クラウドサービスの導入ポイント-タスク管理・社内SNS系サービス
今回はタスク管理系サービスにフォーカスを当てて、その導入ポイントや機能を、適用したい業務特性から見ていきます。
タスク管理というとOUTLOOKのようなToDoやスケジュールとリンクしたメールソフトもありますが、ここではタスクを進めるために行う進捗管理や作業管理など、単なる期日管理にとどまらないタスク管理全般を指しています。この種類のツールを使うと何が良いのかというと、会話などのやり取りが残せて議事録代わりにでき、それを後から探すときも簡単に検索出来るため、作業の効率が上がります。また成果物などがファイルとして共有できるため、情報管理がとても楽に出来ます。これがメールやファイルサーバーだけだと、同じメールの中に複数の案件の話題が溢れ、取りこぼしてしまうものも出てくるでしょう。また遠隔で作業する場合ファイルサーバーだけでは不向きです。1人で行う作業であれば特に問題にならないかもしれません。しかしながらプロジェクトや案件などをチームを組んで進めるうえでは、タスク管理系のツールを使う方が効率的です。これらのツールは特性として社内SNSのようなコミュニティ機能を普通に持っていますので、両者を合わせて整理してみたいと思います。
1.情報共有が主な目的
情報共有は、あるプロジェクトや案件について、事前にリサーチしたり情報を蓄積・整理するような場合が該当すると思います。チャット系のものから目的別掲示板型のものなど、ほとんどのツールがカバーしている機能と言えるでしょう。とは言え、UIやUXと言われる、投稿を行うために出来るだけクリック数や操作を削減させるための画面内の工夫など、細かい部分で機能の違いがあります。ここでのポイントとしては、このUI・UXの違いを意識しておく必要があると言えます。
・投稿機能
ツールが備える最低限の機能としては、投稿が行えることです。この投稿は、参加者が一つのグループに参加し、同じ掲示板やチャットルームの中で共有出来るように(ほとんどのツールは)なっています。
・投稿に対するレス機能
これら投稿に対していいね!をしたりコメントが出来ると、あるトピックを起点にコミュニケーションを活性化することが出来ます。例えばお店のリサーチをした結果が投稿された際にチームのメンバーから「いいね!」とレスしておくと、既読したことを通知する意味になります。投稿した方もそれに対して意欲が上がりさらに情報を投稿したくなるようになって、コミュニティがより活性化します。また関連するコメントをレスとして投稿することで、一つのトピック集として集約しておき、後から探したりまとめたりする際に便利になります。レスとはこれらのように、投稿に対しレスポンスしたりリアクションをすることを言いますが、これらレス機能が自然とコミュニケーションの活性化に繋がりやすいかどうかを意識しておく必要があるでしょう。
・メンション・タグ付け機能
これもチームとしての活動や投稿を活性化させたい場合に有効です。クラウドツールはスマホアプリやブラウザなどに通知が出来るのもが多くありますが、新規投稿された場合だけなど、設定によって限られた場合だけ通知されるようになっています。そこで特にその時に投稿を読んでもらいたい人の名前を@付きで投稿の中で指定すると、その人だけに通知が届くようになります。これが出来ると、比較的リアルタイムに情報が共有できたり、質問などやり取りすることが出来ます。ツールによりますが、そうしたことができなかったり、文中ではなくメールのように宛先を指定して本部を入力するような物がありますので、違いを認識しておく必要があります。
・サムネイル
サムネイルとは、あるリンクのリンク先に掲示されている画像などをリンク内容として縮小表示する機能です。特になくても困ることはありませんが、貼付されたリンクに説明がないと見ている方は何のサイトか一目でわかりません。サムネイル表示機能があるとリンク先の内容を縮小して掲示板の中に表示してくれますので、投稿のダイジェストにもなります。可読性を高める上では是非あった方が良い機能と言えます。
Salesforceの無料サービスであるChatterは、上記に挙げたグループごとの掲示板、レス機能、メンション、サムネイルを兼ね備えており、セキュリティも高いことから大企業においても部署ごとのコミュニティや情報共有の用途としてよく利用されています。
2.ファイルや成果物の管理を行う
ファイルをクラウドストレージとして共有する場合、GoogleドライブやDropboxなどがありますが、これらはどちらかというと企業内のファイルサーバをクラウド上に配置し、限られた組織内で共有する仕組みです。ファイルそのものを共有する上ではこれらストレージサービスで十分ですが、チームで特定のプロジェクトを対象に作業管理するシチュエーションでは、ファイルサーバのみを使っているのと同様に情報が煩雑になりやすくなります。一方前述のChatterでも投稿の中にファイルをアップロードして共有する使い方が出来ますが、その場合逆にファイルのマスター管理という面からすると色んなバージョンのファイルが乱立することにもなります。ファイルなど成果物を共有する場合は、出来ればマスターはクラウドストレージに保存し、そのリンクを投稿として共有するというやり方が良いでしょう。
少し高度な使い方になりますが、この場合マスターファイルに変更があるとそれを自動で知らせてくれるようなものもあります。Slackというワークスペース型SNSでは、クラウドストレージとのインテグレーションアプリを提供しており、ファイル管理はストレージで、それを共有するのはSlackで、ということが簡単に実現できます。さらにマスター側に変更が入るとシステムが自動で通知してくれる機能もありますので、成果物を共有するという意味でも非常に便利になっています。使うツールのインストールが必要ですが、下記で触れるスケジュール管理においても非常に優れたツールとなっています。
ストレージのみで良いのか、SNS型との組み合わせが良いのかは、ファイル管理の目的が、マスターの共有だけか、チーム内コミュニケーションも同時に行うのか、と言ったところが判断基準となるでしょう。
3.スケジュール管理も行う場合
スケジュール管理というとシステム手帳のカレンダーや、スマホユーザーであればカレンダーアプリを使用されている方は多いと思います。チームとして案件やプロジェクトのスケジュール管理を行うという意味では、共有カレンダーを作って管理出来るのが良いでしょう。SNS型サービスにもカレンダー機能を搭載しているものは多いですが、普段カレンダーは手帳のようにいつでも見れるところにあることで利便性が良いと言えます。そのためカレンダーはよく使うカレンダーアプリに集約し、それを共有することが良いと言えるでしょう。
ここでの代表格はGoogleカレンダーで、チームの中で共有カレンダーを簡単に作ることが出来ます。この他組織外に公開するカレンダー、編集権限の設定、Googleの提供するクラウドサービスとの連携も基本機能として備えているため、使いこなせるようになると非常に強力なツールと言えます。
一方でGoogleは他との連携が前提となっていたり、共有設定するためにGmailアカウントが必要だったり、ドメインをそろえたりする必要があるなど、少々手間がかかる部分があります。またそれらの知識がないときちんと設定できるようになりません。これらの有識者がチーム内にいれば良いですが、とにかくスケジュールの共有だけに専念したいのであれば、TimeTreeというサービスなどは利便性が高いです。アプリを使っていない人にも簡単に共有でき、スケジュールに対して他者が簡単にコメントや写真を投稿して共有できるなど、コミュニティ機能も豊富です。スケジュールを中心に作業管理を行ううえではこのサービスだけで十分と言えます。
4.プロジェクト管理を行う場合
例えば1つのマーケティングチームで顧客に広告プランを提案するような場合、市場調査チームや現状分析チーム、代理店への営業チームなどでタスクを分担して進める必要があります。またプロジェクトの予算を適切にチームに割り当て、上限を超えないように管理していく必要もあります。そのために各人員の稼働状況などを可視化し管理可能な状態にしておく必要があるでしょう。そして数か月以上にわたるようなプロジェクトの場合は適切にフェーズを分割して、それぞれでマイルストーンを設定し、小さなプロジェクトの積み重ねとして進めていく必要もあります。さらには、例えば建築業界などの場合は規定の工種で管理する必要もあります。そのような進め方が求められる場合、予算、人員、タスク、期日など様々なことを管理することとなり、上記のようなカレンダーやSNSだけでは限界があります。この場合に必要なのはプロジェクト管理に特化したツールです。
このサービス群はソフトウェアや製品開発プロジェクトそのものを管理するために副産物的に作られたものが多くあり、サービスにより特徴は様々です。無料版は作成できるプロジェクト数が限られているものがほとんどですので、仕事で使うためには基本的に有料版になります。平均すると1ユーザーあたり毎月千円以上とそれなりのコストになってきますので、費用対効果が出せるのかどうか、確り吟味する必要があるでしょう。とはいえコスト管理、人員管理、権限管理、ファイル共有、カレンダー、ガントチャートなど、プロジェクトを管理する上で必要な機能は概ね揃っていますので、活用する場合は出来るだけサービスの機能をフル活用するように業務を組み替えて、最大限恩恵を受けるようにした方が良いでしょう。一部の機能を利用するだけではコストのムダだけでなく、他のツールとの2重管理が発生して非効率になる、という側面もありますので注意が必要です。
Backlogはプロジェクト管理の中でもコラボレーションにポイントを置いた管理サービスで、絵文字やアイコンが豊富に使えることに加え、社外のクライアントとも特定のプロジェクトが共有できます。またタスクからガントチャートを作成して可視化できる他、プログラムのリポジトリ管理などと連携し差分確認できるなど、エンジニア向け機能が豊富です。
Trelloはカードを動かしながら視覚的に管理できるカンバン型のツールです。他のサービスとの連携も様々あり、クラウドストレージからのファイル添付なども出来ます。無料で出来る範囲もこれらの中では多いかもしれません。ただしカンバン形式のためガントチャートには対応しておらず、Chromeの拡張プラグインが必要で、制限を感じるかもしれません。
Taskworldは本格的なプロジェクト管理サービスで、カンバン形式のタスクもガントチャートで示すことが出来ます。またアサインしたメンバーの完了レポート時に工数も登録でき、原価管理にも応用できます。そのほかメールによるタスク作成、定期的なタスク、難易度設定など、プロジェクト管理をするうえでの基本的な機能以外にもUI・UXの面でも優れていると言えます。
いかがでしたでしょうか。この領域はオープンソースでインストール型となっているものもあり、クラウドでもまだまだご紹介したいサービスはありますが、基本的にはどのような管理がメインとなるのか、その目的を明らかにしておき業務プロセスは十分に組み替えられるようにしておくと、最大限活用できるものになっていくはずです。