見出し画像

みかんジンジャーで気持ちリセット

久しぶりのお仕事。もう二週間が経った。
金曜日ということもあり、自分にお疲れ様といった感じで、最近見つけたカフェで何かを買って帰ろうと決めていた。


通勤は電車を利用している。
前職に復職なので久しぶりの通勤路になる。住宅街で駅前にもお店がほとんどない。なのにある朝、見慣れないおしゃれなカフェ発見した。まだ時間にも余裕があるので、立ち寄ってみると、こじんまりとしたお店の内装は木と土壁できている。すぐ私に気づいてくれ、店員さんが外に出てきてくれた。感じのいい男性の方。営業時間は10時から20時とのこと。いつかの会社帰りに寄ってみようと思った。


それから一週間くらい経った昨日の週末。
お店の外にある看板でメニューを見ていると、「こちらのメニューのほうが見やすいですよ」と、受け渡しであろう窓ごしからおっしゃってくれた。魅力的な商品ばかりで悩んだ末、「みかんジンジャー」に目が入った。いつもよりはマシとはいえ、寒さが身にしみていたのだろう。ジンジャーであたたまりたかった。それはみかんまるごと1個使ってるジュースとのこと。即、それに決めた。

「待ち時間は中でお待ちください」と促され、店内へ。中はテーブル2つに椅子が4脚。そして受け取るためのカウンターがあるだけ。なぜか落ち着く空間だった。

去年7月からはじめられたこのカフェ。
「なんでカフェをはじめたのですか」と質問。そこからいろんなお話を聞かせてくれた。

「去年3月くらいに、知り合いからお話をいただいてはじめたんですよ」「その前は何のお仕事されてたのですか」「大学生でした」とってもびっくりした。雰囲気が落ち着いていたので、てっきり、もう少し上の方かと思っていた。マスクしてるからかな。

「本当は内定もらってた企業があって、そこで働く予定でしたが、知り合いから〝カフェをしないか”と言われ、せっかくのチャンスだったし引き受けました」「カフェをしたかったのですか?」「老後にしたいとは思ってました(笑)」「えー!ずっと先の気持ちだったのですね。まぁでも、チャンスは受け取っていきたいですよね」人生っておもしろいと思った。


みかんをミキサーにかけてくれているのか、音が響きわたる。
終わったくらいにお話をつづける。


「それでなんでこの地域を選んだのですか?」
「この地域を活性化したい思いでここにしました。僕は奈良ですけど」「え?じゃあ、知り合いの方が?(この地域?)」「いえ、知り合いは兵庫です(笑)」「えー!じゃあ、なんで?」「知り合いがこの近くで美容師をしているんですね。その美容院のオーナーがこの地域に住んだことがあるようで、そこからです」「あーなるほど。納得」「両隣の駅は栄えてるのにこの駅周辺にお店がほとんどないじゃないですか。そしてこの土地、元美容室でちょうど空き家だったので、決めました」

この地域は通勤で行き来していて見ているはずなのに、何が建ってたのかと言われると分からなかったのだ。言われてやっと、思い出した。確かに昔ながらの美容室の看板がぶらさがっていた場所だ。


ミキサーしたみかんを鍋で熱してくれていたのか、しゅわしゅわと、いい音がする。


「最近もう一つ電車が通るようになり、近くに駅が二つあるので今後立ち寄るお客さんも増えそうですね」とお話しすると、

「待ち時間がわりとある電車なので、その間ご利用してくださる方も多いです」


しっかりとしたおしゃれな紙コップをコトン、とカウンターに置いてくれた。ちょっとした時間だったのにこの週の疲れがとんでいくような、そんな時間だった。

「次回は店内でお召し上がりくださいね」とニッコリ笑顔。

カイロのようにあたたかいみかんジンジャーを両手でつつみ寒空の中、帰宅。着いてから早速、みかんジンジャーをいただく。みかんの酸っぱさとジンジャーのピリッと感。心身ともにほっこりとあたためてくれた。いいリセットになる。

飲みながら、そういえば、内定ってどこに決まってたのかな。と気になった。いい場所にちょっとしたほっこりカフェを見つけたな。また立ち寄った時、聞いてみよう。