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桜井×稲葉 ボーカリスト対談に稲葉さんの人間力が詰まってた(後)
「B'zの稲葉さんのトークをじっくり聞いたらあまりにもすばらしかったので、その魅力を分析しつつあわよくば真似したいの巻」の後編です。この日のトーク相手であるミスチル桜井さんの話も。
●4.てらいのない自己開示
50代のプロのボーカリストとしての準備やコンディション維持について、てらいなく自己開示していてすごくすてき。
「若いときは、“何でも歌えますよ”って感じだったけど、今はキーをリクエストしたりします(笑)」
「ライブの開始前は、ストレッチと発声。一曲目をやりながら上げていく。あれだけ発声練習したのに、一曲目で「なんか違うな」って思う時もある」
「ストイックと思われがちだけど、言うほどやってないw」
「ステージでちょっとした動きのときにグキッていくのが怖いからストレッチは念入りにするけど、ツアー終わったら相当手抜きw」
「年齢的に、歌わない時間が長くなると、起動までに時間がかかるようになるので、どんどん歌ったほうがいいと思う」
桜井さんも「常に歌っている」と言ってた。
ちなみに、BTSのジョングクも、メインボーカルとしての自覚から「15歳でボーカルの練習時間という概念を捨てた」と語ってました。休憩時間もシャワー中も、歌える時間はすべて歌うようにした、と。
この自己開示は桜井さんもすばらしくて、若いころは「歌なんてうまくなくていい、むしろバンドのボーカルがうまいなんて恥ずかしい」と思っていた、という話がとても興味深かった。
でも、年齢とともに喉の調子が悪くなり、まわりはみんなすごく上手いしで、「自分は気持ちで歌っているだけで技術がないな」と思い、ボーカルのトレーナーさんにつくようになったと。「今でも一進一退ですよ」と言っていた。
●5.確かな分析力、他者評価力
「若いボーカリストは本当に歌がうまい」という意見で一致する稲葉さんと桜井さん。うらやましいボーカリストとしては、桜井さんが髭ダンの藤原くん、ワンオクのTakaさんを挙げ、稲葉さんは「宇多田さん」。
その理由として「言葉にたまたま歌がついている感じがいい」というコメントがものすごく納得だし、同業者(ライバルでもありますよね)の歌を聞いてそんなふうに感じられる感性や表現力が本当にすてきだと思いました。
「ロッド・スチュワートのようにさらっと歌うボーカルにあこがれる。でも僕は、がなっちゃう。。。自分の幅が広くなくて、いろんな人を見るけど結局自分のスタイルに戻っちゃう」
「もっと変わりたい、と思うこともあるけど、がんばって変えてもファンの人がいいと思うとは限らない」
「ライブ中のMCは好きじゃない。できればしゃべらないで進みたいけど、照れくささの裏返しで、隙間を埋めるようにしゃべってしまう」
という自己分析も印象的。
●6.好奇心が旺盛
「ツアー中って、外に出ますか?」という桜井さんへの質問は、ホストとして台本に沿ったのかなと思っていたら、続く「バンドの人と食事に行ったりしますか?」という質問のあとに
「すいません、こんな、ファンの人みたいな質問して。けっこう、そういうことが気になっちゃって」
と付け足していて、ときめいた。なんてかわいい人だろう~
その好奇心で、桜井さんから「一人で仏像を見に行くのが好き」というレアな回答を引き出すことに成功。「仏像」とちょっと驚きつつ、「いいですね、全国にありますもんね仏像」っていう受け止めもすてきw
他にも、ボーカルトレーナーについて、歌詞の作り方について、フットサルやライブ中のMCについてなど、桜井さんの話のひとつひとつを本当に興味深そうに聞いていて、好奇心旺盛な人なんだなと感じ入る。
●7.肩の力が抜けたポジティブ
【年齢を重ねていくことについて】また、【コロナ禍について】の言及がとても印象的だった。
「声はずいぶん変わった。ずっと喉を酷使してきたのもあるし、体の器官でもあるから(≒年齢的なもの)。ファンの人もわかってると思う」
「自分の昔の歌を聴くと、「何でこんなに歌えたの?」と思うこともあれば、「何でこんなに締めつけるように歌ってるんだろう?」と思うこともある」
この歳月の受け止め方が本当に自然。涙出そう。
「コロナ禍でツアーも中止になり、自分たちの存在価値って?と思うところはある。ミスチルの紅白見ましたよ。自分たちなんてそれすらやってないんで(≒何も提供できていない)」
「無観客ライブは初めてだったので、経験としておもしろかった。次は対面がいいけど」
「スマホで音楽を聴く時代、聴き手の感覚は変わったと思う。自分も、コロナ禍で犬の散歩しながら、その感覚や楽しさがわかってきた」
「B'zが自分のグループという意識はあまりない。制作チームみんなのものだと思う。みんなでぜんまいを回して動かしている、自分もその役割のひとつ。昔よりもっとそう感じてる」
「コロナ禍で自分と向き合う時間が増えた。ミュージシャンとしてもっと広がりたいと思いつつ、今までいつも手いっぱいだった。この先、どこまで歌えるかわからないけど、もっと違うことができるんじゃないかなと希望をもって、楽しみにしている」
書きながら思い出して泣きそう(笑)。
そして、対談の中で「年をとって野心がなくなってきて、作った音楽を世に出さなくてもいいかなと思うようになってきた」とも語っていた桜井さんに、最後は
「やっぱり、ミスターチルドレンには音楽を届けてほしいです。届いたときに成立すると思うから」
とエールを送っていた稲葉さん。
同じように、長年最前線で活動してきた人だからこその重みがあり、優しさが感じられる言葉でした。
学び多き70分‥‥
YouTubeっぽい細切れになっていない、長い動画でも、
テレビ的な大げさな演出がなくても(そういえばテロップすらない)、
おもしろいものは、やっぱりおもしろいんだな~と感服。
もちろん、稲葉さん・桜井さんという「人のバリュー」あっての企画なんだけどね。
桜井さんについても機会があれば書きたい。
ほんと、うすうす感じていたとおりの人でしたが(笑)こんなに素直に語ってくれて、もっと好きになった。
稲葉さん。12歳で好きになった人が、年を重ねてこんなに素敵な人でいることを幸せに思う!!