最近聴いているアルバム2021.05
Joy Division - Closer (1980)
最近のUKポストパンクは、賢く、機能的で、意識的だ。ある意味、一つのロックのあり方として理想的だし、今の時代背景やリスナーもそういうものを求めていると思う。だが、ポストパンクのもう一つの主流——曖昧さに美を見出し悲劇性に身を委ねながら、最短距離で核心を突くバンド——はさっぱりフォロワーが現れない。その潮流を継ぐ目つきの怪しいバンドが現れることを、私は待っている。
Killing Joke - Brighter Than A Thousand Suns (1986)
ギターもドラムもベースも全てが扇情的/戦場的なリズム発生装置に徹しているが、それでもここまで哀感豊かになるのは、Jaz Colemanのエモいボーカルのせいだろう。中期にこれだけスケールの大きい洗練された大人のロックをやっていたというのは忘れられがちだ。2021年に聴いても新しさは無いし、言ってしまえばとてもダサいが、いつだって真摯で強いエナジーを感じることが出来る。
My Bloody Valentine - Loveless (1991)
2012年リマスターの大きな問題は、"What You Want"に大きなヨレがあったことだ。今回の2021年盤は2012年音源を使用しているが、そのヨレはしっかり修正されている。聴くたびに「これがオルタナティヴか」と衝撃を受けた中学生の頃に一瞬で戻れる。"Sometimes"で猛烈に切なくなった直後、"Blown A Wish"のイントロで頭が真っ白になり視界がグワッと歪む感覚。
Wild Nothing - Nocturne (2012)
風の中、湖面に浮かぶ。前世の記憶に漂う。淡く儚いサイケデリアにより、胡蝶の夢の如く幻想と現実を行き来する。ドリームポップとは、その胡蝶をいかに掴むかのジャンルだ。いくら良い曲を書こうがテクニックがあろうが、掴めないバンドは永遠に掴めない。全てが作り手のセンスひとつに委ねられる。ある意味、名作を作るのが最も難しいジャンルの一つかもしれない。
Royal Blood - Typhoons (2021)
完成度が高すぎて引く。大メジャーレーベル所属の大ロックバンドの圧巻作。私には全く関係ないところで鳴らされるプロの音楽。一切の感情移入を許さない。芸術作品ではなく商品。次はレーベルがもっと貪欲に資本投下し、この迫力あるベース/ギターにImagine Dragons風のビッグなリズムを組み合わせれば、全米制覇も現実になると思う。そこに何の意味があるかは分からない。