note_ogp_サービス開発エンジニアから_マネージャーを経て_サービスエ

これまでにない形のサービスで、ゼロからパートナーを開拓していったお話

はじめまして。生鮮ECプラットフォーム:クックパッドマートのBusiness Producer、佐藤研輔です。

レコード会社からキャリアをスタートし、ヤフーでの音楽メディア運営・新規事業企画・「Yahoo!ニュース 個人」の立ち上げ・共同通信デジタルとの合弁会社「ノアドット」の創業などを経て、2018年4月(サービス構想開始から3ヶ月後)よりクックパッドマートにJoinしています。

直近の8年ほどはIT領域での新規事業立ち上げをビジネスサイドで推進することをメインミッションとしており、クックパッドマートにおいても同様の役割を果たしています。

ちなみに余談ですが、名字が日本で最多勝を獲得していることも影響してか、どこへ行っても割とすぐに「研輔」と下の名前だけで呼ばれるようになります。

名前の由来は、母が(少し前に話題となった)沢田研二さんのファンだったらしいことと、輔の字は兄のお下がりです。アイデンティティも高尚な意味付けもなにも無し。

ところで誕生日は1月30日なんですが、「130=意味0(イミゼロ)の日」としています。ん?もうじきか。

本編に入ります

さて、私がnoteを書くにあたっては、担当領域であるビジネスサイドの全般についてあれこれ綴ろうと思っていますが、今回は最初ということもありクックパッドマートの立ち上げ期におけるゼロからのパートナー開拓、とりわけ「受け取り場所」開拓のお話をしようと思います。

プラットフォームビジネスの構成要素として欠かせないであろう「アライアンス」領域のお話というように位置づけられます。

よろしければお付き合いください。

受け取り場所?

まず「受け取り場所」とはクックパッドマートという新しい生鮮ECプラットフォームにおける大きな特徴のひとつです。
個別宅配を行わないこのサービスでは、

・お客様はアプリ上で「最初に」好きな受け取り場所を選択する(そしてそこでの受け取りを前提として食材の買い物をする)
・配送完了通知をアプリで受け取った後、選択した受け取り場所の(その日のうちの)オープン時間内であれば好きな時間に購入食材を受け取れる

という購買商品の入手形式を取っています。つまり「受け取り場所」とは、お客様が商品を受け取るために選ぶ配送先であり、そこに行って/立ち寄って、いただくことを前提とした概念です。

(自宅前提ではない)「置き配」

ネットスーパーは数多あれど、ちょっとこれまでにない形態です。

この形にしよう!と決めるまでには、自分がJoinする前から始まった多くの仮説設定と検証(≒社内を対象にしたユーザーテスト)が重なり合って辿り着いた過程があるのですが、そのあたりのことについては以下をご参照ください。

受け取り場所ってどうやって作るんだっけ?

さて、置き配。それもお客様には基本的に帰り道にピックアップしていただくことを想定しています。

お客様に受け取り場所へ行っていただく以上、

・より利便性が高い(と感じていただける)場所
⇒最寄り駅から自宅までの間、他の買い物や用事と合わせ受け取れる、など

・食材の留め置き場所として不安を感じさせないこと
⇒風雨にさらされる場所や衛生的でない場所は避けたい、など

が、最初の条件として上がってきます。

これらの条件を満たす場所を、当初の展開エリアである「東京一部地域」にて、ゼロから探そう!となりました。

宅配を行わない代わりに(自宅前提ではない)「置き配」を行う。それにあたり基本姿勢として考えたのが、

・我々は不動産ビジネスを展開するわけではない。
・今ある(様々な業態の)店舗や施設に受け取りスペースを作らせてもらえないだろうか。

ということで「受け取り場所」となってくれるパートナー(店舗や施設)探しの始まりです。

「新規事業におけるパートナー探し」を凌駕するハードル

大抵の新規事業においては

・類似サービスが少々でも存在する(全く新しい概念では無い限り)
・サービス展開を行う業界/領域が限られており、(近くとも遠くとも)「既存の業界の繋がり」をなんとか利用できる

一般的にはこれらどちらかの取っ掛かりを駆使して、最適なパートナーを探る活動を行うことが可能かと思います。(「大抵の」ですよ)

しかしクックパッドマートにおいては前述の通り、殊「受け取り場所にて『受け取る』」という方式を採る実態においては今までに無いサービス形態であり、また生鮮食品を扱うという意味では食品/食材の業界に属しますがこれも、殊「受け取り場所を『設ける』」という考え方においてはあらゆる業界/業態において可能性を持てるという状態です。

つまりパートナーを開拓をするにあたっては「取っ掛かり」を得られない状況から開始しなければならず、(私もこれまで何度か新規事業を立ち上げてきましたが)ハードルの高さがどれほどのものなのか想定もできないくらいのところからのスタートとなりました。

急がば回れ

当然、対象エリアにおいて受け取り場所として使えたらいいよねー、と考えられる場所をチームのメンバーと一緒に知恵を出し合い考えたりもしました。

・ドラッグストアに生鮮食品あったらいいよね?
・酒屋さんもありだねー。
・飲食店で受け取りなんかも面白い!(仕入れにも使えたりして)
・花屋さんて冷蔵庫そもそもあるよね?
・カラオケ屋さんってスペースの宝庫じゃね・・・?

アイディアは無数に出るのですが、それが「お客様に便利に使われるかどうか」の確証がどうも持てない。取っ掛かりありませんから。。

というわけでなんらかの確証を得るためにも考えても結果が出ないなら動くしか無い!となり、一緒に担当してくれているメンバーと共にエリア内をひたすら練り歩いてみることにしました。

まるまる一週間は使いました。一回につき少なくとも半日以上、歩き回って調査調査調査。。。

一見無駄に見えてしまうこの活動ですが、結果としてこの地道な動きが「この立地のこの業態なら確実に便利に使ってもらえそうだ!!」という実感を脳内にもたらしてくれることとなりました。まさしく百聞は一見にしかず。やってみるもんです。

そして同時に、事前に知恵を出し合った受け取り場所候補の業態に属する企業に対し、バンバン連絡をしました。「繋がり」は無なのでサイトを見ては「Contact Us」にアタックです。全く効率的ではありませんが他に方法が無いので、迷ったり考えたりしている時間のほうが無駄です。ひたすらやります。

潮目が変わる

現地調査や問い合わせアタックをひたすら続けているうちに、サービス発表についてのプレスリリースを打つ段になりました。ここまで受け取り場所の参画表明はゼロです。

チームのメンバーにはかなりの心配をかけている状況ですが、(不謹慎ながら)不思議と焦りのようなモノは感じていませんでした。

それは「このサービスの理念と描きたい未来に共感してくれるプレイヤーが必ず現れる」という確信があったからです。

ただやみくもにそう信じていただけという訳ではなく、パートナー探しや現地調査を進めながら頭の中では「各業態向けに提示できるメリット(=どのようにお客様が使ってくれると想定できて、それぞれの受け取り場所との間にどんな相乗効果をもたらすことができるか)」を想定し組み立てる作業も行っていました。相手のことをよく理解し、効果的と考えられる戦略を組み立てる。基本に忠実に。

そして未だ成果の無いままいよいよプレスリリースが打たれるのですが、そこから見事に潮目が変わります。

それまで100%アウトバウンドだった提案活動に(プレスリリースを見ていただいたことによる)インバウンドが徐々に入り始めます。並行してアウトバウンド提案も波に乗り始め、どのアプローチにおいてもひとつ、またひとつと好反応を得ていくことができてきました。

代表的な好反応例です。

・既存の自社集客に加えて、新規サービス導入による顧客開拓を行いたかったが、このサービスはその思惑にバッチリハマりそうだ。
・最初は自社へのメリットが無いように思えたが、よくよく話を聞いた後では「デメリットが全く無い」と感じるようになった。
・このサービスがあれば今まで以上に「店内に一歩」足を踏み入れてもらうことができる。そこから先は自社の腕の見せどころさ。

そして遂に参画決定プレイヤーが出現!ほどなくして複数企業の参画を題材にした第二弾プレスリリースを打つことが可能となりました。

協力者たち

第二弾プレスリリースが打たれたのが2018年9月11日。アプリのリリースが9月20日に迫る中での発表でした。

サービスの最初期を構成する最低限のパートナー数は得られたものの、軌道に乗っていくためにも全く立ち止まるわけには行きません。

そんな中、クックパッド社内で外部とお付き合いのある部署いくつかから、「クックパッドマートの話をちょっと出したら興味を持ってくれたのだけど」というようなお話もチラホラもらえるようになってきました。

折りに触れ、社内向けに様々な情報・状況の共有をチームメンバーが行ってくれていた成果がこういうところで表れてきます。

そして各部署の紹介を元に色々な相手先にお会いすると、これまでそれらの部署が培ってきた外部との関係性の良好さが手に取るように分かります。

食い込み方すごい。優秀だみんな。

話も大概スムーズに進み、徐々にサービスリリース後の受け取り場所増加のステップも見えてくることに。持つべきものは社内の仲間、協力者だなと有り難みがものすごく染み入ります。(だいぶ這いつくばって活動をしてきたので余計に)

並行してプレスリリースと共にメディア露出にも尽力してくれたPR担当の力もあり、TV・Web・紙媒体他にて世に紹介される機会も増えている状況です。これがまたインバウンドを呼び起こすという、様々なことが正のスパイラルに突入してきている感覚を持ったのもこの時期です。

そんなわけで更にパートナーが増加し、現在に至ります。

なぜ「受け取り場所」となってくれるのか?

日々、様々な業界・業態の皆さまにクックパッドマートの受け取り場所となることに関して興味をお持ちいただき、着実に参画に至っています。

各プレイヤー毎のメリットを考え・提示し、好反応を得られて・・・の繰り返しなわけですが、高ハードルである「取っ掛かりがないこと」を逆に利用して、あらゆる相手先との間に可能性を見出し、そして相手先別に「一緒に創れる未来」を考えていくことが、これまでもこれからも実を結んでいくと思っています。近道なんて無い。

参画を決めてくださった理由としていただいている実例としては以下のようなものがありました。

・「地域貢献」をそもそもの方針として企業活動を行ってきたが、クックパッドマートと一緒であれば、(自分たちの商材だけでは届けられない)新しい価値を地域の皆様に届けられると考えた。⇒ほぼ全ての皆さま
・これまで十分に扱えなかった生鮮食品を置くことで、既に店内にある商品の「あわせ買い」「ついで買い」を促進できると考えた。⇒酒販店/ドラッグストアなど
・今まで自分たちの店を利用してこなかった方々にも立ち寄ってもらえるようになり、そこから自社の顧客となっていただければ。⇒カラオケ店/クリーニング店など

今後に向けて

2019年に入り、受け取り場所開拓も留まること無く進んでいます。この1月〜2月にも更に「これまでにはない」場所での受け取り開始が予定されています。

現在では東京一部地域の限られた範囲でしか展開はしていませんが、今年はどんどんエリアを広げていくことにしています。

こちらからもどんどん色々な「受け取り場所候補」を開拓しアプローチしていくこととしていますが、ご興味をお持ちいただけたり、これはと思う先が思い浮かんだりした場合、気軽にご連絡をいただけますと有り難いです。

最後に

ゼロからのパートナー開拓といっても、テクニカルなことや極意めいたメソッドがあってそれを実行した、といった性質のモノではなく極めて正攻法で物事を進めることの重要さを自分でも再認識しながら進めてきたと振り返っています。

その中で常に心に留めていたのは、

「自分たちがもたらしたいモノ、実現したい世界、やっていきたいことを常に心に浸透させておく」
「それをより大きなモノにするために、(自分たちだけの限られた力だけではなく)誰と何ができるのか」

という事業を行ううえでの基本ともいうべき事柄を、真っ直ぐに考え、愚直に実行するという想い、それだけでした。そこには何に対する忖度もなく、人生のこの瞬間を賭けてやり切りたいんだぜという仕事冥利に尽きる感覚だけが存在します。

そういった想いや姿勢を貫くことで、協力者や支持者、そしてパートナーと呼べる関係になれる存在が少しずつでも得られることになると身をもって感じられたこと、また今後もそれを信じていこうと改めて思えたこと、これらがこの立ち上げ期に得られた貴重な学びです。

今後も皆さんにお話できるような事業創り、そしてエピソードが紡がれていくような事業開発をするべく、日々前進していきます。