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「あ、これ落ちたら本当にやばいやつ」 〜珠洲市災害調査R6.10.10〜

「おはようございます」。小さく職場の同僚が挨拶する。

「おはよう」。少し眠い。
ゆっくりとメジャーや紅白ポールなど測量器具の用意をする。

10月中旬だが、北陸最北端の基礎自治体、石川県珠洲市では暗くなるのが早くなってきた。
現地での調査時間を確保するため、本日は事務所出発を少し早めに設定している。
眠い目を擦りながら、測量器具をトランクに積み込み、皆無言で車に乗り込む。


作業員であふれるファミリーマート

今日も森林の中を調査する。
林道が各所で寸断されることが予想され、長期戦を覚悟しているので、昼食は持参だ。

同僚がファミマでご飯を買いに寄りたいといったので、ファミマに行く。
朝早いが駐車場はすでにいっぱい。他県ナンバーのトラックや大型バンが停車している。最近は雨続きで現場が動かなかったところもあるせいか、天気のいい今日は皆出発が早いようだ。
コンビニの中も作業服を着た人でいっぱいで、皆、缶コーヒーや弁当を買い込んでいる。レジの前は長蛇の列だ。自分は昼食あるし、飲み物だけ買おうか。

長い列にならんでようやくレジに着くと、てきぱき店員が会計してくれた。
店員「ん?また今日も山行くんか?」
筆者「はい….。昨日も今日もですね」
店員「雨降ったから現場大変やろー。大変ね。怪我しないようにな。いってらっしゃい!」

店員さんに覚えられた。

↓ 参考

地震災害と豪雨災害の両方の被災

「手前に車止めて、そこから歩いていきますか…。」

山の入り口まで行けると思ったら、付近の河川氾濫の影響か、手前から道が流されており、車で横にもつけられなかった。もう少しで入口なんだけどな。

河川氾濫して集落に流れ込んだ水の大半は引いており、水害の被害が明らかになっている。
畑や田んぼの中には河川からの流木や枝条がかなりの量で堆積しており、一面が砂や泥でまみれている。この周辺が豪雨時にはすべて川のような光景となっていたことが窺えた。

畑・田んぼのみならず、道路の上まで泥に覆われており、付近の家屋も1階の壁面に乾いた泥が付着していることから、床上まで浸水したのだろう。
地震で倒壊した家屋は屋根まで泥が被っており、全体が浸水していた。

途中、自宅前で作業されていた年配の方から声を掛けられる。
「ご苦労さん。この先は長靴が要りますよ。スニーカーやらで行ったら濡れる」

何かの修理中だろうか、年配の方の足元には工具やポンプが広げてあった。

写真:河川氾濫で被災した田畑。奥に家屋があるが、車は白い車が止まってる箇所までしか侵入できない。

道「だった」箇所をひたすら歩く


今日の山道はしっかりアスファルト舗装がされているところだったが、地震による強力なエネルギーと豪雨による出水により、舗装が至るところ割れていたり、舗装ごと流されていた。

当然、車では侵入不可だが調査のため徒歩で延々進んでいく。
普通の登山と違って道「だった」ところの崩土の上や倒れたスギ・ヒノキを調査用具をたくさん抱えたまま乗り越えたり、くぐって進むしかなく、かなり負担が大きい。
豪雨災害が起きてから、ここに来た人間は自分たちだけであり、枝や笹が密生して障害になっているところは手鎌で除去し、啓開しながら進んでいく。
もちろん、怪我をするとすぐには帰れないため、皆慎重だ。

写真:破損したアスファルト舗装

進んでは崩壊、進んでは崩壊があり中々先には進めず、体力が削られていく。10月とはいえ歩いていると次第に暑くなる。

調査しながら4km歩いた時点で12時を回ったため、お昼ごはんを食べることにした。

「ここのアスファルト舗装は平らだから、ここで休憩しよう。やっと座れる…」
「周りからの視線が気になりにくい、プライベート感のある場所ですね」

キャンプ好きの同僚たちが言う。まあ、天気良いけど、ここまで人は来ないもんね。

座わると太陽の光で舗装の上は暖かい。少し緩やかな傾斜にもなっているので、足を投げ出して座れる。
しかし、両サイドの道は崩落しているし、ここだけ舗装が辛うじてあるだけで被災箇所には間違いない。こんな場所でご飯を食べるとは何という非日常感。

ペットボトルのお茶を飲みながら割れたままのアスファルト舗装を見下ろすと、20~30m級の切り立った断崖になっていた。
あ、これ落ちたら本当にやばいやつだ。こんなに高いところだったんだ。。
改めて危険なところにいると感じた。

※このあと結局4km歩いて下山した。

写真:路体崩落と斜面崩壊があった道
写真:両サイドが崩落したアスファルト舗装の上で、崩壊した斜面を見ながらのランチ。


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