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連載小説『秘密の屋上 手相4』

手相4

次の日、会社に行くと有美がマイに

「今日、宝くじ買う?付き合うよ、昼休みにしようよ、一緒に行ってあげるね?」

と言ってきた。マイは有美をじっと見ながら、

「ありがとう有美。でもね、私宝くじは買わないことにしたの。お金ないんじゃないよ、よく考えたの。その分今度のお誕生日に奮発して指輪を買おうかなって思っているの。だから、これからは日頃、お金を大事にしようと思ったの。」

と笑顔で有美に言った。すると、有美が、

「えっ!本当〜!どうしたの〜?買わないんだ〜。」

と勢いを削がれてしまって当惑したようだった。それを見て急いでマイは

「有美が買った宝くじ、当たれば良いね。私も当選しますようにって、祈っててあげるね!」

と、とびきりの笑顔を作った。

有美はそのマイの笑顔で、気をよくしたようで、

「うん!なんか当たるような気がするのよ。あっそうだ!もし当たったら、マイの指輪を買ってあげるよ!」

とウキウキになり、顔を輝かして言った。
その時に、マイは有美の手のひらを覗きたい衝動に駆られた。
しかし、そんなことを今更しても、すでに買ってしまった宝くじを当たりくじにできるわけでもないし、反対に水を刺すようなことになったらいけないと思い、やめた。

さて、二週間ほど経ったある日、すっかり宝くじのことは忘れていたマイに,
後ろから有美が近づいてきて、元気のない声で、

「マイは買わなくて良かったね、あ〜損した、、、50枚も買っちゃってさ〜」

とがっかり顔で言った。マイは宝くじのことだと、気がついて

「あ〜宝くじか、、、ダメだったの?そうなんだ。有美、本当に残念だったね。元気出してよ。そうだ!今日残念会しようよ!私がご馳走するから!」

と、笑顔で誘った。
その時マイはこのお金は大事な友達を慰める有意義な使い方だと思った。
有美も心なしか、マイの誘いでさっきよりは元気を取り戻したようだった。

「ありがとう〜マイ、指輪はプレゼントできなかったけどね、、、反対にご馳走になっちゃうなんて、、、最高だよ!!」

と、最後にはいつもの笑顔が戻った。
そして会社帰り、呑気な二人は行きつけのレストランで残念会を楽しんだ。
有美とマイは二人それぞれの、思い思いの、満足感を味わった。

すっかり元気になった有美と別れたマイはマンションに着くとすぐに屋上に行きレイタに報告をした。

「、、、それでね、有美が、すごく喜んだのよ。私もとっても良い気分。ねえ、レイタさん、今日のこの出費って、良い使い方だよね?」

とレイタを見上げて聞いた。レイタは、

「とても有意義ですよ、マイさん、ちゃんと考えてお金使ったんですね。その調子で常に、一呼吸おいてお金を使うようにすれば、段々と貯蓄も増えますよ。」

とニッコリしながら行った。マイは、

「レイタさんにそう言われると、すごく嬉しい、それだけ聞きたかったの。ありがとう。まだ、実際には貯金は増えていないけれど、絶対にこの気持ちは途切れないようにするからね!じゃあ、おやすみなさい、またね!」

とくるっと後ろを向き、階段に向かっていった。

レイタも、嬉しそうに、

「おやすみなさい。」

と言い、マイがいなくなるまでずっと見守り、その後スーッと姿を消した。

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