インタビュー : ことこバレエアカデミーから素敵なレディを ~ 井上古都香さん
◆ ココロとカラダが調和した「健康美」をめざして
――スクール設立のきっかけや歩みについて教えてもらえますか?
2013年、ご縁があった3人のきょうだいに「教えてほしい」とご依頼をいただき、地域のコミュニティセンターでレッスンを始めたのがきっかけです。
やがて、少しずつ生徒が増え始めました。当時、私がミスユニバースの活動をしていたこともあり、はじめはチケット制をとっていたんですが、「もっと教えてほしい」という声が高まって、週1回、2回、コンクールにも出て‥‥と発展していった感じですね。
バレエが大好きな生徒たちに恵まれてきました。子どもが大好きで、小学生のころから「バレエの先生か幼稚園の先生になりたい」と思っていたんです。夢をかなえてくれたみなさんに本当に感謝しています!
――レッスンの様子を見ると、子どもたちの凛とした美しさに驚きます。
ほとんどが当スクールでバレエを始める子たちなんですよ。小さいころから、発達の段階に応じてレッスンすることで、伸びのある美しい筋肉をつけてあげることができます。
仲間と一緒に成長できるのがグループレッスンの醍醐味です。子どもって、ある日突然、別人のように上手になっているときがあるんですね。急にレディになったような。そんなとき、まわりの子たちが先に「どうしたの?」「すごい!」と気づいてくれる。みんな刺激を受けて、教室全体が盛り上がります。仲間と学び合うことで、より速く大きく成長できるんです。
――子どもが急にレディになる瞬間は、どんなときに訪れるのでしょうか?
よくよく聞いてみると、学校でのお友だちとのトラブルが落ち着いたとか、将来の夢が見つかったとか、精神面の影響を感じることも多いですね。ココロとカラダは密接につながっているもの。スクールでは、バレエのレッスンを通じて、その調和がとれた素敵なレディを育てています。
――生徒たちにとって、古都香先生はどんな先生でしょう?
昔は怖い先生だったかも?(笑) それがクラシカルなスタイルといいますか、私自身、厳しいレッスンで育ってきましたので。
いろいろな子どもたちに接し、よりよい教え方を求めて研究するようになりました。脳科学、個性心理学、東洋医学などさまざまな学問を学び、今ではコーチングを用いて、一人一人を尊重し、個性を伸ばす指導を行っています。
今は、子どもたちには友だちのように思われているかもしれません(笑)。流行りのアプリを教えてもらったり、恋バナもしますよ。
――個性を伸ばすバレエスクール。なんだか新鮮です。
バレエには長い伝統の中で培われた厳格な美しさがあります。決められたポジションを守りながら自分らしさを表現していくのが、バレエの本当のおもしろさ、すばらしさだと思うようになりました。自分なりのオーロラ姫を見つけていくということ。マナーや常識を大事にしながら個性を発揮するという点では、一般社会も同じですね。
この春、生徒全員にDreamノートを配布しました。3年ほど試行錯誤して完成したものです。
それぞれの目標や、そのために何をがんばるかを書き込んでいきます。自分を見つめ、悩んだ時も立ち返れるツールとして活用できるんですよ。
◆ 古都香's ストーリー
――先生がバレエを始めたのはいつですか?
5歳でレッスンを始めました。バレエがどんなものかはまったくわかっておらず、「きれいなフリルのレオタードを着たい」という願望が先でしたね(笑)。
―――16歳でベルギーに短期留学、高校卒業後にスイスのバレエ学校へ。どのような経緯で10代で宗像から海外へ?
小学1年生のとき、福岡で外国のバレエ学校の公演を観たんです。パンフレットでバレエ学校の練習や生活の様子を読んで、強いあこがれを抱きました。
大学進学を望んでいた親は、留学には猛反対。どうしたら行けるかなと思案して、「向こうの学校に受かればいいんだ」と(笑)。高校の先生に英語の書き方を教えてもらって、世界中のバレエ学校に手紙を出したんです。30か所ほど送った中から、「おいで」と言ってくれたスイスの学校に入学しました。
―――その後、ミス・ユニバースでもご活躍されました。
紆余曲折を経て福岡代表に選んでいただき、たくさんの出会いと学びがありました。ミスユニバースのビューティーキャンプでは、自己PRやブランディング、マナーに栄養学、福岡の歴史まで、あらゆる分野を網羅するような授業を受けます。それまでバレエ一筋だった私には、すべてが新鮮でしたね。
―――外見の美しさを磨くだけではないのですね。
はい。誰から見ても、内側も外側も磨かれていて、十分に調和していることが大事です。ユニバースで出会ったこの「健康美」という考え方が私の軸になっています。
大会のあとはボランティアもあり、翌年度以降のエリアディレクターや審査員も務め、数々のすばらしい経験をさせていただきました。新部門の立ち上げのために、営業回りのような仕事もしましたよ。百貨店でプレゼンをしたり。
―――毎日お忙しいでしょう。どのようにリフレッシュされていますか?
ベランダでコーヒーとチョコレートを頂く時間や、娘とのピロートークが癒しです。韓国ドラマを見ながら辛いラーメンを食べてすっきりすることもあります(笑)。
◆ 世界は広い。自分らしく、自由にはばたいて
―――開校10年目。振り返って、どのような思いがありますか?
あっというまでしたね。今思えば、昔は肩に力が入っていた部分もあったと思います。自分が子どもをもってから見えてきたことも多くて‥‥。未熟なころから支えていただいた保護者の皆様、またかかわってくださったすべての方に心から感謝しています。
―――スクールを卒業して大人になった生徒さんたちもいますね。
それぞれの場所で花開き始めているのがとてもうれしいです。彼女たちががんばっている姿に、私もパワーをもらっています。
スクールではワガノワメソッドに基づいてしっかりとレッスンをしていますが、実はバレリーナをめざしてほしいと思っているわけではありません。
人生の夢はさまざまです。子どもたちには、自分の意志で道を選び、自由に生きてほしい。バレエのレッスンを通じて、自己実現できる強さ・エレガントさを兼ね備えたココロとカラダを育てています。
生徒たちが、自分らしくはばたく素敵なレディになる。その姿を見るのが私の喜びです。これからも、一緒に歩みながら、いつもみなさんの未来を応援しています。
(おわり)
◆編集後記
バレエには厳格でストイックなイメージがありましたが、古都香先生が気さくな笑顔で語られるご経験の数々、その波乱万丈さにびっくりの連続でした。
若いころから大きなチャレンジを続け、グローバルとローカルを軽やかに往復する姿は、これからの女性のロールモデル! これからも、子どもたちの成長をサポートしながら、ご自身でもさらに大きな夢を実現されていくことと思います。
(イノウエ エミ)