過渡期を迎えるスタートアップの開発組織の舞台裏
新型コロナウイルスの影響で「ハンコのデジタル化」というトレンドが事業の追い風となる中で、プロダクトをより強化すべく、開発人材のリモート採用を積極的に行っているContractS。
今回は特別タイアップ企画として、株式会社マネーフォワードのHome(個人向け事業)領域にてVPoEとして活躍されている神谷和志氏を迎え、ContractSのVPoE・守屋と共に、プロダクトが急成長する”過渡期”にあるスタートアップのVPoEの目線から、開発組織のマネジメントや採用における面白みや課題感について語ってもらいました。
2016-2018年のマネーフォワードは「組織拡大に伴う成長痛」を経験。上場前後の開発組織のマネジメントは試行錯誤の連続だった
マネーフォワードのVPoEとしての役割を教えてください。
神谷 マネーフォワード(以下、MF)には現在、それぞれ別の事業領域を担っているVPoEが5名在籍します。まず、MFでVPoEという職位が作られた経緯をお話しすると、これは2018年4月に遡ります。当時MFは「組織拡大に伴う成長痛」を経験していた時期でした。2016年から2018年にかけてエンジニアが約4倍に増えるなど、ものすごい勢いで組織拡大をしてきたんです。と同時に、2017年に上場したこともあり、開発組織の設計からマネジメントの在り方まで、様々な観点から大きな見直しを行うべき、試行錯誤の時期でした。
私がMFへVPoEとしての転職を検討したのはまさにこのタイミングでした。面接でCEO辻やCTO中出から「これからのMFは、技術はCTO・組織はVPoE…としっかり役割分担しながら、会社全体として技術・組織の両軸でマネジメントを強化する必要がある」という話を聞く中で、これまでのVPoEの経験を活かしながら過渡期にある組織に身を置くことの魅力を感じたので、すぐにジョインを決めました。入社以来、社内の4人目のVPoEとして、個人向け事業を担うHome領域に在籍するエンジニア組織のマネジメントを行っています。
現在の主なミッションは、以下の5つです
・数年後の組織を見据えて、生産性の向上や組織成長を先導する
・エンジニアと非エンジニアの相互理解を促し、コミュニケーションを円滑にする
・サステナブルに成長する為にリーダー人材を育成する
・エンジニアが快適に働ける環境を整備する
・エンジニアの採用ブランディングを発信する
この5つを、それぞれのVPoEが自身の管掌事業領域のマネジメントと並行して全社視点で取り組んでいます。
着任して2年経ちますが、今年はやっと採用ブランディングに着手できるようになりました。また、最近では4月に入社した新卒エンジニアを対象に、1ヶ月間の研修のファシリテートも終えたところです。ありがたくも、日々やることが盛り沢山ですね。
シリーズAを経た2019年のContractSはエンジニアが数名から十数名に。プロダクトの意思決定に専念してもらうべく、CTOから組織マネジメントの役割を引き受けた
ContractSのVPoEとしての役割を教えてください。
守屋 私はもともとIDOM(旧:ガリバーインターナショナル)のSaaS型カーシェアリングサービスのプロダクト開発を経て、昨年秋頃にContractSにジョインしました。面接を受けていた当時、ContractSの開発組織はまさに数名から十数名の組織へ急拡大しているフェーズだったので、CTO花井は組織マネジメントに多くのリソースが割かれ、プロダクトの意思決定に専念するのが難しい状況でした。そのため、入社してすぐにVPoEとして開発組織のマネジメントを引き受けることになりました。最初からそういったポジションがあったわけではなく、組織づくりをこれからのキャリアの軸にしていきたいと考えていた私とプロダクトに専念したい花井のニーズがマッチした結果、職位ができたという感じです。とはいえ、開発組織の規模感を考えると、 最適なタイミングだったと感じます。
現在、任せてもらっている主なミッションは以下の4つです。
・開発メンバーの目標設定や進捗のサポート
・開発人材の採用
・新卒の育成
・全社の組織開発
入社当初は採用に主に注力し、母集団形成からカジュアル面談、その後の面接における選考段階まで関わりました。母集団形成が一定整ってきた近頃は、新卒の育成研修プログラムを組んだり、取締役の吉田と一緒に、全社単位で生産性を向上すべく、組織開発に軸足をシフトしています。
「メンバーがプロダクト開発に最大限集中して取り組めている状態」こそあるべき状態。その実現に向けて責任を負うVPoEの仕事は、毎日が試行錯誤
お話を聞く中で「生産性向上」という共通の言葉が出てきましたが、開発組織のパフォーマンスを上げる観点では、VPoEとしてどんな理想と現実のGAPがあると考えていますか?
神谷 お金の見える化サービス「マネーフォワード ME」の様に、ローンチから8年目になり、利用者数も1,000万人を超える成熟したサービスというのは、多くのアップデートを重ねてきているためにどうしても”技術的負債”が大きくなりがちなんですね。そういった状態でも「メンバーがプロダクト開発に最大限集中して取り組めている状態」というものこそ、MFの成長フェーズにおいては、開発組織のあるべき状態だと考えています。
他方で、MFには様々な事業領域があるので、過去の開発経緯から事業間の調整に時間がかかり、プロダクト開発に影響が出ることもあります。また、実装に対する考え方の議論がある程度避けて通れないこともあります。
これまでの2年間は、まずメンバーたちの声に耳を傾け、”開発をしていく上での課題の本質はなにか”、”どういう取り組みをしていきたいのか”を私自身が理解・把握していくことから始めました。私の考える、「ピュアにプロダクト開発に臨める理想的な環境」に近づけるには、自身の担う組織のメンバーたちが障壁と考えているものをいかに打開していくかが大事だと思ったからですDX(Developer EXperience)の向上ですね。同時に「なぜ今、そうなっているのか」という説明も必要なので、1on1などの細かいコミュニケーションを活用しながら、改善を繰り返した時期でしたね。
他方で、現在、テクニカルロードマップをエンジニアと一緒に詰めて行く中で見つかった、「新たな壁」もあります。
VPoEというのは、実は孤独な側面が多いんです(笑)。もちろん全社単位では5人いるので恵まれている方だと思うのですが、それぞれが別の事業領域を担っているので、Home領域特有の組織の課題感については共感できる部分とできない部分はやはり存在しています。分かち合ったり相談するという意味では、なかなか適した壁打ち相手はいないのが現状です。それでも、時間の許す限り、議論ができる仲間がいてくれて本当に助かっています。
良い意味でMFではVPoEの在り方は試行錯誤を重ねている状態なので、自ら課題を特定し、意思決定をしながら走らなくてはいけません。強い責任感が求められている状況下ではありますが、「現在のMFが置かれている状況の中でいかにアウトプットを出していくか」という壁の乗り越え方を、楽しみながら模索している状態ですね。

▲5月に利用者数1000万人を突破した「マネーフォワード ME」
プロダクト開発のピボットに向けて組織を一体化させるには、「カルチャーをより強く意識させる環境づくり」が大事
守屋 孤独はすごく共感します。ContractSの開発組織も人が増えるたびに新しい考え方や価値観が入ってくるので、組織としての意思決定の難易度も重要性も日々高まっていることを感じています。また、MFさんのフェーズでも、社内では「プロダクトは完成形ではない」という捉え方なんですね。成長フェーズが違ってもプロダクトの進化を追い求める姿勢はとても勉強になります。
ContractSのプロダクトは、まだまだ未完成の状態なので、また違ったレベルの課題感を持っています。
「ContractS CLM」は2020年秋頃に予定している大型アップデートに向けてピポットしている最中なので、方針の振り幅が非常に大きい時期なんです。既存のメンバーは、「カルチャーフィット重視の採用」により会社のミッションやビジョンという上位概念に対する共感度が高いので、この大きな振れ幅の中でも柔軟についてきてくれている状態ですが、お互いが物理的に集まりにくいリモート環境下になったからこそ、これからは「カルチャーをより強く意識させる環境づくり」を全社単位だけでなく、開発チームの中でも整備していかなくては…と感じています。
▲ContractSの「バリュー」
もう一つは、「個々の基礎体力の高さをどう意思決定のスピードアップに繋げていくか」という側面です。
これは今だからこそ言えることなんですが、昨年の4月頃はプロダクトでのテストオートメーションがほとんどできていない状態だったんですね。そこからCTOがリードしつつプロダクトの開発と並行してテストの自動化を強力に推進していきました。またインフラ面でもデザイン面でも、自動化やデザインシステムの構築を通してプロダクト開発の基礎体力が少しずつついてきていることを感じています。これをプロダクト・事業成長のための意思決定のスピードに反映させていきたいということを考えています。
コロナの影響でキャッシュレス社会は進んでいる。マネーフォワードは、”新しいことをやっていきたい”エンジニアにも働きがいを感じてもらえる環境
これまで「組織開発」の観点からお聞きしましたが、「採用」の側面ではどのあたりに課題感を感じていますか?
神谷 コロナの状況下では、「MFで働く価値をどう伝えるか」という側面で採用広報の重要性を強く感じています。
というのも、お陰様でMFの社会的認知はここ数年で広がったのですが、それは裏を返すと、”新しいことをやっていきたい”という気概のエンジニア目線では低い魅力度で映ってしまうんです。いわば、「もうプロダクトは完成してるから、自分が入ったところでこれ以上新たにできることってあるのかな…」という誤解です。
コロナの影響により個人のお金に対する向き合い方に変化が起き、キャッシュレス社会も進んだように感じています。そういった社会の変化でHome領域のサービス利用が拡がることで、より一層、新たな価値の提供が求められています。したがって実際には、”新しいことをやっていきたい”というエンジニアにも働きがいを感じてもらえる環境です。先に挙げた通りですが、エンジニアのブランディングという役割の観点で、「今、MFに入ってもらうことで、エンジニアにどんな働く価値を提供できるか」をしっかりと候補者に伝える情報発信が必要だなと感じています。
CTOの中出も定期的に弊社エンジニアブログから発信させていただいているのですが、大きく社会が変わっている現在だからこそ、多くの社会のペインを発見でき、既存プロダクトへの機能追加や、新しいプロダクト開発の準備も進めています。また、既存プロダクトも多くのユーザーに快適に使っていただくための取り組みも行っています。CTOの中出も定期的に弊社エンジニアブログから発信させていただいているのですが、大きく社会が変わっている現在だからこそ、多くの社会のペインを発見でき、既存プロダクトへの機能追加や、新しいプロダクト開発の準備も進めています。また、既存プロダクトも多くのユーザーに快適に使っていただくための取り組みも行っています。
守屋 ContractSはまだまだプロダクトの認知度が低い段階なので、一人ひとりの候補者の方といかに真摯に向き合えるか、が重要になると考えています。スカウトメッセージやメール、面接でのやりとりを通して、一貫したContractSのミッションやカルチャーと同時に、今組織が抱えている課題についてもしっかり伝えていきたいと思っています。
実際、直近で入社したメンバーの場合、面接のタイミングと入社のタイミングで事業の状況が大きく変わっていたため、入社後すぐに役割の一部を定義し直すということもありました。
このような変化の中で組織として成長するためには、個別の職務要件やスキル以上に、根本的な部分でのマッチングを採用段階で重視することが必要不可欠だと思います。
こうしたソフトな面を採用のプロセスとしていかに担保していくか、という部分が現状の課題だと感じています。
「数=採用計画の数字」よりも「共感重視の採用」を。
ContractSの様にプロダクトや組織をつくり上げている過渡期にあるスタートアップに向けて、採用面でのアドバイスをいただけますか?
神谷 採用という観点では、「数=採用計画の数字」よりも、「質=MVVC(ミッション・ビジョン・バリュー・カルチャー)への共感重視の採用」に徹底的にこだわるべきだと思います。
MFは冒頭で語った様に、2016年からは毎年2倍のペースで採用してきました。ですが、「MVVCに共感してくれる人材かどうか」という基準に基づいた採用が大前提となります。よく聞く話かもしれませんが、MVVCに共感がない候補者は幾ら能力が優れていても活躍するのは難しいと思います。
▲マネーフォワードの「MVVC(ミッション・ビジョン・バリュー・カルチャー)
未来の候補者に向けてのメッセージをお願いします。
神谷 これまでのMFのHome領域のプロダクトでは、「自動家計簿」や「お金の見える化」といった表現を通して、分散している個人の金融資産に関する情報を集約して一元管理することの価値をPRしてきました。
ですが、「お金の見える化」ができるようになっても、全てのユーザーが節約や貯蓄などの具体的な”行動”まで実践できるわけではありません。「見える化」したものから多くのものを感じ、発見してもらうことで、未来に向けての”行動”につながればと考えています。そして、本当の意味でMFのミッションである「お金を前へ。人生をもっと前へ。」を実現し、ビジョンである『すべての人の、「お金のプラットフォーム」になる。』ことで、お金の悩みを解消し、好きなことに時間やお金を使ってもらえるようなプロダクトの展開をこれからは強化していきたいと考えています。
MFのHome領域はまだまだ成長し続けます。新しい価値を提供することに意欲的な方だからこそ、メガベンチャーでお任せできる面白い仕事が沢山あります。ぜひご応募お待ちしています。
守屋 ContractSは「世の中から紛争裁判をなくす」という志のもと、「最適な権利や義務が自然となされる仕組み」を作ることをミッションとして、契約マネジメントシステム「ContractS CLM」を提供しています。
他方で、「ハンコのデジタル化」というムーブメントが起きている中で、どうしても「契約”書”の締結」という点の課題ばかりが注目されがちです。ContractSではその概念に縛られず、本質的な課題解決に向けて試行錯誤するプロダクトならではの開発の面白みが沢山経験できます。
市場に受け入れられるかを仮説検証しつつも、受け入れられることを信じながらプロダクト作りに励んでいきたい。この様な方とぜひ一緒に働きたいです。
ContractSへ興味をもってくださった方はぜひご応募をお待ちしています。
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