IT業界以外からも注目を集めるPMOの存在
PMOとは
PMO「プロジェクトマネジメントオフィス(Project Management Office)」の略語です。
組織内のプロジェクトマネジメントを支援する部門や構造システムを指します。一般社団法人日本PMO協会では、PMOを「組織内における個々のプロジェクトマネジメントの支援を横断的に行う部門や構造システム」と定義しています。また、プロジェクトマネジメントの標準であるPMBOKによれば、PMOの役割は「プロジェクトマネジメントにおいてリソース、ツール、方法論、および手法の共有を円滑にするよう管理すること」とされています。
PMOの導入パターンは大きく2つに分けられます。
1つ目
PMOが複数のプロジェクトを統括するパターンです。
これは、複数のプロジェクトに共通するリソースや手法を管理し、プロジェクト間の連携や情報共有を促進する役割を担います。
2つ目
PMOが各プロジェクトに属し、個々のプロジェクトマネージャーを直接支援するパターンです。この場合、PMOは個々のプロジェクトの管理や実行における支援を提供し、プロジェクトマネージャーの業務を補完します。
PMOの役割や責任範囲は組織によって異なりますが、効果的なPMOはプロジェクトの成功に不可欠です。リソースの最適化、プロジェクト管理の標準化、リスク管理、コミュニケーションの促進など、多岐にわたる活動を通じてプロジェクトの効率性と成果を向上させます。
PMOの役割
PMO「プロジェクトマネジメントオフィス(Project Management Office)」の役割は、一般的に以下の6つに分類されます:
プロジェクトマネジメント方式の標準化
組織内でのプロジェクトマネジメント手法やプロセスの標準化を促進します。これにより、統一された方法でプロジェクトが実行され、効率性が向上します。
プロジェクトマネジメントに関する研修など人材開発
プロジェクトマネジメントに関するトレーニングや研修を提供し、プロジェクトチームのスキル向上や能力開発を支援します。
プロジェクトマネジメント業務の支援
プロジェクトマネージャーやプロジェクトチームに対して、業務のサポートや支援を行います。例えば、ドキュメント管理、コミュニケーション支援、調整などが含まれます。
プロジェクト間のリソースやコストの各種調整
複数のプロジェクト間でのリソースやコストの調整を行い、効率的なリソースの割り当てや予算の管理を行います。
個別企業に適応したプロジェクト環境の整備
各企業のニーズや特性に合わせて、適切なプロジェクト環境を整備します。これには、組織文化やプロジェクトの特性に応じたカスタマイズや調整が含まれます。
その他付随するプロジェクト関連管理業務
PMOが必要とされるその他のプロジェクト関連の管理業務を担います。これには、リスク管理、品質管理、報告などが含まれます。
PMOにおける役割は、経験やスキルに応じてアドミニストレーター、エキスパート、マネージャーの3つの段階に分類されます。それぞれの段階で、異なるレベルの業務が期待されますが、全体としてプロジェクトの円滑な遂行や効率的なリソース管理を支援する役割を果たします。
アドミニストレーター
プロジェクトマネジメント業務の支援
データ収集・共有
書類作成
コスト管理
メンバーの勤怠管理
エキスパート
プロジェクトマネジメント方式の標準化
プロジェクトマネジメントに関する研修など人材開発
業務の作業プロセスやルールの標準化
プロセスやツールの分析・標準化
情報収集・分析・可視化
プロジェクト利害関係者との連携
プロジェクトメンバーのスキル向上のための研修やサポート
マネージャー
プロジェクト間のリソースやコストの各種調整
個別企業に適応したプロジェクト環境の整備
PMOの組織戦略の策定
PMOメンバーの管理・教育
PMO組織の予算管理
個々のプロジェクトの投資や継続の判断
これらの役割は、プロジェクトの円滑な遂行や効率的な運営を支援するためにそれぞれ異なる専門知識やスキルが求められます。役割が上位になるにつれて、より戦略的な視点や組織マネジメントの能力が求められる傾向があります。
PMとPMOの違い
PM(Project Manager)とPMO(Project Management Office)の役割や業務範囲の違いを整理します。
PM(Project Manager)
特定プロジェクトのマネジメントが主な役割。
プロジェクトの定義フェーズでは、最終目標やスコープ設定、利害関係者の明確化、リスク管理、資源見積もり、作業設計などを担当。
状況の変化に対応するため、変更管理や問題解決、意思決定も行う。
そのプロジェクトの成功を主に追求する。
PMO(Project Management Office)
全体の最適化を目指す役割を担う。
プロジェクト単体の成功だけでなく、全体としての成功が重要。
プロジェクト間の利害調整や全社的なパフォーマンス向上のための人材開発や手法の標準化なども行う。
プロジェクトマネジャーのサポートやプロジェクトポートフォリオの管理など、プロジェクト遂行を補完・支援する役割を果たす。
要するに、PMは特定プロジェクトのマネジメントに焦点を当て、その成功を追求します。一方、PMOは全体の最適化を目指し、複数のプロジェクトや組織全体の成功を支援する役割を果たします。
PMOが必要な理由
PMOが必要な理由は、経営上の重要課題を解決し、全社パフォーマンスを最大化させることにあります。具体的には以下のようなケースでPMOの必要性が高まります
部門間を跨いだ複数プロジェクト連携の課題がある場合
複数の部門が関与するプロジェクトでは、コミュニケーションや調整が複雑化しやすい。PMOは異なる部門間の連携を円滑にする役割を果たし、プロジェクト全体の効率性を向上させる。
プロジェクトが大規模でPMの負担が大きい場合
大規模なプロジェクトでは、単一のプロジェクトマネージャーが全ての業務を遂行することが困難である場合がある。このような場合、PMOがPMをサポートし、タスクの分担や効率化を図ることでプロジェクトの成功確率を高める。
扱うテーマが複雑な場合
プロジェクトのテーマが技術的・業務的に複雑である場合、専門知識や経験が必要とされる。PMOはプロジェクトチームに専門的なサポートを提供し、プロジェクトの成功に向けてリーダーシップを発揮する。
これらのケースでは、PMOがプロジェクトをサポートすることで、プロジェクトの管理や実行を効果的に行い、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。
PMO業務の3つの階層
PMOの業務には、以下の3つの階層があります。
ポートフォリオマネジメント:
ポートフォリオマネジメントは、組織全体のプロジェクトやプログラムのポートフォリオを戦略的に管理するプロセスです。主な業務は以下の通りです:
組織のビジョンや戦略目標に基づいたプロジェクトの選定と優先順位付け。
リソースの最適化とバランスの取れたポートフォリオの構築。
ポートフォリオ全体のリスクと成果の管理。
上級管理層へのポートフォリオの進捗報告と戦略的な意思決定の支援。
プログラムマネジメント:
プログラムマネジメントは、複数の関連するプロジェクトを統合し、組織の戦略目標を達成するための戦術的な計画と実行を行うプロセスです。主な業務は以下の通りです:
複数のプロジェクト間の依存関係の管理と調整。
共通のリソースの効率的な利用とスケジュールの調整。
プログラム全体のリスク管理と品質保証。
プログラムの進捗状況の監視と報告。
プロジェクトマネジメント:
プロジェクトマネジメントは、特定のプロジェクトの計画、実行、監視、制御、完了までの全体的な管理を行うプロセスです。主な業務は以下の通りです:
プロジェクトの目標とスコープの明確化と管理。
リソースの調整とタスクの割り当て。
リスク管理と変更管理の実施。
プロジェクトの進捗状況の監視と報告。
これらの階層は、組織内でのプロジェクトとプログラムの管理を効果的に行うために重要な役割を果たします。PMOはこれらの業務を通じて、組織のプロジェクトの成功と戦略的な目標達成に貢献します。
3つのタイプのPMO
PMOにはプロジェクトへのアプローチ方法によって、
一般的に以下の3つのタイプに分類されます。
支援型PMO:
支援型PMOは、プロジェクトマネージャーやプロジェクトチームに対してサポートやアドバイスを提供する役割を担います。主な業務には、次のようなものがあります。
プロジェクト管理ツールやテンプレートの提供。
プロジェクトマネージャーのトレーニングやスキル向上の支援。
ベストプラクティスや業界の標準に基づくガイダンスの提供。
プロジェクトマネージャーとの定期的なミーティングや進捗報告のサポート。
管理型PMO:
管理型PMOは、プロジェクトに対してより強力な統制や監督を行い、プロジェクトの成功を確保することに焦点を当てます。主な業務には、次のようなものがあります。
プロジェクトの計画と実行に関する標準化されたプロセスと手順の策定。
プロジェクトの予算やスケジュールの管理と調整。
プロジェクトのリスクと問題の管理、および適切な対応策の提案。
プロジェクトの成果物や品質の確認と監査。
指揮型PMO:
指揮型PMOは、プロジェクトの遂行に直接的な指示や指導を行います。このタイプのPMOはプロジェクトのリーダーシップを取り、積極的にプロジェクトの進行を管理します。主な業務には、次のようなものがあります。
プロジェクトの目標と方針の設定。
プロジェクトマネージャーの役割と責任の定義。
プロジェクトの進行状況の定期的なレビューと評価。
問題や課題の解決に向けた積極的な介入や支援。
これらのPMOのタイプは、組織のニーズやプロジェクトの複雑さに応じて異なるアプローチを取ります。支援型PMOは柔軟性があり、プロジェクトマネージャーの自主性を尊重します。管理型PMOは、プロセスの標準化と統制に重点を置き、一貫性と効率性を追求します。一方、指揮型PMOは、積極的なリーダーシップとプロジェクトの遂行における指示が特徴です。
PMO導入時の注意点
PMOの導入に際しては、進捗管理だけでなく十分なコミュニケーションが確保されるよう注意が必要です。進捗管理に重点を置きすぎると、部門間のコラボレーションや問題の共有がおろそかになり、プロジェクト全体の課題が見落とされる可能性があります。これはプロジェクトの成功に大きな障害となります。
PMOはプロジェクトマネージャーをサポートする役割を果たしますが、各部署との連携を重視し、メンバー間でのコミュニケーションを促進することも重要です。PMOに依存せず、各部門が適切に情報を共有し、意思疎通を図ることが不可欠です。これによって、プロジェクト全体の課題やトラブルを早期に把握し、適切な対応を行うことが可能となります。
したがって、PMOの導入にあたっては進捗管理だけでなく、コミュニケーションの重要性を認識し、適切なバランスを保つことが求められます。PMOがチーム間のコミュニケーションを促進し、プロジェクト全体の成功に向けて効果的なサポートを提供することが重要です。
必要なスキル・資格
PMOには幅広いスキルが求められます。
PMOは組織内のさまざまな人々との関わりがあり、コミュニケーション能力や人間観察力、調整力が重要です。さらに、専門知識や財務、IT、経営管理に関する知識、プロジェクトマネジメントの技術も必要です。
具体的な業務としては、PMOが管理するすべてのプロジェクトに対する共有資源のマネジメント、方法論やベストプラクティスの決定、標準の特定や開発などが挙げられます。これらのスキルと経験が、プロジェクトの成功を左右する要因となります。
PMOに必須の資格はありませんが、「PMP®(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)」などの国際資格を取得することで、PMOとしての価値を高めることができます。また、日本PMO協会のPMO認定資格や、情報処理推進機構が実施するプロジェクトマネージャ試験なども参考になります。これらの資格は、PMOとしてのスキルや知識を証明するうえで役立ちます。
まとめ
PMOの役割や業務内容、PMとの違い、PMOに必要なスキルなどを解説しました。PMOは単体プロジェクトをマネジメントするPMとは異なり、複数プロジェクトの統括やプロジェクトに属してPMをサポートする役割を担います。
また、ポートフォリオマネジメントの役割を持つ場合には、プロジェクトの評価を行うための評価軸の選定や要件・要求定義などをPMOが主導する場合もあります。
役割と業務内容:
複数のプロジェクトやプログラムを統括し、リソースや予算の最適化を図る。
プロジェクトマネージャー(PM)をサポートし、プロジェクトの進捗状況やリスク、課題の管理を行う。
プロジェクトマネジメントのプロセスや手法の標準化や改善を推進する。
上級管理者や経営陣に対してプロジェクトの進捗状況や成果を報告する。
プロジェクトポートフォリオの評価や選定、優先順位付けを行う。
PMとの違い:
PMは単一のプロジェクトを管理するのに対し、PMOは複数のプロジェクトやポートフォリオを管理する。
PMはプロジェクトの日常的な実行を担当するが、PMOはプロジェクトマネージャーを支援し、組織全体でプロジェクトマネジメントの能力を向上させることに焦点を当てる。
必要なスキル:
プロジェクトマネジメントの知識と経験が必要である。
コミュニケーション能力やリーダーシップスキルが重要である。
分析力や問題解決能力が求められる。
組織全体のビジョンや戦略を理解し、それをプロジェクトに落とし込む能力が必要である。
組織全体のパフォーマンスを向上させるために重要な役割を果たします。
近年では、PMOが経営課題の解決やプロジェクトの効率化を支援する重要な存在として位置付けられ、IT業界だけでなく他の産業からも注目を集めています。
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