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連載小説『秘密の屋上 屋上の秘密3』

翌日、マイは有美に昨夜のことを話した。有美は、

『へえ〜、マイはいいな! 私はまだ実家だし、屋上ないし。私の家は周りがみんな高いから屋根に上がったって星なんか見えないよ。』

と羨ましがった。マイは

『今度、うちにおいでよ。屋上でビールでも飲もうよ。』

というと、有美は笑顔いっぱいにして喜んでいた。
その日は残念ながらマイの方が残業で、帰りが遅くなった。
帰りに夕食を済まして、その日は屋上に行かなかった。

次の日マイはサンドイッチとビールを買って、帰宅した。
ラフな服に着替えて、夜のピクニックに出掛けた。
屋上に着くまで、誰にも会わなかった。
今日はコンクリートに置くクッションまで用意した。

夜空には雲ひとつなく、先日より明るい気がした。
一人だけなのに、とても気分がよかった。
コンビニのサンドイッチがこんなに美味しかったとは思いもよらない気がした。
ビールも飲んで、気分が広がったようだった。星も綺麗だし、

『あっ!あそこには月も見えるんだ〜。』

と上機嫌だった。とその時、ニューッと明るいものが目の前に出てきた。

『なに!え、な、なんなの!』

と言いながら、サンドイッチの袋や缶などをかき集めながら、顔だけは光るものの方へ向けていた。すると、

「こんばんは、私は勇崎 レイタと申します。」

と言った。マイがよく見てみると、その光は人の形だった。
その人は続けて、

「私のことを怖いですか?もし、あなたが怖いようでしたら、すぐに消えますが、いかがでしょうか?」

と聞いてきた。マイは

「勇崎 レイタ? 縮めるとユウレイですね? あっ、ごめんなさい。私、別に怖くないです。」

とニッコリと笑顔まで作った。その光る人は

「怖くないですか? いやー嬉しいですね、あなたがそう言ってくださると、ほっとします。そうなんですよ、私子供の時は随分、ユウレイ、幽霊といじめられました。」

と嬉しそうに言った。マイはビールを飲んでいるせいか気をよくして、

「私は市田 マイです。よくイチマイ、一枚って、言われたよ。ねえ、レイタさんって呼んでもいい? いつからここにいるの?」

と、その辺の人と話すようにマイは気楽に話し出した。レイタは

「レイタと呼んでください。私は最近ここにきたんです。どこのビルでも、人に怖がれましてね。住めなかったので一週間ほど前にここにきたんです。先日のあなたの様子を見ていたんですが、声をかけるのはやめたんです。今日、話しかけてよかったです。」

と体をユラユラ揺らしながら言った。マイはちょっと手を伸ばして、レイタを触ろうとしながら、

「そうなんだ、やっぱり怖がられたんだね。あっ冷たい!やだ、手は通り抜けちゃうのに、冷たく感じるんだ。」

と引っ込めた手を見ながら言った。レイタも驚いて、

「冷たいとは私も知りませんでした。だいたい、今まで私を見た人たちは驚いて逃げるばかりで、まさか触ろうとしたのはマイさんが初めてですよ。」

と笑いながら、楽しそうに言った。マイは

「私って、馬鹿だからごめんなさいね。どんなものなのか興味があってつい手が出ちゃったの。そうだ、もう遅いから私、下に戻るけど、一緒に来る?」

と屈託のない顔でマイは聞いた。すると、レイタは

「いや、いけないんです。私は室内に入ると、二度と姿を現すことができなくなっちゃうんです。せっかくのお誘いですけど、ごめんなさい。」

と頭を下げながら言った。マイは

「そうなんだ、全然気にしないで、レイタさんとまだ話したかったから、無理言っちゃってごめんなさいね。毎日は来られないかもしれないけど、なるべく夜はここに来るね。」

と、笑顔のまま言った。レイタは嬉しそうに、

「ありがとうございます。楽しみにお待ちしています。」

と言って、スーッとどこかに消えてしまった。
マイは、ゴミなどをまとめ、クッションと一緒に持って階段に向かった。

飛び切り良い気分になったが、その日はちょっと興奮気味で寝付くまで時間がかかった。

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