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【地域で輝く学生vol.85】甲南大学〜「えん罪救済ボランティア」の取り組み〜
「えん罪救済ボランティア」とは
刑事事件で無実であるにもかかわらず、誤って犯人と疑われてしまう、えん罪。「えん罪救済ボランティア」は、えん罪を救済するための活動をしています。
私たちは、えん罪事件の救済を無償で行う、一般財団法人イノセンス・プロジェクト・ジャパン(イノセンス・プロジェクト・ジャパン Official web site – Innocence Project Japan、以下「IPJ」といいます)の活動に、学生ボランティアとして参加しています。甲南大学では、2024年度は1回生から4回生まで計168人の学生ボランティアが活動しています。
(タイトル写真:2024年12月に開催されたIPJの全体会にて)
活動内容
私たちは、刑事司法の課題を深く考える機会を提供することで、えん罪問題に対する社会の関心を広げること、そしてより良い司法を実現することを目的に、さまざまな取り組みを行っています。
甲南大学での活動としては、学生主体での勉強会を定期的に開催しており、えん罪問題や刑事司法の課題について学びを深めています。実務家やえん罪当事者、その他の有識者を招いた講演会を実施し、現場の声を直接聞く機会を設けています。また、裁判傍聴や刑事施設の参観を通じて、理論だけでなく実際の司法の現場に触れています。
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さらに、一般市民に開かれたシンポジウムやワークショップを企画し、主催することで、より多くの人々と問題意識を共有し、刑事司法の課題に関する解決策を模索する機会を作り出しています。こうした多様な活動を通じて、私たちは刑事司法の現状を学び、社会に貢献するための力を養っています。具体的な活動内容としては、以下のようなものがあります。
シンポジウムの開催
IPJが支援するえん罪事件について多くの方に知っていただくため、定期的にシンポジウムを開催しています。たとえば、2024年3月30日には、神戸質店事件をテーマにしたシンポジウムを開催しました。
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今西事件の支援
2024年8月28日と11月7日には、今西事件をテーマにしたシンポジウムを開催し、130名以上の方々に参加していただきました。
今西事件は、今西貴大さんが当時2歳の娘に暴行を加え死亡させたなどとして、起訴された事件です。今西さんは、控訴審の終盤で保釈されるまで、約5年半にわたって大阪拘置所に勾留されました。
IPJは今西さんの無実を晴らすために2022年4月から今西事件の支援をしており、私たちも様々な活動を通じて支援に関わっています。一審で懲役12年が言い渡された後、2021年からは控訴審が継続中でした。11月28日のシンポジウムは、控訴審判決を目前に控えたタイミングで開催されたこともあり、事件への関心を高める重要な機会となりました。
シンポジウムでは、企画立案から広報、当日の運営に至るまで、甲南大学のほか、5つの大学のIPJ学生ボランティアが共同で取り組みました。
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その後、2024年11月28日に大阪高裁で逆転無罪判決が言い渡されました。(詳細はこちら→【速報】今西貴大さんに無罪判決! – イノセンス・プロジェクト・ジャパン Official web site なお、現在は検察官が上告中)
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裁判所の外で知らせる甲南大学の学生たち
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前列は甲南大学の学生たち
今西事件に関する他の支援活動としては、拘置所へ今西さんとの面会に通い、文通を通じて日々の思いや状況を共有してきました。こうした活動を通じて、今西さんの無実を信じ、えん罪の解明を目指しました。控訴審での無罪判決後には、大学で交流の機会を設け、勾留中にはできなかったたわいのない話をたくさんすることができました。えん罪支援は、単なる法的な支援だけでなく、精神的な支援としても大きな意味を持つことを実感しました。
逆転無罪判決が言い渡された際には、学生ボランティアが「無罪」の旗を掲げる姿が朝日新聞にも取り上げられ、えん罪問題に対する注目を集めました。(朝日新聞デジタル2024年11月28日「「逆転判断」導いた弁護活動、支えたのは冤罪救済めざす学生たち」、朝日新聞2024年11月29日朝刊「2歳娘死亡逆転無罪 支援学生『涙あふれた』」)
高校でのワークショップ
毎年、系列の甲南高校にてえん罪事件をテーマとしたワークショップを開催しています。今年は11月25日に「今西事件」を題材としたワークショップを実施しました。この取り組みは、今西事件を通じて刑事司法の課題について高校生に考えてもらうことを目的としています。
参加した高校生からは、「刑事司法における問題点について深く考えるきっかけになった」といった感想があり、私たちの目的がしっかりと伝わったことを大変嬉しく思いました。
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東京研修
自分たちの学びをさらに深めるために、遠方での研修も行っています。
今年度は9月に2泊3日で東京研修を実施しました。国会議事堂、最高裁判所、東京地方検察庁、警視庁等を訪問し、それぞれの現場を見学しました。また、早稲田大学で心理学を教えておられる福島由衣先生や、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの土井香苗・日本代表のお話を伺うこともできました。
日頃の授業で学んでいる知識が実際の現場でどのように活かされているかを体感できる貴重な機会となりました。
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今後の展望
今年度は今西事件を中心にえん罪問題に取り組み、その深刻さと問題の本質について多くのことを学び、社会に発信してきました。しかし、私たちの社会には今なお多くのえん罪が存在し、それによって苦しむ人々がいるという現実を改めて痛感しています。このような状況を放置することは、社会の公正さや信頼を損ねるだけでなく、被害者やその家族の人生に計り知れない影響を与えます。
今後は、えん罪問題をさらに幅広く取り上げ、社会全体にその現状と課題を伝えるための活動を強化していきます。
えん罪問題の解決には長い道のりが必要かもしれませんが、一人でも多くの人が問題意識を持ち、行動に移すことで、確実に社会を変える力となるはずです。私たちはこれからも粘り強く活動を続け、えん罪のない公正な社会の実現を目指していきます。
寄稿:甲南大学