連載小説『不思議な階段 3』
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丈二は不思議な階段現象が、祖父からの覚醒遺伝だと確信をしている。
祖父が魔法使いだったら、是非会ってみたかった。
祖父は外国ではなく、日本にいると思いたかった。
そして丈二はいつか、祖父に会えると自分に言い聞かせるようになった。
そんな気持ちが日本の老人施設調査に繋がったのだ。
探し出して、祖父に会ったらこの階段現象のことを詳しく知りたいし、もし正しい使い方があるのであれば、教えてもらいたかった。
今は失敗と同時に現れる階段を消えないうちに急いで駆け上がるやり方で、うまくはいっている。
しかし、祖父に会えれば、孫の丈二が能力を受け継いだことを知らせたり、この能力をもっと磨ける方法を教えてもらったりすることを強く願った。
そして自分が魔法使いだという確信が欲しかった。
同級生たちの新学期が始まった時に、丈二は気ままな一人旅に出発した。
日本全国の老人施設調査という名義だが、実は祖父探しの旅である。
バイトで買った中古車が大いに役に立つ。
旅は順調だった。
世の中は春休みも終わって、五月のゴールデンウイーク前なので、旅には穴場の時期であり観光客も割と少なかった。
その日、高速道路は車が少なく、快適なドライブを楽しんでいた。
時々、車の一団ができ、その一団が我先にと、丈二の車を追い越して行く。
全ての車が通り過ぎると丈二の車は一台だけになるという繰り返しをしながら、順調に走っていた。
その後、長い直線が続いた。
少し油断も加勢したのかもしれない。
思わぬことが起きてしまった。
前に一台赤い車が走っているのに気がついていた。
その車も群れを嫌い一団から外れて走っているらしい。
その時、目の前のスマホが着信メールを知らせた。
誰からのメールかな?と確認するのに、ほんの少しの間スマホに目を移した。
(なんだ広告メールか、、、)
と思い、目をフロントガラスに戻すと、目の前に赤い車が横になってこちらに向かっていた。
もう避けようはなかった。
二つの車がぶつかった瞬間に階段が現れた。
少し霧がかかった状態で階段が見えにくかった。
丈二は慌てて最初の一段を踏み外し狼狽したが、早くしなくちゃ消えちゃうと思い、駆け上がろうとした。
同時に後ろから大きな声が聞こえた。
「ごめんなさいね!ねえ、ちょっと待って!なんでそんなに急いでるの?」
と言う女性の声だった。
びっくりして振り返ると、霧の中から若い女性が現れた。丈二は
『えっ!!』
とただ驚くばかりだった。すると彼女は、
「完全に私のせいです。ごめんなさい。スマホを落としちゃって、片手を下に伸ばしたらハンドルが回っちゃったの。それでスピンしちゃった!本当にごめんなさい。」
と言ってきた。丈二は、
「いや、僕も行けなかったんです。あんなに空いているのに、前方不注意でした。しかも、僕もスマホに目を一瞬移していました。」
と言った。すると彼女は、
「それじゃあ、お相子にしてくださる?」
と、言い笑顔で、
「一緒に登りましょう!」
と言った。丈二は、
「そうですね!じゃあ早く行きましょう!」
と駆け上がろうとした。すると、彼女が
「なんでそんなに急ぐの?」
と丈二のシャツの袖を掴んで言った。丈二は、
「だって、階段が消えちゃったら、困るでしょ?」
と言うと、彼女は驚いた表情で、
「えっ?やだ消えないわよ。あまり乱暴に階段を上がると、階段がすり減って今にやりなおしができなくなっちゃうわよ。」
と言った。丈二はその彼女の言葉で、
(そうだ!この人も僕と同じことができているんだ!!)
と初めて気がついた。そして丈二は彼女に、
「階段って、すり減るんですか?」
と聞いてみた。すると、彼女が、
「そうよ。ママなんて、もうとっくにすり減って今では時々滑って、すごく時間がかかるんだって。」
と言うのであった。丈二は彼女から目が離せないほどびっくりして、
「お母さんもできるんですか!?」
と目を見開いたまま聞いた。
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