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羅針盤~コンビビアルなマネジメント㉔

 日本で地図を広げ、真東の方向を確認して、ひたすらその方向に進んでいくとチリの海岸に辿りつきます。しかし真東の方向を確認したあと、都度その場所場所で、羅針盤の東に従って進んでいくとアメリカに辿りつきます。

 わたしは、子どもたちに「地図」を与える必要はないと思っています。大人が子どもたちに与えようとする「地図」は未来の価値観、空気感に沿ったものではない可能性が高いからです。

 必要なのは一緒に「羅針盤」を創ることです。
 
 少なくとも、子どもたちの「羅針盤」づくりを邪魔しないことです。意識しなければ邪魔してしまうことになる、という気持ちを明確にもつことです。

 わたしは、子どもたちにこんなことを学びながらそれぞれの「羅針盤」を創っていって欲しいと思っています。

◇ 雲も石ころも葉っぱも、同じものはひとつとしてなく、それぞれカタチが違う、美しいものであること

◇ 雲の流れや虫の飛んでいる高さ、そして目にみえない風や土の匂いなどからでも、天気の変化の予兆を感じとれること

◇ 山を歩くときは地図だけに頼ると道を失うので、自分の五感を研ぎ澄ませ、直感や想像力を大切にすること

◇ 空も、海も、山も、川も、世界と繋がっていて、自分のいるこの「場所」自体も世界と繋がっていること

◇ 世界は様々な動植物の関係性から成り立っていて、人間もそのひとつであり、循環し続けるためにはルールが必要で、ときには立ち止まらなければならないこと

◇ 雨を止ませることはできないけれど、雨音に耳を傾けたり、木々や草花が雨を喜んでいる姿をみたり、雨のあとの虹を想像したりして、雨を愉しむことができること

◇ 山が噴火したらとにかく逃げるしかないこと、事前にしっかりシミュレーションをしておきつつも、それでも想定外のことが起こり得ること

 そして、様々な仲間との協働を通じて、こんなことを感じて欲しいと思っています。

◇ 協働にはルールは必要だが、そのルールを守ることを目的にすると上手くいかないこと  

◇ そこにある役割にはめ込むのではなく、それぞれの個性にあった役割を創ることができると、みんな愉しく、スムースに事が運ぶこと

◇ 目的に向かって、それぞれが対等な関係で相手の考えを聴き、自分の意見を述べ、よりよいアクションを導きだしていくことが大切であること

◇ 相手のことを思いやろうとするのではなく、自然に相手のことを思いやれるようになると上手くいくこと

◇ 他人のこと(自分のこと)は分からないことが当たり前で、それでもそれを分かろうとする(分かりあえるようにしようとする)ことが大切であること

◇ 虫の目と鳥の目、この二つをもつと、今やっていることも、いる場所も、世界も、まったく違う景色にみえ、ワクワクした気持ちになること 

◇ 仲間を信じ、助け合いながら協働すると、ひとりでできないことをやり遂げることができて、とてもハッピーな気持ちになること

 答えのない問いに向き合わざるを得ない時代に必要なもの、それは「地図」ではなく「羅針盤」です。子どもたちにはこんなことを学び、感じながら一日一日を過ごしてもらいたいとわたしは思います。

 そしてそのような環境/場所をオトナが信じ抜き、守ることさえできれば、未来は希望に満ち溢れたものになります。

 更にオトナが子どもたちと同じように一日一日をそれぞれの組織/場所で過ごすことができれば、その流れは加速し確固たるものになるはずです。そのために、オトナが再確認してイノベーションすべきことは、子どもたちが直感的に知っていることです。

◇ 人は歯車ではなく、それぞれ個性をもった存在で、組織は生命体、動的な運動体であること

◇ 組織を司るものは空気感であり、それは壊れやすいものであるからこそ丁寧に紡ぎ、少しでも違和感があればなおざりにしないこと

◇ 安易に正解を探すのではなく直感を大切にし、自ら考え、問いを立てる習慣を組織/場所全体でもつこと

◇ グローバルな組織/場所はなく、すべてローカルなものであること、しかし属している個人は組織/場所を通して世界に繋がっていること

◇ 経済が無限に成長し続けることはない、ということを認識し、自然と人の関係性を再考し、人間も含め、循環していくためには立ち止まる勇気をもつ必要があること

◇ コンビビアルに生きるとはどのようなことかを考え、これまでの価値観に縛られない知の基盤を整備する必要性を認識し、愚直に1%のアクションを積み上げていくこと

◇ 自然も他人もコントロールすることはできず、想定外のことが起こることを想定し、その瞬間に判断できる軸(真・善・美)を日頃から磨いておくこと

◇ ルールによるコントロールからコンテクストの共有によるカルチャー/空気感の醸成にシフトすること

◇ 諸々の関係性に基づき事業を見直したうえで、個々人の配置を、その個性をみて行い、それぞれの仕事の位置づけを再構成する必要があること

◇ 相向かいの関係性から脱却しフラットな関係性を築き、自分と相手の価値観をすり合わせるなかで新しいものに昇華させ、自分自身をイノベーションしていくこと

◇ 主客を分離させないことが結果として、相手を思いやることに繋がること、この順番を転倒させないこと

◇ 他人をイノベーションさせることはできず、自分自身をイノベーションさせることしかできないこと

◇ カルティベイトした深さは視点の広さと高さに繋がり、その深さによって解像度があがり、個人/組織全体のアクションがよりよいものに変化していくこと

◇ マネジメントの役割は環境、機会を創り、仲間を信じ抜き、コンビビアルな人と場所を守ることに尽きるということ

続く

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