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連載小説『秘密の屋上 手相2』

手相2

そんなことがあってから、マイは屋上にいるレイタのことは誰にも言わなかった。
時々、友達に会って話をしていると、

(この人だったら、レイタさんのこと見えるかもしれないな、、、?)

と思うこともあったが、思いとどまって我慢した。
レイタのことを共有できる人がいたら、もっと楽しいだろうといつも考えていたが、レイタに言うとあまり良い顔はしなかった。
マイは、レイタがアドバイスをくれることに感謝しているので、
誰かに言うのはレイタを裏切ることになると思っていた。
だから絶対に誰にも言わなかった。

しかし時々、有美がまた屋上に行きたいと言ったときは、否定せずに連れてきた。その時レイタは、そばで二人の様子を黙ってニコニコしながらユラユラ見ていた。
マイもそれで、満足だった。
そんな日々が当たり前のように過ぎていった。

何ヶ月か経った頃、会社内で大騒ぎになる出来事があった。
なんと!ある社員が宝くじで大金を当てたのだ。
呑気な有美とマイが飛びつかないはずはなかった。
二人はまるで、自分たちが当たりくじを手にした気持ちになって興奮した。

まだ宝くじも買っていないのに、気持ちが浮ついているのが、傍目にもよくわかった。有美は独自の思い付きで、前を向きっぱなしの意見を言った。

「私たちさ、縁遠いのだから、神様は必ず金運の方を恵んでくれるのよ。」

と勢いつけて力説した。そして、それを受けてマイは

「そうなのよ!人間は皆、平等だからね。結婚運か金運よ!」

と、有美とマイは全く同じレベルでものを考えているようだった。
もう、信じきっている二人を止めることはできない話だった。

ところがそこから、有美とマイは違った方向に進んだ。
有美は早速その日、会社帰りに発売されている宝くじを50枚も買った。
有美の次に並んでいたマイは、列からちょっと外れて、

(そうだ!レイタさんに手相を見せてからにしよう!)

と思ったのだ。マイは列から完全に離れ、有美と一緒には買わなかった。
すると列から横にずれたマイを見て有美は、

「マイ、買わないの?お金持ってないんだったら、貸してあげるよ?」

と言ってきた。マイは

「うん、大丈夫。人にお金借りて買っても、当たらないと思うから、今日はやめておく。」

とうまく、誤魔化した。有美は深くは考えず、

「そう?残念だね、、、明日でも付き合ってあげるからね!」

と言って、自分は宝くじを手に入れ、もう当たっているかのようにルンルン気分を楽しんでいた。
地下鉄に乗っても、有美は夢見心地で話もせず、ニヤついていた。
マイもその様子を見ると、

(やっぱり、買えばよかったかな?)

と思ったが、やはりレイタの手相が気になった。

「じゃあね!」

と手を振りながら、地下鉄を先に降りたマイはマンションに着くと早速、レイタのところへ急いだ。

「レイタさん!ちょっと、聞きたいことがあるんだけど!」

と勢い込んでいうと、レイタは食べ物も持たず、着替えもせずに急いでいるマイを見て驚き、

「どうしたんですか?何かあったんですか?」

とびっくりして、体をユラユラさせながら言った。マイは

「私、宝くじを買いたいんだけど、手相を見てほしいのよ!」

と両手をいっぱいに広げて、レイタの顔の前に出したのである。
レイタは、びっくりして揺らしている体を真っ直ぐにし、マイを見つめていた。


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