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連載小説『私はカコキュウ 時空越え3

次の日、観光地ではなく、しかも危険でない山を探しました。
条件に合う山を見つけて、その中腹で私は姿を消して様子を伺っていました。
なかなか、登山者は現れませんでした。
時間を意識したことのない私にはじっとしているのがとても辛く感じました。

随分と経った時、やっと大きなものを体の後ろに背負って、前屈みで一生懸命に登ってくる人がやってきました。すぐに一人だと分かりました。
突然では驚かせてしまうので、私は徐々にその人の前に姿を表しました。
その人は気配を感じたらしく、下げていた頭を見上げるようにしました。
そして、私を目にするとびっくりして、

「俺、酸欠かな。疲れたんだなっ!きっとそうだ、休もう、休もう!」

と慌てふためいて荷物を地面に下ろし、キョロキョロしながらそばに大きな石を見つけ腰掛けました。
そこでその人の前に完全に私は姿を表しました。
もうその人は目がこれ以上大きくならないくらいに見開き、くちもパクパクと開け閉めして、腕は突っ張ったまま両手を一杯に広げ大きく左右に振っていました。
明らかに拒否されているとわかりましたが、私は

「お ど ろ か せ て す み ま せ ん 」

と言ってみました。自分ではとてもうまく話せたと思ったのですが、その人は

「え〜っ、え〜っ!」「あっ、お〜、や〜」

と訳のわからない言葉を言って、荷物も持たずに走り去ってしまったのです。
私は

『うまくいかなかったな、、、』

と思いました。
でもきっと次にはうまく行くと思い直し、再び訪れる人を長い間その場所で待ちました。
しかし、それきり人が来る様子はありませんでした。
さっきの人がもしかすると荷物を取りにやってくると思いましたが、それ切り誰も来ませんでした。
そして、その日は夜までずっとその場所に佇んでいました。

朝になると、大勢の人が話しながらこちらに向かってきました。
私は素早く姿を消して、その様子を見ていました。
すると、全ての人が今まで見たことがないような体全体を包み込むものを着ていました。
顔の部分にはマスクをしていました。防護服に猛毒ガスマスクだったのです。
そして、昨日の人が私のことを説明していました。

「ここです、ここです。この世とも思えない、あんな生き物は見たことがない、もちろんテレビのニュースで見てはいましたが、あれこそが宇宙人です。訳のわからない言葉も発していました!」

と必死に説明をしていました。
他の人たちは付近の写真を撮ったり、そこら中の地面をほって土を収集したりしていました。
その後、登山者が置きっぱなしにしていた荷物を大きな透明な袋に入れて、全ての人はその場から引き上げていきました。
私は姿を消したまま、皆の後をプカプカ浮いたまま着いて行きました。
電気機器がショートしてしまうので、絶対にテレパシーは使いませんでした。
山を降りると、皆が大きな車に乗り込みました。私は急いで車の上に浮かびました。

車が走り出し、そっと屋根に乗りました。
山ではほとんどが茶色や緑だったのに、車の上でゆっくり眺めると数えきれない色を見ることができました。
楽しい移動時間になりました。回りに見えるもの全てがパソコンの材料となりました。

そして再び、周りに建物が少ない所を走るようになりました。
間も無くすると山の合間にとても綺麗な大きなビルがいくつか集まったところに着きました。
車は一番手前のビルで止まりました。
皆は降りて、荷物も運びそこに入っていきました。
そこには”宇宙研究開発衛星センター”と書いてあるのが見えました。
私は宇宙人ではなく地球人ですが、ここの人ならわかってもらえるかも知れない気がしたのをよく覚えています。


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