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ワンチャンス
私は犬が苦手である。
嫌いというか苦手。
幼少期の何らかのエピソードが起因していると思うが具体的なエピソードは覚えていない。
犬をかわいがっている子供たちを見るのは好き。
でも、私が犬を触ろうものならば私にだけ噛んでくるに違いない、という妄想がしゃしゃりでて私の行動を抑制する。
道を歩いているとき、正面から散歩している犬がいると反対車線に移る。
反対車線に移れないときはいったんスマホを見るふりをしながら止まる。
動いていると犬が寄ってくる気がするから。
完全に病気である。
犬からしてもいい迷惑である。
「お前にそんなに興味ないよ、なに自信過剰になっているの?お前が俺を嫌いなのはそれでいいし、嚙みもしないしお前みたいなやつに近づかないぜ」
そのとおりである。
でも苦手なのである。
しょうがないのである。
「どーしても人参だけは食べられない、味に苦手、というほど食べた記憶はないけれど‥ん-どうしても人参だけはムリ」、
みたいな感覚である。
昨日終日セミナーがあった。
翌日午前中から関東で施設の視察があったので21時ころ新幹線に乗り新横浜へ。新横浜で1泊し、翌朝移動する予定。
いつもは楽天トラベルでホテル予約しているのだが今回はアゴダを使ってみる。
22時過ぎ、ホテルに到着。
「しみずです」
「しみずさまですね、少々おまちを」
外国籍の方が対応してくれる。
2名フロントに女性スタッフがいるが2名とも外国籍の方。
「しみずさま、本日よやくされていないようですが予約サイトみせてもらってよいですか?」
ん?予約したぞ?メールを見せる。ほらほら、このホテルだ、あってる。
自信をもってスマホをかざす。
「しみずさま、予約来週ですね」
なに?確認する。うわー1週間間違えている。痛恨のミス。
「すみませんでした、今日って1部屋空いています?」
仕方ない、いくらするかわからないがこの時間からホテルを探す元気がない。
「少々おまちください。しみずさま、今日はまんしつです」
「そうですか‥」
スマホを見ながらホテルをでる。
「しみずさま、わんちゃんと泊まるせんようの部屋だけあいています。そこならばあんないできます」
ん?どういうこと?わんちゃん?
「わんちゃん専用ってなんですか?」
「きれいにしていますのでだいじょうぶです」
「いやいやわんちゃん専用ってどういうことですか?」
「わんちゃんをつれてきたおきゃくさまにあんないしている部屋です。きれいです」
「でも毛とか多少は残っているでしょ?」
「きれいですよ」
「一回見てもいいですか?」
「いいですよ」
スタッフと一緒にわんちゃんと泊まる専用ルームを見に行く。
一見普通のシングル。でも浴槽とトイレが一体化しており広い。バリアフリールームのような感じ。
ここを犬が走りまくっているのか?
想像するだけで寒気がする。
「しみずさんOK?」
22時半、ここまで来たらここしかない。
「OK…OK…」
わんちゃんルームで1泊決定。
寝る直前まで靴は脱がない、犬の毛を探そうとしない、犬を忘れる、この3点を心がけて早めにチェックアウトすることにする。