偏見日記#3


 やわらかい枕なのでおしりに敷いている。
 イケアで買った椅子にイケアで買ったクッションを載せているが、長時間座っているとおしりが痛くなってくる。いまこうして駄文を書き連ねているときもそうだ。じくじくと痛むおしりを保護するために、やわらかい枕をおしりに敷いている。

 みなさんはまくらをおしりに敷くことに抵抗があるだろうか。わたしはない。なので敷いている。だが、こんなわたしでも抵抗があった時期があった。たぶん小学生まではあったと思う。なぜなら、小学校までわたしは自宅以外では和式使器しか使えなかったからだと日本人はおしりに、西洋人は足の裏に、それぞれ素肌で触れ合うことに忌避感がある、という言説をどこかで聞いたことがある。ゆえに洋式便器の普及には時間がかかったし、西洋ではいまだに室内でも離を履くのだ(最近になって西洋人も室内で靴を脱いだほうが部屋が汚れないことに気が付いたらしいが)。

 いつ洋式便器を家の外でも使えるようになったのだろうか。たぶん、自分の目につく範囲で、洋式便器と和式便器の年数の差が顕著になり始めたころだと思う。他人のおしりが触れていたものにおしりで触れる忌避感より、不衛生な空間で用を足すことへの嫌悪感のほうが勝ったのだ。
 ヤンキー座りの姿勢を長く続けるのには結構筋力がいることも関係していると思う。軟弱な都会育ちの現代人にとって、ゆっくり安心して排便するには和式便器は下半身への負荷が強すぎる。
 洋式便器への忌避感が薄くなるにつれ、おしりが触れるものに対する意識も変わってきたのであろう。
 そんなことを妻に話していると、おしりに敷くならわたしのものを使ってほしいという謎の要望を受けた。どうも高さが合わなくて寝つきがよくないらしい。そういうことならと喜んで妻の枕をおしりに敷いているが、なるほどたしかに座面が数センチほど高くなって違和感がある。いつか潰れて低くなるのだろうか。引き受けてしまった手前座り続けてはいるものの、そもそも妻の持ち物なので屁をこくこともままならぬ。なるほどこれは「すわりがわるい」。

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