連載小説『秘密の屋上 手相1』
手相1
次の日、マイと有美は会社であくびばかりしていた。
退社は別々になり、マイは一人で会社帰りにお弁当を買い込み、急いでマンションに向かった。
部屋で、さっさと着替えてお弁当とクッションを抱え、屋上に行った。
屋上に出てマイは、
「こんばんは、あっレイタさん、昨夜はどうしたの?途中で、消えちゃったね?友達は見えないって。どうしてだろう?」
と一気に話しかけた。すると、レイタが、
「昨夜は失礼しました。いや〜私もうっかりしていました。マイさんの友達だから、てっきり見えると思いました。」
と言った。マイは
「レイタさんを見えない人もいるの?レイタさんはそのこと知っていたの?」
と聞いた。レイタは、うなずきながら、
「そうなんです。見える人、全く見えない人、見えて怖がる人、見えなくても怖がる人と大きく分かれます。」
と言った。マイは、珍しく真剣だった。そして、レイタに
「理由ってあるのかな?」
と首を傾げながら聞いた。すると、レイタは、
「そうですね、、、。あっそうだ!マイさん手を出していただけますか?いや、手の甲ではなく、手のひらです。」
と言って、覗くようにした。マイは
「もしかして、手相?」
というと、レイタは、
「そうです。ちょっと見てみましょう。わからないかもしれませんが、、、大体の人に大きなはっきりとした3本の線がありますね?指の方を上とすると上から感情線、知能線、生命線、そして、何人かの人には手のひらの真ん中に縦線、運命線があります。」
と言いながら、光る指で、マイの手をなぞるようにして説明した。続けてレイタは、
「感情線と知能線の間で、中指の下の位置、ここに十字を示す線がある人がいます。あっやっぱり、マイさんはありますよ。この十字は神秘十字線と言います。この印は先祖、神仏の守り、霊感、第六感などを意味するんですよ。」
と優しく説明をした。マイはすぐに納得して、
「そうなんだ!じゃあ有美はこの十字の印がないんだね?」
と言った。
「そうだと思います。しかし、あれほど、全く気がつかない人も私は初めて会いましたね。普通は、見えないまでもちょっとゾクゾクしたり、ここから逃げ帰るとかの症状が見られますが、あっぱれでしたね、有美さんは。」
と笑いながら、言った。マイも
「流石だね、有美は!レイタさんに褒められたよって、明日言うね?」
と言いながら、お弁当を開けて食べ始めた。レイタはそれを見ながら、
「いや、友達に話したいでしょうが、秘密にしておいたほうがいいかもしれませんね〜。たまたま有美さんは、全く感じない人だったので、良かったかもしれません。」
と言った。
「どうして?」とムシャムシャしながらマイは聞いた。レイタは、
「まず、絶対有美さんには見えませんから、マイさんに不信感を抱くでしょう。そうなると友達関係も壊れちゃいますよ。これからは、有美さんだけでなく、誰にもこのことは内緒にしたほうがいいですよ。」
と言った。
マイはレイタの言葉に食べながらうなずき、
「そうだね、、、誰にも言わないことにする!『秘密の屋上』ってことにしようっと」
と明るい笑顔で言った。
そして、マイは気がついたように空を見上げた。
今夜は残念ながら雲が一面に広がっていて星は見えなかった。
そして、二人で取り止めのない話をして、楽しいひと時を過ごしマイは部屋に戻った。
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