポーツ映画?かと思わせるも、一転してユダヤ人とドイツ人のジジイが衝突炎上事故シーンに続く。今なら老人同士のあおり運転トラブルですね。ただ、このドイツ人が元ナチ党員で貸金庫の「鍵」をもっていたことから、状況がかわっていく。金庫の中にある“何か”を狙って、殺し屋たちが暗躍し、サイコドクターが拷問し、身近な人を信用できなくなる。真相がまったく見えないのに暴力に見舞われる主人公は、とにかく走って逃げるだけ。
「安全か?」と聞く理由を最後まで教えてくれない恐怖の歯科医ゼル博士ローレンス・オリヴィエは、2年後の「ブラジルから来た少年」ではナチハンターになるわけで、2本続けて観ることのできるこの時代に感謝ですな。
今回再見して一番面白かったのはレストランのシーンで、聡明で金持ちの兄ロイ・シャイダーが弟の彼女の“嘘”を暴くところだ。一連の流れの中で、場にいる三人の性格が明解になるのが素晴らしかった。
また、「あの男、知ってるわ!」の展開から一気になだれ込む終盤は、昔観たときのことをすっかり忘れていたので、手に汗握ってしまいました。
やはり、歳とってある程度大人感覚が備わってから、昔観た映画を反芻するのは、ほんとに面白いね。発見もたくさんあるし。
彼女役のマルト・ケラーは本作、「ブラック・サンデー」「ボビー・ディアフィールド」「悲愁」などで印象に残ってる。