『ハリー・ポッター』は日本では、内向型の、内向型による、内向型主人公の作品という感じだなあ・・・
『ハリー・ポッター』の映画でマクゴナガル先生を演じた女優のマギー・スミスさんが亡くなられてしまいましたね。ほどよいちゃめっけのある、キュートなおばあちゃん役がはまりどころな彼女は、わたしが好きな女優さんのひとりだったので、とても残念です。こころよりご冥福をお祈りいたします。
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『ハリー・ポッター』といえば、わたしは日本版の翻訳者である松岡佑子さんをインタビューしたことがあります。まだ『ハリー・ポッター』の第1巻が出版されて間もないころでした。
以下は一般によくしられた話かもしれませんが、松岡さんが『ハリー・ポッター』の翻訳を手がけるきっかけとなったのは、旦那さまの死だったそうです。
ケンブリッジ大学で学び、イギリス人男性と結婚されていた松岡さんは、しかしその最愛の旦那様を早くに亡くしてしまわれます。
そしてその死から、とても長いこと立ち直れずにいたそうです。
なんにもしたくなくて、ただただ脱けがらのように悲しみにくれる毎日。
「この本でも読んでみれば? 児童書なんだけど、いまとっても評判になってるの」
ある日、そんな松岡さんを心配した友人が渡してくれたのが『ハリー・ポッター』だったそうです。
松岡さんはその夜、ひと息に『ハリー・ポッター』を読んだといいます。
もう夢中になって読んだそうです。
さらに何度も何度も読み返します。
そして、すで翻訳者として日本の出版社でも活躍していた松岡さんは、このすばらしい本の翻訳を夢みました。
日本の友人に問い合わせると、まだ日本では出版されていないとのこと。
すぐさま松岡さんはJ・K・ローリングさんにアポイントメントを取りつけ、交渉に向かいました。
けれど、その時点でローリングさんの元には、すでに日本の超大手出版社からの申し込みが数件入っていたそうです。
対する松岡さんは一個人。
圧倒的に不利な立場です。
しかしローリングさんは、松岡さんのひととなりを知ると、熟考の末、大手出版社をあっさり蹴って、松岡さんを選んでくれたのでした!
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『ハリー・ポッター』シリーズの翻訳にさいし、松岡さんは、自身のイギリスでの生活経験をとおしてえた文化理解を最大限に生かして、非常に緻密で細やかな表現を心がけられました。
しばしばローリングさんと話し合い、ニュアンスを確かめ、訳し方をこまかく検討したそうです。
その翻訳のすばらしさは・・読めばわかりますね。
わたしがインタビューで対面した松岡さんは、とても穏やかな声をもち、物静かな話し方をするかたでした。
その後のご活躍の様子をみても、基本的に広くメディアに露出するタイプではなく、むしろ静かに作品と向き合いながら、自分のペースで着実に仕事を進めるタイプの方だったことがわかります。
それらの印象から推察すれば、松岡さんはおそらくは内向型のかたでしょう。
一方、『ハリー・ポッター』の作者のJ・K・ローリングさんも、内向型であることは、とても広くしられています。
ローリングさんは、シングルマザーとして働きながら子どもを育てるかたわら、突き動かされるように物語を書いていた人で。
あるとき、天啓を受けたように『ハリー・ポッター』の全ストーリーが最初から最後まで頭の中に降りてきて、あの作品ができたというのも有名な話です。
といったことをもろもろ考え合わせると、少なくとも日本においては、『ハリー・ポッター』の世界は、内向型の人間が創りあげた、内向型世界という感じですね。
なんといっても、主人公のハリーポッターが典型的な内向型ですからね。
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ああ、なんか、秋というとハロウィン。
ハロウィンといえば魔女とかカボチャ。
・・というイメージつながりで、『ハリー・ポッター』が浮かびます。
秋は深い思索にふける内向型的な季節でもありますし、マクゴナガル先生を偲びながら、時間をみつけて『ハリー・ポッター』を読み返してみましょうか。