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最近聴いているアルバム2022.02


James 『Laid』(1993)

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生身の「あなた」への庶幾がアルバムのテーマ。それは特定の人物であると同時に、ロックという底知れぬ音楽への探究心の表れでもあると思う。Brian Enoと組む前から既に音響面のアプローチに意欲的なバンドであったが、ここでは彼の手助けを得て、極限まで微細な技術が散りばめられた丁寧な傑作に仕上がっている。90年代のUKロックがブリットポップではなく本作のような作風を中心としていたなら、どれだけ素晴らしい時代になっただろう。"Say Something"



Mark Hollis 『Mark Hollis』(1998)

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ピアノとギターを使ったしっとりシンプルなソングライター作、ではない。空気の震えまで伝わってくるような静寂の緊張を活かした音作りはアヴァンギャルドですらあるし、パーカッションと金管楽器の無秩序な配置はジャズの亜種のようにも聴こえる。Floating Pointsの『Promise』に感動した人なら、本作も是非聴くべきだと思う。Talk Talkでの諸作を経て辿り着いたアートロックの極致。



These New Puritans 『Field Of Reeds』(2013)

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ざわめく木々にこだまする緑の声。夕暮れの聖堂から聴こえる姿の見えない女の歌声。生温かい風が氷を溶かす。だから何?とは言わせない引き込み力。特に素晴らしいのは、ピアノとベースが低音域でユニゾンし、そこにハイハットを効果的に使ったタイトなドラムが重なる点。この要素が作品全体に通底していることで、「ただの田舎の物好きの変わった作品」にモダンな響きと格式と統制をもたらし、一気に名作へと引き上げているように思う。9年聴き続けてもいまだに飽きない。



Milk Music 『Cruise Your Illusion』(2013)

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全てを投げ出し砂漠で悪魔とダンスを踊りたくなる。確実に向こう側にイカせてくれる非現実的なバンドだった。曲の半分を占める陶酔的なギターソロ、粗雑なオルタナサウンドの中に飛び散る火花。明るい破滅。"No, Nothing, My Shelter"のMVを観れば世界の全てがどうでもよくなる。



King Krule 『Man Alive !』(2020)

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リリースされてもう2年。世界はまるで本作を具現化したかのように混沌を極めている。脂汗と笑い声と饐えた臭い。曇る車窓に映る夜景。何も知り得ない。誰も救われない。本当にそうだろうか? 満たされることは永遠にないのか? 核心に近付けば近付くほど、答えはスルリと逃げる。徒労と虚無だけが広がっていく。



Fontaines D.C. - I Love You

素晴らしいバンドは一聴してすぐに分かる独特の雰囲気を持っている。チラチラと蝋燭のように揺れる暗いアルペジオ。焦燥に駆られるボーカル。冷たく青白い慟哭が熱く胸を打つ。他の若手バンドとは全く格の違うところにいる。このバンドこそ20年代のトップバンドであるという予想が確信に変わった。アルバムは今年のベスト大本命。



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