ENR Future Tech 日本と米国の建設テックの違い
こんにちは。フォトラクションCEOの中島です。
今回、米国サンフランシスコで行われた建設テックのカンファレンス「ENR Future Tech(以下、ENR)」に参加してきました。
そこで感じた、日本と米国の建設テックの違いなどについて書いていきたいと思います。
なお、カンファレンスレポートは当社メディアの方でも掲載していますので、会場の雰囲気などはそちらをご覧ください。
最初に思ったこと…
雰囲気や内容は、国内最大規模の建設テックイベントであるArchiFutureに非常に近かったです。
違いでいくと複数日間に渡り開催するのと、Networkingが朝、昼、夜と非常に多く設定されており、来場している人たちと多く交流できるという点です。
とはいえ、思っていたよりも来場者は多くなく、テック系の人達ばかりでは?と思うほど建設業の人は少なかったのが印象的でした。
日本では建設DX展も賑わっていますし、勢いに関しては差があるとは全く思わなかったですし、むしろ日本の方が規模が大きいのでは?とも思いました。
多種多様な建設テック
ENRには建設テック企業からスポンサードがあります。ちなみに当社はゴールドスポンサーで参加しました。
参加企業を見てて驚いたのはその多様性です。近年は日本だとこういった場では施工管理系アプリ、汎用SaaSやカメラ、パソコンなど建設業特化ではないもので多数を占めている印象です
しかし、ENRに出ていたのはSaaSはもちろんのこと、データウェアハウス、BIツール、人材派遣からBPOまで、すべて建設業特化で幅広かったです。
例えばGendaは作業員の位置をトラッキングするためのビーコンとSaaSを提供しています。ビーコンは5年間電池が持つのでコンクリートの中に埋めて使うらしく、米国っぽい大胆な発想で面白かったです。工事現場において人や資材などをトラッキングするデバイスと、SaaSをセットで売る企業は数社あり、最近のトレンドなのかなとも思いました。
FM分野のSaaSを提供するAkitaBox(アキタボックス)は、話を聞くとなんと秋田犬から名前を取ったそうで妙に親近感が湧きました。笑
Smartapp.comは10年以上続いているオールインワンのクラウドサービスであり、現地では有名な連続起業家が経営しているそうです。守備範囲が非常に広く、なんと現場に入退場するためのハードウェアや3Dプリンターまで自作していました。
感じた日本との違い
前提として日本と米国では建設産業は以下の3点が大きく異なります。
工期について
日本:絶対に遅れないし遅らせてはダメだと考えている
米国:普通に遅れるし事情があれば遅れるものだと考えている
現場作業員(職人)について
日本:多能工化が進んでおり非常に優秀な職人がいれば現場マネジメントはそこまで必要ない
米国:基本的には専門職であるのと途中で辞めたりも多いため、大量採用かつマイクロマネジメントが必須
発注形式について
日本:ゼネコンとの請負契約がほとんど
米国:CM/GC契約(発注者が設計者とCMとの間で. 別々に契約を締結する)が多い
これらを踏まえて、ゼネコンに加えて施主側も工事現場をしっかり管理したいという動機づけが強く、リアルタイムにデータを見れることが重要視されています。
そこで登場したのがPROCORE(プロコア)です。
工事現場の状態はもちろんのこと、財務や人事労務などの情報も一元管理することが可能です。PROCOREについては以前、私のブログでも取り上げたことがあるので、ぜひ読んでみてください。
施主側がPROCOREを広く導入していることもあり、PROCOREにデータが入ってないと困るといった状況らしく、スポンサー企業が提供しているサービスのほとんどがPROCOREと連携ができるといった状況でした。
一方で日本では請負契約がほとんどであるため、そこまで細かいデータを施主が見たいといったニーズはありません。
ENRに行く前は、PROCOREは建設業のためのオールインワンソリューションであり、他の建設テック企業は、PROCOREが深く解決できていない課題に絞り、その部分だけリプレイスをかけて広げていく、という進め方をイメージしていました。
しかし実態はPROCOREはプラットフォームをメインで提供しており、その上にたくさんのツールやソリューションが生まれることで自社も成長していくという共存関係にありました。
そのため、PROCOREは自社イベントでGroundbreakという大規模カンファレンスを行なって建設テック企業を盛り上げてます(ENRのスポンサーとほぼかぶっています)。
ちなみに、プラットフォームとしての勢力を強めるPROCOREに対抗するため出てきたのがAutodesk Construction Cloud(以下、ACC)です。
来ていた建設テック企業もPROCOREに繋ぐか、ACCに繋ぐか両方と繋ぐかしているし、それが当たり前と言うような感じでした。
事実、PROCOREのサービスサイトでもACC(かつてはAutodesk Plangridという名称)を名指しで比較しており、米国の建設テックはこの2社がプラットフォームとして戦い、その上に数々のサービスが乗っかることで多様性が生み出されています。
作図やデザインにフォーカスするとグローバルで共通な面も多いことから、汎用CADは世界共通で広がりを見せましたが、トータルの生産活動で考えると法令や産業構造も大きく絡むことから、各国でローカル性が顕著に現れるなと改めて思いました。
プラットフォーマーの存在もあり、もはや日本と米国では建設テックのマーケットそのものが全く異なるのではないでしょうか。
米国で建設テックを広げるためには?
今回ENR参加の目的の一つでもあったのですが「この辺りを攻めればいけるかも」というのはぼんやり見えたものの、顧客調査など実際に進めてみないことにはなんともと言った状況です。
ひとつだけ言えるのは、米国で建設テックを展開するのであれば少なくともPROCOREやACCなどのプラットフォームを活用した方が良いということです。
SaaSを開発するときにAWSを使うことを検討に入れるのと同じぐらい、現地では当たり前の考えになっているように感じました。
一方で日本国内で展開するには、前述した通りマーケットが大きく異なるため、PROCOREをマイルストーンにしても難しそうだなと感じました。
他にも現地に行かないと色々とわからないことも多く、行って良かったなと思いますし、日本の建設業は世界No1の技術力を持っているからこそ、日本の建設テックも世界に輸出して行きたいと改めて思えました。
私たちは、引き続きグローバル展開に向けて準備を進めていこうと思っていますので、ぜひフォトラクションで働くことに興味を持った方はお話しさせてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?