『おかえりモネ』第20週「気象予報士に何ができる?」
「ごめん、きれいごとにしか聞こえないわ」。りょーちんは詳しく説明したわけじゃないので、視聴者の「きれいごと」の解釈にいろんなレイヤーがあるようで。おかモネ視聴者のみなさんはいかがとらえられましたでしょうか。
私はあれを見たとき、「きれいごと」をネガティブにとらえる側の問題だよね、と思って。
船を持つために貯金して、同級生が自分を大事に思ってくれててみーちゃんに尽くされてて、一見前向きに進んでいるようで、りょーちんの心にはやっぱり暗く巣食うものがあるんだな、と。
りょーちんはまだ自分のことを「いるだけでいい」「役に立たなくてもいい」と思えてないんだろうなあ。
島のみんながりょーちんのこと「いるだけでいいよ」と思ってるはずだけど、本人は実感できてないんだろうなあ。
登米と東京での8年間を通じて、モネには
「いるだけでいい」「役に立たなくてもいい」が腹落ちしてるんだよね。
だから、りょーちんの「きれいごと」砲が炸裂しても、
まっすぐに受け止めて目を逸らさなかった。
「今はそう思われても仕方ない」
めちゃくちゃ強くなってるよモネちん!!!
今週の、あわびの開口と子ども会のお祭りの件でも発揮されたけど
モネってもともと猪突猛進タイプではあるんだよね。
「中学時代にブラバン部を作った」
「棒引きで敵陣まで引きずられても棒を離さなかった」
「予報士の資格を取っただけで就職先も決まってないのに上京」
などのエピソードの数々がそれを物語っている。
彼女が立ち止まり、凍りつき、島を離れたこと、
島の輪に入ることに恐れを抱いていたこと
それは震災のときに当事者でいられなかった傷が大きかったから。
まぁ、「震災」を「青春期の挫折」と普遍的に読み替えることもできるんだけど。
そこから登米へのエスケープ(←梨木香歩の「西の魔女が死んだ」をほうふつとさせるものがある)と東京での冒険が、彼女の本来の資質をよみがえらせ、さらに強化したんだと思う。
その核のひとつが
「いるだけでいい」「役に立たなくてもいい」の腹落ち。
(ほかに、「深刻な問題については、当事者でない人間のほうがより深く考えるべき」「相手を知れば怖くない」などもある)
存在自体が肯定されているから
「これがやりたい」という意思をもてるし
結果や生産性 “ のみ ” にとらわれない(結果や生産性も大事であることも繰り返し描かれている)
それが他人にどう評価されてもかまわない。
「いるだけでいい」「一緒にいたい」と思えるからこそ、
モネは無心にがんばれるんだろうな、というか。
りょーちんは父親と一緒にいてもずっと孤独だったから、
きっとまだそう思えないんだよね‥‥
‥‥と考えたあとで
「「きれいごと」は、りょーちんが良い子をやめたってことだ」
というつぶやきをTwitterで見かけてナルホドと思った。
そういうプロセスにあるのかも。
むしろ「きれいごと」しか言えなかったのは以前のりょーちんで。
「きれいごととしか思えない」は、本人は意識してないだろうけど「助けて」の発露なのかもしれない。
確か、作品登場時に「俺には選択肢がないから」と言ってたりょーちん。
選べるモネや他の同級生を羨ましく思うのも無理はない。
大学に行くでも島を出るでもなく、「漁師になるしかない」と思っていたりょーちん。漁師の仕事は好きだし誇りももっているりょーちん。
それでも「選ぶ余地なく」漁師になった、という感覚が、彼をずっと縛っているように見える。
未知も同じなんだよね。
本当は誰でも自分の人生を選べるはず。
「そんなのきれいごとだ」というのも痛いほどわかるけど、
「選べる」と思うだけでも、選択肢って広がるもので。
りょーちんとみーちゃんが微妙どころかだいぶやばい感じになっててびっくりしたけど、仲良くやってるようで何だか暗く見えるのは、「選べない」と思い込んでたり、「選ばない美徳」みたいな感覚が2人をつないでるからなんだろうな‥‥
ちなみに
モネ東京時代、菅波とモネの関係の進捗はホントわかりにくかったけど
今のりょーちんとみーちゃんはまず間違いなく関係を持っていると思ったわたくしです。
あの「きれいごと」は、モネだけじゃなく
寝たふりをしてた三生や悠人くんも刺してたんだよね。
島を出て、大学に行って、「選んで」戻ってきた彼ら。
(ここにすーちゃんがいれば「そんなのおかしいよ!」と真っ向から言ってくれそうだが、すーちゃんのみ東京にいるという設定がホントうまいよね~!)
りょーちん。
そうやって周囲のあちこちにトゲを向けながら生きるのはつらいよなあ。
永瀬廉くんの暗い目がほんとすごい。
やっぱり、りょーちんが変わる鍵は新次になるのかな。
竜巻のときも、一向に顔を見せなかった新次。どうしているのか気になる。
三生、悠人くん、モネの三人で
宇田川さんが描いた絵を眺めるシーンよかった。
あと、おじいちゃんの「しぶとくいけ~、モネちゃん」もよかった~