連載小説『秘密の屋上 出会い3』
出会い3
レイタに結婚線のことを言われたマイは
「え〜っ、うん、ちょっと好きな人ができたの。でも、向こうは全く私の気持ちは知らない。立場が違いすぎなの。私が憧れているだけなの。」
とマイは最後の声が小さくなった。レイタは頷きながら、
「そうですか、、、おそらくこれから出会いはとても良い方向に進みます。でも、あまり意識せずに成り行きに任せる方がいいです。マイさんの素直さで、今のまま仕事も息抜きも一生懸命、つまり楽しく生活していればいいです。簡単でしょ?」
と大きく、ゆらりとしながらレイタが言った。マイは
「了解です!ダメだと言われなくて良かった!なりゆき任せは大得意だから、安心した!」
と元気に言った。
その日は結構遅くまで、話が弾み部屋に帰ったらすぐに眠りについた。
会社では、今ではマイが朝礼を任されていた。
マイの大きな号令を先頭にして、皆の昌和が続くのだ。
マイの明るいその様子を炭崎室長は穏やかな目で見守っていた。
マイは室長に見られていることはわかっていた。
悪い気はしなかった。それより何より張り合いになった。
その日も、同じように朝礼が終わり、仕事が始まった。
すると室長から呼ばれたので、マイは緊張して室長室に向かった。
室長室に行くと、
「あっ、市田君、いつもご苦労様ですね。」
とマイを労った後、すぐに要件を話し出した。
「実は、先日の新しい企画がとても評判が良くてね。立川支社から、その企画の概要を詳しく聞きたいと言ってきたんだ。市田君!その役目をお願いできるかな?」
と炭崎室長はマイの顔を見ながら言った。
この企画はマイも関わっているので、説明や順序などは講義できる自信があった。そこでマイは
「室長、私でできるでしょうか?説明、順序は間違いなく講義できると思いますが、何か難しい質問、例えば予算のことなど質問されると全てにクリアできるか、少し不安がありますが。」
と本当のところを言った。すると、室長が、
「わかりました。説明、順序などの概要だけを講義する。予算などの説明は後日にすると、適用欄に添えておきましょう。市田君、頑張ってやってくれるかな?」と意気込みを感じるくらいに室長が声高らかに言った。マイは
「はい!」と言った後、
「それはいつ頃になりますか?」
と負けずに大きな声で聞いた。室長は
「立川支社では、他社より遅れをとっていて、その遅れを早く取り戻したいとの事なんだ。だから、なるべく用意が済み次第にお願いできるかな?」
と言った。マイは張り切って、
「わかりました。それでは今日一日で用意をし、明日にでも行ってきます。」
と室長の顔をまっすぐに見ながら言った。室長はニコニコして、
「そうしてくれると、助かるよ。突然の仕事なのに、ありがとう。」
と、とても嬉しそうだった。マイは
「それでは失礼します」
と言って、部屋を出て自分の机に向かった。
マイはそれまでにない仕事の面白さを感じながら、用意を万端に揃えた。
そして、少し遅くなったが室長がまだいたので、企画書を持ち尋ねてみた。
ノックをすると部屋の中から
「どうぞ」
という声が聞こえたので、マイは入った。
「室長、念の為に明日の発表企画書を見ていただけますか?」
と書類を室長のまえに置いた。
すると、室長は最初からしっかり目を通して見てくれた。
マイはちょっとドキドキしながら、何を言われるか不安だった。
最後まで目を通した室長は、
「市田君!君、よくできているよ。これだけ説明してあげれば、立川支社も大喜びだよ。ありがとう、それでは君、明日申し訳ないが頼みますよ。朝は、直接立川支社に行ってください。そして、悪いが帰りにこちらへ寄ってもらえないだろうか?結果も聞きたいしね。」
と室長が言った。マイは、
「もちろんです。では、室長、明日行ってきます!」
とにっこりして、マイは室長を見つめて言った。
室長はちょっと、ドギマギした様子で慌てて、
「はい!ご苦労様!」
とだけ言って、目を逸らした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?