実は似た者同士な麻雀とボウリング

珍しい組み合わせのイベント

8月17日の土曜日にこんなイベントが千葉県の雀荘であるそうです。

雀荘なのでもちろん麻雀大会なのですが、その組み合わせが今までにないものです。

*麻雀プロ・・・松ヶ瀬隆弥選手
言うまでもなくMリーグのEX風林火山に所属する「繊細なる超巨砲」

*プロボウラー・・・岩見彩乃プロと幸木百合菜プロ
ボウリングファンからすると「のいちゃω」と「ゆりぽん」
ともにPリーガーであり岩見プロはピーナッツ千葉、幸木プロは愛媛オレンジサンダースに所属するio.リーガー

共通項はこんなにもある

全く違う競技である麻雀とボウリング、実は共通項がかなりあります。

★その競技の大会に出て得られる賞金で生計を立てるのはほぼ不可能

それゆえに、プロ雀士の場合だと雀荘にスタッフとして勤務する、麻雀を教える麻雀講師になる、実際にアマチュアの方と麻雀をしてファンとの交流を深めるゲスト活動といった、麻雀に関わる仕事をされている方がかなり多いです。
これがプロボウラーとなれば、ボウリング場にスタッフとして勤務する、ボウリング教室の先生、アマチュアの方たちと投げてファンとの交流を深めるプロチャレンジマッチということになります。

そして麻雀やボウリングと全く関係のない仕事をする方も多くいます。

麻雀はMリーグがあり、もしMリーガーとなれば年俸400万円以上が保証されるだけではなく麻雀界の人気者となるため、それこそゲスト活動を含めた競技以外の麻雀プロとしての活動でも引く手あまたとなり、Mリーガーになる前と今とでは収入が何倍も違うみたいな話も聞きます。しかしそんな人はほんのごく一部であって(現役Mリーガーは36人しかいませんし、元を含めても50人いません)、その点ではまだ発展途上の段階にあるのでしょうね。
しかしMリーガーになれば・・・という夢はあるので、この先も麻雀プロを目指す人が増えていくことでしょう。

ボウリングの場合、Pリーグやio.LeagueでMリーグのような最低年俸があるという話は聞いたことがありませんが、どうなんでしょうか?
Pリーガーやio.リーガーになれば、多少の恩恵はあるのかもしれませんが、Mリーガーほどではないでしょうね。
そういう意味で言えば、麻雀と比べてもまだまだ何歩も後ろにいるという感は否めないでしょう。

★女性が男性を倒すことができる

例えば大谷翔平選手がピッチャーで女性の世界レベルの野球選手がバッターの場合、その女性選手は大谷選手からヒットを打てるのか?とか、ウサイン・ボルトと女性の世界最速7人で100mを走った場合、女性選手はウサイン・ボルトより速く走れるのか?と言われたらどうでしょうか?(現在のボルトはすでに一線を退いていますが、競技者として全盛期の時だとどうかという観点です)

もちろんやってみないとわからないですが、恐らく女性選手は勝てないということになると推測されます。

実際に男性選手 vs 女性選手のガチ勝負と言われると、「女子プロレス界最強の男」という異名をとった神取忍選手が、男性トップレスラーの天龍源一郎選手に挑んだ試合が思い出されます。
結果は神取選手の思いを正面から受け止めた天龍選手が、神取選手を完膚なきまでのボコボコにする結果となっています。試合後の神取選手は、顔面がえげつないほどのお岩さん状態になっていましたね。

このように男性と女性がスピードやパワー、それに伴う瞬発力がモノを言う競技で競えば、概ね男性が勝つというのは想像がつきます。当たり前の話ですが、女性がトッププロで男性がただの素人みたいな、根本のレベルの差があれば話は別になりますが。

しかし麻雀やボウリングはどうでしょうか?

麻雀の場合、Mリーグはここまで6シーズンが行われて、レギュラーシーズン最多ポイント獲得者が獲得するMVPは男性3名女性3名で互角です。
歴代最高スコア記録は赤坂ドリブンズの鈴木たろう選手が持っていますが、それ以前の記録保持者はTEAM雷電の黒沢咲選手、その前はKONAMI麻雀格闘倶楽部の伊達朱里紗選手でした。
4着回避率1位も、2023-24シーズンは伊達朱里紗選手が獲得しています。

ボウリングは日本に男女混合のプロの試合がありませんが、プロボウラーが上げているYouTube動画では、男女が対戦しているものも多数あります。
見ればわかる通り、ハンデなしでも女性が男性を負かしているものが多数あります。

麻雀もボウリングも、男性と女性が互角に戦える競技であると言えますし、それが他の競技にはなかなかない特徴や魅力なのだと思います。

★競技開始年齢が遅くても問題ない

野球であれサッカーであれ、プロになるような人の競技開始はみな幼少期です。子供の頃からその競技を行っていて、かつその時期からすごい才能を見せつけているような人がプロになることが多いです。

しかし麻雀もボウリングも10代後半、人によっては大人になってから競技を開始してプロになる人も多数います。野球やサッカー、将棋などで大人になってから本格的に競技を開始して、40~50歳代でプロになるなんてことはあり得ませんが、麻雀やボウリングではあり得る話です。

なので麻雀やボウリングは比較的プロになりやすいと言えるでしょう。
野球やサッカーはある意味、プロになるための年齢制限がある競技であると言えます。たとえ20歳代から野球やサッカーを始めて、40歳の時に素晴らしい才能を見せつけてプロになるだけのものがあったとしても、果たしてプロになれるのかと言われればまぁ無理でしょうね。

それに伴って、麻雀もボウリングも長きにわたって一線で活躍することができるのも共通点でしょうね。現役寿命が野球やサッカーに比べれば長いです。

この差は何なのだろうか?

さて、長々と書きましたがだから何なんだという話ですよね。
これは単なるプロローグというか、今回書きたいなと思っていることは何なのかというと、何でこんなにも共通項がある麻雀とボウリングなのに、世間の盛り上がりに大きな差があるのだろうか?ということなのです。

世間への浸透が著しい麻雀と、そうではないボウリング。
なぜ麻雀は世間への浸透が著しいのか?と言えば、実に簡単なことです。
麻雀は藤田晋さんという日本の超大物経営者がMリーグを立ち上げたこと、これが全てです。もしMリーグがなかったらこんな状況にはなっていませんよ。

そしてMリーグは立ち上げ後のプロモーションも上手くいっています。ただプロ雀士が麻雀するというだけではなく、エンターテインメントとしての麻雀を上手く育てているからこその今であると思うのです。

「この熱狂を外へ」
これはMリーグのスローガンとして2019-20シーズンに使われていたもので、2024-25シーズンで7年目を迎えようとする今も、このスピリッツは生き続けています。
「外」とはどこなのか?ということについては、私なりの考えを以前noteでも書いたのですが、麻雀に興味のない人がいるところが「外」に該当するのだと思います。そして「外」から確実にファンを増やしていっていることが、現在のMリーグや麻雀界の盛り上がりにつながっているのだと思うのです。

ボウリング業界に目を向けてみると、もちろん藤田晋さんのような影響力と資金力のある方が現れたわけでもなく、だからといってその部分をあーだこーだと言ったところでどうしようにもありません。

なのでもっと違う視点から麻雀界とボウリング界の何が違うのかを考えなくてはならないと思うのですが、じゃあそれは何なんだと言えば、まさに「この熱狂を外へ」の部分だと思うのです。
ボウリング界はボウリングのファンを1人でも多く増やす活動ができているのかと言われれば、私は全然できていないと思っています。麻雀界のそれと比べれば雲泥の差です。

そしてそのことに気が付かされた出来事がつい先日あったので書きたいと思います。

ボウリング村の中でしか盛り上がっていない

今年の7月初旬に行われたプロの公式戦である第40回六甲クイーンズオープントーナメント。私は開催された神戸六甲ボウルに実際に見に行きました。
見に行ったのは初日で予選10ゲームが行われたのですが、予選終了後に「ボウリング村でしか盛り上がっていないんだな」ということを実感させられる出来事に遭遇したのです。

予選の最中はあっちこっちに移動しながら見ていたのですが、最終10ゲーム目を見ていたのはレーン番号が若い方のレーンでした。自分の周辺のレーンで予選が全て終わった時、離れたところではまだ10ゲーム目が進行しているボックスもあったため、私が見ていた周辺で10ゲーム目を投げていたプロボウラーの皆さんは少し待つこととなりました。
そこで何人かのプロボウラーの方々が、後ろで見ていた観客に「ありがとうございました」とあいさつをし始めて、その後その観客の方と談笑し始めたのです。それも私の周りで見ていたほとんどの方がそうなっていたのです。

私はというと別に誰からもあいさつされることも談笑することもなく時が流れたのですが、その時にふと気が付いたことがありました。

見に来ている人のほとんどはそのプロボウラーの知り合いの方(普段投げているセンターでお世話になっているとか、そのプロのチャレンジマッチによく参加しているとか)なのだということです。それゆえにあいさつの後の談笑という流れになっているのだと。
逆を言えば、プロボウラーに知り合いがいない人で見に来ている人はほとんどいないのではということです。

私はその少数派の1人だったわけですが、他の競技と比べてみると実に異質な状況だということがわかります。

例えばプロ野球。甲子園球場に阪神戦を見に行きます。球場には5万人以上の観客が集まっています。
その中に「おれ××選手と知り合い(友達)やねん」という人は果たして何人いるのでしょうか?
もちろん調査したわけではないので正確なことは言えませんが、恐らくその試合を見に来ている人のほとんどは、誰の選手の知り合いでもないであろうことは容易に想像がつきます。というか、もし5万人のうちのたった1%でも選手の知り合いがいたとしたら、それは相当にすごいことだと思います。

また観客のうちのどれくらいの人が日常的に野球をプレイしているのでしょうか?リトルリーグでも高校野球でも、草野球でも何でもいいんです。
しかしそれも恐らくはかなり少ないと私は思います。

以上のことから考えられるのは、誰の選手の知り合いでもなく日常的に野球をプレイしているわけでもないけれど見に来ている人が大半であろうということです。

一方でボウリングはどうでしょう?
私が神戸六甲ボウルで経験したことから推測するに、見に来ている人の大方は日常的にボウリングをしていて(当然マイボールとマイシューズを持っている)、それを通じて選手と知り合いになった人であると思われます。
そしてボウリングはしないし選手の知り合いでもないけれど見に来たという人は、恐らくほとんどいないのではないかと思われます。
私のようにマイボールとマイシューズを持っていて、ボウリング場に投げに行くことがあるが、選手の知り合いはいないという人でさえ、あの光景を見る限り少なかったのではと思われます。

要するに何が言いたいのかというと、ボウリングはあくまでもボウリング村の中で全てが完結している競技なのだということです。
言い換えれば、ボウリング村の外の人を巻き込むということがほぼないということですね。
Mリーグで言うところの「この熱狂を外へ」が全くできていないのです。

一般のニュースにさえならない

今年はボウリング界において1つの快挙が成し遂げられました。
川添奨太プロが、本場アメリカのPBAツアーの1つであるシャークチャンピオンシップにおいて、準決勝を1位通過してトップシードを獲得、優勝決定戦に進出しました。
惜しくも優勝決定戦でEJ Tackett選手に負けはしましたが、もしかしたら日本人ボウラーが本場PBAの試合で優勝するかもしれないというすごいことが起きたのです。

ですが、これってニュースになったのでしょうか?
私が見る限り、一般のニュースで取り上げられることは皆無だったと思います。もし取り上げられていたらYahoo!ニュースに記事として出ていたはずですが、私は全く見かけませんでした。もしかして私が見落としていただけでしょうか?

それもこれも、ボウリングの熱狂があくまでもボウリング村の中だけでのことであって、「外」には全く伝わっていないからこういうことになるのだと思っています。

外に伝える努力

今のボウリング界に1番足りていないのがこれだと思います。
私が思う似た者同士である麻雀界と比べても、圧倒的に差があります。
麻雀界は選手自身を中心に、SNSでのアピール活動が盛んにおこなわれています。私自身、YouTubeやX、インスタにフェイスブックにおいて麻雀プロもプロボウラーも多数フォローしていますが、出てくる動画や画像、それらを伴うポストの数は大差で麻雀が多いです。

今の時代、SNSでいかにアピールして拡散させられるかが、知名度を上げることにおいて最重要と言っても過言ではありません。
先日行われた東京都知事選挙でも、SNSの拡散によって多くの支持を得た方がいたじゃないですか。しかも選挙そのものにおいて支持を得るだけではなく、選挙後も連日話題になっているじゃないですか。
当然肯定的なものだけではなく、否定的なものも多数あってそういう意味でのリスクなども生じているのかもしれませんが、1つの小さい市の市長だった人が、今や一躍全国的な有名人です。

ボウリングに関して言えば、例えば永野すばるプロが何度か地上波の番組に出演しています。地上波の番組に出演するということは、日本中の多くの方に見てもらえるチャンスだということです。
しかしそれに関するSNSでのアピールが全然少ない。永野プロ自身は当然SNSで投稿していましたが、それに関するJPBAや永野プロ以外のプロボウラーの投稿はあまり見ませんでした。
そのチャンスを生かすべくプロモーションしようという動きが見えないのです。みんなで業界自体を盛り上げようという気がないのかなと。
これがもし麻雀界であったならば、多くのプロたちやそれに関わる組織などが永野プロのポストに対してリポストしたりして、拡散しようという動きが活発に行われていたことでしょう。

私はその番組を見ていませんが、恐らくは永野プロの投球シーンなんかもあったのではないかと思うのです。
それを見て、「プロってすごい」「実際に投げているところを見てみたい」という風に思ってもらえるように、もっとプロモーションをすべきだと思うのです。

これは2023年にSHOW CASEが行われ、2024年より本格的に始動し始めたプロボウリングのチーム戦であるio.Leagueでも同様です。
もっと積極的に外に向けてのプロモーションをしていかないと、所詮ボウリング村の人たちを満足させるためだけのものになってしまいます。
io.Leagueでの結果や出来事が一般でも取り上げられて、Yahoo!ニュースに出てくるようなものになることを目指してほしいと思うのです。

私自身はマイボールとマイシューズを持っていて、今は仕事の繁忙さなどもあって頻繁に投げには行けていませんが、少なくともボウリングの面白さや難しさ、奥深さをある程度は理解しているつもりです。
その上で、もっとボウリング業界が盛り上がればいいなと1人のファンとして思っています。

「マイボールもマイシューズも持っていないし、日常的にボウリングをするわけでもないし、当然プロボウラーの知り合いもいない、でもプロのすごさを実際に見てみたい」
そんな方が実際にプロの試合を見に来て、その中から1人でも多くの人が実際にボウリングを日常的にプレイする人となった時、ボウリング業界に明るい光が差してくるのではないでしょうか?

そんな日が来る未来を願ってやみません。

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