全人類、映画「スパイダーマン:スパイダーバース」を見てくれ(感想文)
映画「スパイダーマン:スパイダーバース」を見てきました。
俺が、俺たちがスパイダーマンだッッ!!!(号泣)(伝われ見た人に)
いやー、しぬほど泣いた。めっちゃよかった「スパイダーマン:スパイダーバース」の感想。
ちょびっとネタバレしてるよ。
「スパイダーマン」初見にめっちゃ優しい構成
私は「スパイダーマン」をほとんど知りません。映画もまったく見たことがないし、この前発売したPS4の「Marvel's Spider-Man」でやっと触るかと思ったけど積んでるし、このとき初めて「スパイディ」って呼び方を知ったレベル。さすがに見た目くらいは判別できるけどむしろ分かるのはそのくらいで、ピーター・パーカーも分からなかったし。まあそもそも色々あるみたいでファンも把握するのが大変みたいですけど、そんな自分でもすんなり入り込めるほど丁寧に描いててびっくりした。ファンから「初見こそ見るべき」と言われたけど、まさにその通りだったと思う。
本作が取り扱っているのは、そのスパイダーマンであるピーター・パーカーがヴィランに敗れ、偶然スパイダーマンと同じ力を手にした少年マイルス・モラレスが偉大なヒーローの背中を追うという王道の展開なんだよね。だからシリーズを具体的に知らなくても、少年の成長には自然と感情移入できる。これにスパイダーマンが抱える「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というシリーズに欠かせないテーマが重なり、最後の一瞬まで笑ったり泣いたりできた。冒頭でいきなり「エンドロール後にも映像あるお!」って注意出て親切設計だったしな。
個人的に洋画は字幕派なんだけど、今回ばかりは吹き替えで見ましたよ。声優陣が豪華だったのもあるし、あと何より情報量が多すぎて「スパイダーマン」のお約束も知らない初見には吹き替えのほうが画面に集中できて良かったと思う。アメコミ読んでるみたいな映像演出って実現できるのかとびっくりしたし、ビビッドな色使い、スパイダーマンのアクションがコミックのようでありアニメとしても完成してるんだよね。高層ビルの高さとか、列車のスピード感とかもすごかった。
声優は洋画メインの人たちというより、どっちかっつとゲームやアニメに馴染みのある人たちがメインに起用されていたので、そういう意味でも耳だけでだいぶキャラクターの情報を処理できたのはありがたかったです。オリジナルのピーターが中村悠一氏、違う次元のピーターが宮野真守氏ってだけで、脳が自然と理解してくれたんで。
PS4のスパイダーマンも正直どういう展開なのかイマイチよく分からなかったんだけど、映画見たら「なるほどなー、そういう感じでヴィランと戦うのか」ってすげえ見当ついた。ありがとう映画。
スパイダーマン大集合とヒーローの孤独
本作のポイントになるのが、色々あって異なる次元のスパイダーマンたちが一堂に会することだと思う。あんまり詳しく調べてないけど、たぶんファンも初見のスパイダーマンばっかだったはず。黒いのから白いフードのスパイダー・グウェンとか、ハードボイルドを絵に描いたようなスパイダーマン・ノワール(これオリジナルボイスがニコラス・ケイジとかマジかよ)、どうみてもジャパニーズアニメのペニー・パーカー、手塚治虫っぽいスパイダー・ハムとか、まあ色々いるもんだ。でも、簡単にだけど彼らの活躍とかが紹介されるので「ああ、スパイダーマンってやつはおおよそこういう物語で、こういうノリなんだな」ってのが分かったという部分でも、すごく良かった。
まだ一人前には程遠いマイルスを、ピーターによく似ているけどちょっと冴えない別の次元のピーターが指導というかなんというか、まあ何となく教えてるような、そうでもないような。この次元での本物のピーターとは全然違う関係性を築いたんだろうなとは思うけど、そんな彼がポツリとマイルスに自分の胸の内を吐露するシーンがあった。
ここで、ヒーローは本当に孤独なんだなと感じたんだよね。もちろん彼らに恋人、友人、家族といった大切な人、心に寄り添ってくれる人はいる。ただ、正体を隠しているとかそういうことじゃなく、戦場に立つときはたった1人なんだろう、スパイダーマンという存在は。だからこそ、同じように身を切るような悲しみや孤独を体験したスパイダーマンたちが集い、1人ではないと、仲間がいるんだと実感できたのは、すごく価値があったんじゃないだろうか。とくに、違う次元のピーターには。
ところであのなんかシックスセンスっていうか、みみょ~~んってなるアレ、スパイダーマンなら誰でも備わってる予知?というか、感覚?みたいなもんって理解でいいんか?
家族愛ってやつにどんどん弱くなる
マイルスの成長ぶりは本当に見ていて「がんばえー!!」って感じで、どうにもならない歯がゆさや悔しさ、気持ちでカバーできない圧倒的な実力差とか、そういうのに打ちのめされるのって大人は死ぬほど分かるんだよ。ヒーローじゃなくたってな、分かるんだ。だからこそ殻を破る瞬間ってのは、なんともいえないカタルシスがある。これは少年だからこそ、という感じかな。
それと、やっぱり彼をとりまく家族や友人の関わり方かな。マイルスが父親に反発する気持ちも分かるし、自由な叔父さんに懐くのもわかるし、でも父親がマイルスの将来を考えてるのも期待しているのも分かる。昔はマイルスの、少年の時代にしかできない青春ってやつを大事する気持ちのほうがよく分かったのだけど、今は父親の気持ちがめちゃんこ分かって無理ですね。たぶん今回、一番泣いたの父親が出てくるシーンですよ。思い出すだけで涙出てくる。ここもしっかり描かれていて良かった。
ところで最後の鷹の爪団みたいなアレなんなのか、有識者教えてください。
硬派な吹き替えは是か非か
話はちょっと違うんだけど、悲しいことに「スパイダーマン:スパイダーバース」は日本ではあまり動員がよくないという話を見かける。洋画ファンに目の敵にされるようなポスターでもなさそうだし、いわゆる「芸能人/お笑い芸人の吹き替え初挑戦!」みたいなこともない。中身はめちゃくちゃ面白いし、一体何が悪いんだろうと本気で思うよ。
でも、例えば直近だと「シャザム」が色々アレがソレみたいだけど(演出家のコメントとかは置いといて)、翌週には天下の「名探偵コナン」、その後すぐ「アベンジャーズ」が控えてて「そんな大勝利作品を前に、普段あんま映画を観ない層を引き付ける施策」として、人気俳優の起用が責められるのかって思うと、現実問題なかなか難しいと思う。そりゃファンが失望するようなことはよくないけど、そもそもこんだけ映画がある中で、なにかとっかかりがないと見ようと思う作品にすら入らないわけで。いやほんと、好きな作品を棒でめちゃんこにされたら私だって末代まで祟るし、楽にこの世を去れると思うなよってくらい呪いますけどね。
我々みたいなオタクは決め打ちで「この日のこの時間にこの映画を見る」って映画館に行くけど、一般人は外出の延長で映画館に行って、そのタイミングで面白そうなものを見るの多いみたいだから、その時「これ芸能人が出るやつだっけ」でも何でも記憶に引っかかって、選択肢の1つにでもなったら、というか、そこでならないと見てもらえないんじゃないかなと思ったり。
実際、製品とかサービスとかの発表会やら宣伝に芸能人を使うのって、もうそれだけで扱うメディアがめちゃめちゃ増えるんですよね。テレビだってWebだって何だって。たった一言でも何でも、直接関係ない場所でもどこにでも届く。彼らの影響力というか、リーチの広さは本当にすげえもんがあるんだよなと。
繰り返しになるけど、私だってきちんとした洋画向きの声優さんとか使ってほしいけど、今のままだと「これがオタクの答えか……」ってなってしまいそうなのが残念なんで、少しでもこうして真摯にファンに向き合った吹き替えの映画を見に行く人が増えてくれたらいいなと思ってます。もう日数ないみたいだからマジで見に行ってください。