「YOLO 百元の恋」(热辣滚烫)を観て、贾玲の凄まじい実行力にたじろぐ。
「YOLO 百元の恋」(热辣滚烫)は今年2月10日に中国公開されたお正月映画で、累計興収が100元どころか34.6億元(約692億円)、動員が7200万人以上というメガヒット作品となった。
僕は上海出張タイミングがどうしても合わずに見逃した。会社の仲間たちは贾玲(ジャーリン)が行方不明になってたこと、驚愕のダイエットの物語だ、と僕にリコメンドしてきた。僕はジャーリンが著名な芸人(漫談師)なこと、「你好,李焕英」(こんにちは、私のお母さん)が傑作で泣かされたこと…くらいの知識がなく、ピントが合わなかった。彼女のお笑いネタはそもそもネイティブじゃないのでわかんないし。と、忘れてしまった頃に、この「YOLO」が春節に大ブームとなったわけだ。
元ネタは日本映画「百円の恋」なので話はわかるだろうと、出張時にネットで見てみたんだが、あ、こりゃ字幕あった方がいいな、と途中でやめてしまった。
それから5ヶ月、なんと日本公開されたのである。油断してた。これは行かないと。
まず、この映画、異常である。
贾玲演じるローインは、実家でニートしている怠け者の32歳。両親や妹と揉めて家を飛び出し、バイトを始めるが、その近所のボクシングジムで「なんとなくいい感じのボクサー男」と出会い、ジムに所属し男女の仲になる。それから色々あって男が去り、このままじゃあかん、人生変えなきゃと決意し、ジムで鍛えて試合に出ることを決意する。
そこから映画は確変する。あからさまに「Gonna Fly Now」が鳴り出し主人公(俳優)がみるみる50キロの減量をするのだ。それを特撮ではなくカメラがずーっと捉える。贅肉が削げ落ち、肌がキラキラと光出し、全身がシャープに切れ上がっていく。細マッチョになった彼女はリングに立つ。芝居でもボクシングは嘘がつけない。振り付けだけでは出せないリアリティが描出されていく。
フィクションでもモキュメンタリーでもない、味わったことのない感覚の、ものすごく珍しい映画なのであった。
結果、エンドロールも含めて贾玲は「私にもできたんだから、あなたもがんばろう」「人生、挑戦しないと!」と観客にメッセージを送る(彼女は監督も兼任)。ポジティブな姿勢は現代中国思想(理想)にマッチし、大ヒットにも結びついたわけで。
贾玲は82年生まれの42歳。2本立て続けに大ヒットを飛ばす、中国映画の代表者となった。
英題のYOLOは「You only live once」の略。そう、「人生は一回だけ」だ。
※「热辣滚烫」は熱くて辛いの意。
※※百元は約2000円w。