漫画|ACCA13区監察課
臭うし害悪、でもアイコニック
組織に生きる、男たちの“粋”様
引用をアニメ版ACCAから用いたが、原作漫画の方の紹介文は決まって「男たちの"粋"様」とある。字面のかっこよさは強いが少々ひっかかる。
この物語のキーマンとなる女性、モーヴ本部長を忘れてはいけない。ある意味組織から外れる動きをとるが、最終的にはトップとなる人材だ。
馴れ合いを感じさせず、自分の心に従い、探り、動き、人を惹きつける。主人公も惹きつけられている女性だ。
モーヴは例えると分かりやすいバリキャリタイプ女性だが、組織の女性としてエイダーもいる。こちらの方がよくいう一般的な女性だろう。自身の監察課の仕事・区に誇りをもち順調を疑わず、視察にきたジーンにより部下の不正が発覚するところから物語はスタートする。部下を疑うジーンに最初は訝しげな目線を送っていたが、事件後はジーンを見直し、なつく。しかし物語終盤ではいつの間にか他の区のリーダーと恋仲になっている。憎めないタイプのかわいい女性だ。13区の最初のリーダーとして登場するエイダーは、13区というのはどういうもので、リーダーとは?という導入部として分かりやすく印象深いキャラクターだ。
何が言いたいか。男たちの"粋"様。そこ「男」関係ある?
たまにはおすすめに従うが吉
引用文章で思いがけず噛みついてしまったが、この漫画を読むきっかけをくれたのは別の漫画。
田素弘作『紛争でしたら八田まで』には毎度監修の東京海上某社のコメントが掲載されており、15巻はおすすめの漫画についてだった。『キングダム』が載っていたこともあり読んでいると官僚機構が動かす物語としてACCAが紹介されていた。アメリカンポップアートのような独特の絵柄に惹かれていたが未読だったためこれを機に手に取った。
そこには空気が描かれている
目元、口元、たばこの煙、風。セリフが決して少ないわけではないが、絵で多くの雰囲気を語ってくれる。小説でいうならば行間を読むということになるだろうか。言葉にすると野暮なような、そんな空気感を読み手に察しろと丸投げされたとしても味わえる心地よさがある。
たばこはこの物語(だけではなく後のBADONでもしかり)において重要なアイテムとなるが、もらいたばこのジーンが煙を燻らせる姿が多くの心情を語らずとも切なさややりきれなさ、安堵などの感情を共にすることができる。
今後もまあ吸うことはないが、この煙にかっこよさを覚えるシーン。
また、たばこシーン以外でのセリフなしの箇所では、神出鬼没な見守り役ニーノが不安げなロッタ嬢のそばに音なく表れ、音なく去っていくところが秀逸であった。
ニーノが物語の中で一番人生を他人に翻弄されているが、父親が好きだったチョコや幼少期にお気に入りだったりんごのケーキを大人になっても変わらず好きなものとして大事にしているところが少しほっとさせてくれる。自分にとって大事なものが大事だと分かっていてよかった。
読み終わったら3時のおやつはいらない
監察課ではゆるやかに10時と3時のおやつがきゃっきゃうふふと楽しまれている。同地区にある有名なお菓子屋のスイーツ、視察へいく副課長からのお土産のスイーツ。また13地区では流行るスイーツも違い、小麦粉ではなく黒パンが主流な北欧のような土地柄の違いも出て食事・おやつのシーンに表されている。
たばこだけではなくスイーツも、王室御用達のお店での邂逅、アーベントとロッタの貴重なツーショットなどの重要なシーンで介される。
読めば読むほどお腹がいっぱいになってくる魅力的なスイーツで物語は満たされている。
また、王子の側近もハマった食パン屋も美味しそうでにくい。密会場所が食パン屋なんて、なんてほんわかしている密会だろうか。全然落ち合うことはなかったが。