公認心理師メモランダム 映画『パーフェクトデイズ』とネガティブケイパビリティ 060915
最近、ネガティブケイパビリティについて、しみじみ考えてます。
ネガティブケイパビリティとは、“障害や悲しみ、トラウマなど答えが出ない事態に耐える力“と言い換えられましょうか。
服薬治療したからといって、精神疾患も障害もくっきり治る訳ではありません。
病気とどうつきあっていくか、心の傷を抱えながらどう折り合いをつけてもらうか、が大事。
人生のバランスを崩した方に、バランス取り戻すお手伝いができるか。
そんなことを考えている折、
函館シネマアイリスで『パーフェクトデイズ』を観ました。
上映前、50人ぐらい並んでいてびっくり。
普段、この類のヒューマンドラマに関して、シネマアイリスでは5〜6人が入ればよいほう。
単に、ヴィム・ベンダース作品ということではなく、テーマに遡求力があったからの集客でしょう。
いずれにせよ、色々な角度から語られ、解釈される作品です。
個人的にも、とてもささった映画でした。
もっぱら、ネガティブケイパビリティを駆使する男の物語として観ました。
主人公の平山(役所広司)の過去は、直接的には描かれません。
ただ、紆余曲折、苦難や理不尽にさらされうえで、心の平穏を求めてたどり着いたすえの生き方なのでしょう。
生活のリズムを整えることで、しんどい現実に対抗しようとする人。
柄本時生は、今回も良い味出してました。
ちょいちょい出てくる田中泯、印象的でした。
他のちょっとだけ出てくる登場人物のバックグランドも気になります。
例えば、神社で会うOLさん、助っ人の清掃人、ダウン症の男の子、カメラ屋のおじさんとか。
東京の景色も美しく撮られていて。
渋谷でトイレ清掃員として働く平山は、淡々と生活をおくっています。
朝暗い時間に目覚め、仕事の支度をし、空を見上げ、自販機でカフェオレを買い、働きに出ます。
一見、その日の朝は、同じことの繰り返しのようにみえます。
ただ、木漏れ日のように、同じ日は1日としてありません。
時々、思いがけない出来事がおきます。
平山は仙人でもありません。
しばしば心を揺らします。
シフトに穴が空いたら、
「どうして電話に誰も出ないの〜」「こんなこと毎日はできないよ〜」とイライラしながら本部に文句をいう人でもあります。
少し想いを寄せていたスナックのママが男性と抱き合っている姿をみたら、動揺してヤケ酒用缶500mlを3本買ってしまう。
何十年も吸っていないだろうタバコを吸って、むせちゃう。
最後、車の中で泣くのは共感できました。
音楽に触発されて、ふと感情が込み上げたのではないですか。
主人公が、車中や部屋で聞く曲はどれも良かったです。
ルーリードのPerfect Day も素晴らしかったけれど、何気に流れるPale Blue Eyesがなぜか沁みたなぁ。
linger on〜のくだり。