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あの日本上陸の中国企業の新エコカーは既に量産化を実現!
ここ数日、トップニュースになった中国の生成AI開発スタートップのDeepSeekは、⽶オープンAIの「ChatGPT」を超えるといわれる新モデルの発表で、世界中から注目を浴びています。今日は、DeepSeekと同じ浙江省杭州市に拠点を置く自動車メーカーの吉利汽車(「吉利」の発音:ジーリー)が発表したエコカーの話題を取り上げます。
吉利汽車と言えば、2025年に自社開発のEV高級車「Zeekrジーカー」が日本市場に上陸する予定で、波紋を呼んでいます。同社は、世間一般に持っているEV車の安っぽい印象を覆す目的で、「Zeekrジーカー」を開発しました。今年は年間65万台の販売目標を挙げています。
日本ではなじみの薄い吉利汽車ですが、傘下にスウェーデンVolvo Cars(ボルボ)や英国のロータス・カーズ、ドイツのメルセデス・ベンツと合弁会社を設立して中国国内外の自動車生産の最前線を走っており、現在もその影響力をさらに拡大させています。また、同社は、エコカーの野心作と言えるメタノール乗用車をいよいよ披露します。
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吉利汽車は、2025年2月7日に中国のハルビンで開幕する「第9回アジア冬季競技大会」に、350台のメタノール乗用車がサービス車両として起用されると発表しました。これは、国際的なマルチスポーツイベントにおいて、初めてメタノール車両が大規模に採用される事例となりました。
メタノール車は、メタノール(メチルアルコール)を燃料にして走る自動車のことで、従来のディーゼル車と比べると窒素酸化物、粒子状物質などの環境汚染物質の排出が少ないメリットがあります。また、メタノールは天然ガスや石炭などから製造出来るため、エネルギー源の安定供給にも寄与すると言われています。
しかし、メタノール車を乗用車として普及させるには、多くの課題をクリアしなければならないです。例えば、メタノールエンジンの低温始動性の低さ、及び出力の低さ、メタノール燃料の高い腐蝕性、そして補給インフラの整備など数々の課題を克服する必要があります。
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吉利のメタノール車が注目を浴びた一番大きな理由は、これらのメタノール車の課題を一挙に解決し、大幅に環境性能を向上させる幾つもの技術的なブレイクスルーができたからです。
一つ目は、高性能なメタノールエンジンの開発です。同社の開発したメタノールエンジンは-40度以下の極寒の気温でも起動できます。また、メタノール使用時のエンジンの熱効率は世界トップクラスの48.15%に達しています。さらに、燃料タンクは自由な比率でメタノールとガソリンを混合できるほか、エンジンは電気駆動のモードも兼ねているため、ドライバーはメタノール、電気、ガソリンと現地のインフラ状況に合わせて最もエコな補給方法に切り替えることが出来ます。
二つ目は、二酸化炭素の排出を削減する技術です。吉利は「吉利カーボンボールト」を開発し、車両から排出される二酸化炭素をリアルタイムで回収してから、グリーンメタノールに変換する技術を開発しました。このプロセスにより、車両の排出量を大幅に削減し、ほぼゼロに近い排出レベルを達成することができました。
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遡ると、吉利は2005年からメタノール産業戦略に取り組んでおり、20年間にわたって技術開発に注力してきました。いまは、関連特許300件を取得しており、世界最多のメタノール車種、保有台数、累計走行距離の記録を保有し、メタノール車の分野において絶対的な優位性を築きました。
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しかし、吉利がメタノール車の先駆者になった理由は、開発力だけではありません。同社は産業全体の発展を意識し、メタノール車にとっての新しいマーケットの立上げにも率先して注力したのです。
まず挙げられるのは、吉利による積極的な実証事件の試運転の展開です。中国国内では、工業情報化部(経産省に近い中国の政府機関)が5省市で実施した水素メタノール車試験プロジェクトにおいて、同社から908台のメタノール車を投下し、試験車両総数の90%近くを占めました。海外でもデンマーク、アイスランドといった北欧諸国での試運転をスタートし、メタノール車の適用性、安全性、信頼性、経済性、および耐環境性を総合的に検証しました。
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次に挙げられるのは、インフラ整備を推進することです。同社はエコパートナーと連携し、「製造ー輸送ー貯蔵ー使用」のメタノール水素エコシステムを構築しました。具体的に、メタノール水素自動車を中心に、グリーンメタノールの製造、メタノールの充填、メタノール電気自動車いわゆる三位一体の発展モデルを推進しています。
同社は世界初の年間11万トンのグリーンメタノールを生産する工場を河南省安阳市に設立し、2023年2月に運転を開始しました。さらに2024年10月に、同社は内モンゴル自治区アルシャーで実施する二酸化炭素を合成するグリーンメタノールプロジェクトを発足し、初期段階では年間10万トン、最終的には年間50万トンの生産量を目標としています。現在まで、同社は中国全国の主要地域に519カ所のメタノール充填ステーションを建設し、2027年末までには中国全国で4000カ所のメタノール充填ステーションが建設される予定です。
吉利はこのようなエコシステム構築の構想に基づき、メタノール車を少量の試運転から大規模な社会実装の道のりを一気に駆け上がりました。同社はメタノール車の技術課題をブレークスルーしただけでなく、社会実装の推進に必要な耐環境性、販売観点からの経済性、市場適用性、信頼性なども検証し、長期的に持続可能な発展を目指す道筋を模索し続けた結果、世界をリードするメタノール車企業までに成長しました。
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2025年を展望すると、吉利はさらなる技術力の強化を企業戦略の中軸に置き、EV(純電動)、PHEV(プラグインハイブリッド)、メタノール・水素などの技術路線を中心に、次世代の事業成長に導くポテンシャル分野を摸索し続けると同社が発表しました。そのうちのメタノール水素車は環境保全のグローバルニーズにとっての重要な選択肢として、明るい見通しが示されています。同社の第5世代メタノール・水素車の発売に伴い、生産量と販売量も好調に伸びる見込みです。
吉利は、このように普通の自動車メーカーから脱皮し、エネルギー源の安定供給と環境保全・グリーンエネルギーの発展に貢献する企業として自分の歴史をしっかり築き上げています。今後も、同社の動向から目が離せません!