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【028】一番星みつけた

午後6時…随分と日が短くなった。
外に出て一煙いっぷくしながら夜空を見上げると、星が一つ。

一番星…金星か。。。

「一番星」なんてことばを久しぶりに思い出した。文字にした記憶もない。
淡く黄色がかったような金色が、ほのかに瞬いて見える。

今はホニャララ珈琲店Aにいて、後ろのテーブルの、二人の女子高生の会話に聞き耳を立てている。ときめかしい、恋愛談義に花を咲かせている。
カレ氏だか気になる男友達だか…意中の男子の心模様を推し量りつつ、どのように恋の駆け引きをしていこうか…そんなことを楽しげに話している。

なんか…いいなぁ。。。オジさん、素直にそう思う。
その会話に入れてもらおうなんて気はさらさらないけど…屈託のない恋愛談義…そんな時代もあったね…と、何十年も前の甘くて酸っぱくて、切なくて…でも楽しかった思い出が頭をよぎる。
色に例えると…一番星みたいな色?って無理やり話をこじつける。

「人生には3つの坂がある。上り坂に下り坂、そして『まさか』の坂」があり…学生の時、まさか自分の人生がこんな風になって行くなんて思ってもみなかったけど…あぁ、これも人生なんだなぁと「まさか」も含めて抱きしめたい気持ちに…今ならなれる。

午後7時…振り返れば、話し疲れた女子高生の一人はブランケットをかけてソファーで眠りはじめ、もう一人はノートを広げて勉強している。
なんか…いいなぁ。。。オジさん、やっぱりそう思う。
学生時代の他愛のない放課後のカフェでのひと時。

僕は席を立ち伸びをして、外に出てもう一煙いっぷくする。
夜空には二つ目、三つ目、四つ目と星が姿を見せだした。赤い星、青い星、白い星…いろんな色した星たちが、それぞれめいめいに瞬いている。

あの頃、未来は「一番星色」だと思っていたけど、大人になって段々とそうじゃないと知り、そしてオジさんになって初めて、自分の人生は他の何色でもない「自分色」でしかないことを悟る。

「こんどお泊り合宿来てや?」
目覚めた女子高生が、勉強してる女子高生にそう言った。
いいなぁ、いいなぁ。。。オジさん、羨ましくて仕方ない。
お泊り合宿で朝まで恋愛談義し放題か。

でも、ちょっと腹が減ってきた。
ので、今日はここらで帰ることにする。
女子高生よ、遠慮はいらねぇ…心ゆくまで、恋愛談義しててちょうだい。

…さて、オジさんは久しぶりにラーメンでも食って帰るかな。

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一番星みつけた(日本の童謡・唱歌)
 一番星みつけた
 あれあの森の
 杉の木の上に

 二番星みつけた
 あれあの土手の
 柳の木の上に

 三番星みつけた
 あれあの山の
 松の木の上に


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