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「小麦の奴隷」というビジネスについてのご質問がありました

随分と春めいてまいりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

クライアントからこんなメールが入りました。最近、米粉パンの話題からパンの話が多いので、せっかくですからnoteで回答することにしました。

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「小麦の奴隷」ですか、なんとも夢のないネーミングです。添付記事を一読しましたが昨今流行の衆愚ビジネスでしょうか。ポンジ・スキーム(Ponzi scheme)とは言いませんが、素人起業家をターゲットにしたフランチャイズビジネスです。したがって、本部は儲かります。初期投資1000万円は論外ではないでしょうか。

記事のタイトルにあります、「個性的すぎるパン屋」、これが手品の種、フランチャイジーにとっては落とし穴です。この手法を「product segmentation」「プロダクト戦略における商品区別化」といいます。

プロダクト戦略において「どのような商品を市場に投入するか」という場合、商品の本質的機能で優位性を発揮できる商品を投入するのがベストですが、ある業界で商品の成熟化が進むと商品の本質的機能だけでは市場競争できなくなります。

そのような成熟市場における更なる市場競争手段のひとつが「商品区別化」です。これは本質的な機能ではない「付加機能」「オプション機能」「装飾・デザイン・スタイル・色などの見た目」「パッケージ」「ブランド」「広告イメージ」などで自社の商品が他社より優っていると消費者に訴える活動のことです。言い換えれば、社主が「売れなくなった高級食パンの終焉」で指摘した選択的購買動機促進活動です。

この活動が成功して消費者のニーズに適合すれば成熟市場において自社商品は優位性を持ち新たな顧客を獲得することができます。

この手法は商品の本質的な違いが無いにもかわらず上記のような要素を使ってあたかも自社の商品が他社の商品にくらべて本質的機能が優れているかのような錯覚を消費者に与えることがあるので消費者を欺瞞する手法だとの批判もあります。

この種の素人起業家をターゲットにする衆愚ビジネスは高級食パンビジネスと同じで一過性で終わります。

冷凍生地ビジネスは、以前からエムケーマートでも販売しているように、新しいビジネスではありません。いわゆる業態開発に伴う商品開発です。エムケーマートはプロを相手にしますが小麦の奴隷は素人を相手にするというちがいだけです。

「地方展開」という言葉も意味不明です。パンは元々「最寄り品」ですからうどん屋・蕎麦屋と同じで人が住んでいれば客はいます。競合するプロのパン屋が一店舗もないロケーションというなら理解はできます。

共同創業者曰く、「パンがブームになり、パン屋のマーケットは大きくなっているように見えますが、実はパン屋の店舗数自体は減少しています。大型チェーン化し、施設内などには出店が増えているが、個人のお店が減っているのです。大きな理由となっているのが後継者不足です」

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海外でグルテンフリー市場が伸びているように、食育後進国の日本では「盲蛇に怖じず」で小麦パン市場の規模が維持されていますが、マーガリン離れで分かるように市場は健康志向ですから小規模小売店は自然淘汰されます。後継者がいるいないではなく自然淘汰です。高級食パン専門店が自然淘汰されたようにパン専門店もどんどん自然淘汰されます。即ち、選択的購買動機で購入する傾向がますます強まります。味・価格・品質・安全性が主な選択要素になります。

したがって、商品には味・価格・品質・安全性が必須要素であり、必須要素が無い「商品区分化」手法ではフランチャイジーとして成功しないのは火を見るより明らかです。「商品区分化」手法は『商品の本質的な違いが無い』というのが前提です。

つまり、フランチャイジー小麦の奴隷店の周辺にプロのパン専門店が一店舗でもあれば小麦の奴隷店はいずれ閉店することになります。

エムケイコンサルティング 秋月