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Pale Waves 『Smitten』 (2024)

6/10
★★★★★★☆☆☆☆


ドリームポップの要素を強め、洗練された完成度の高いポップロックを演奏している。シンセが派手に使われていた1st『My Mind Makes Noises』(2018)や方向性に迷いがあった2nd『Who Am I ?』(2021)とは少し違うし、3rd『Unwanted』(2022)のポップパンク的な作風からも離れている。

これまでのような強がりの無い、落ち着くべきところに落ち着いた、無理のないムードが良い。サウンドからはもちろん、ボーカルからもそれは感じる。Elizabeth Fraser (Cocteau Twins)やDolores O'Riordan (The Cranberries)の影響を受け、より表現力を意識したと語っている。語尾が裏返るところなどDoloresによく似ているなとデビュー時から思っていたが、本人が気づいたのは意外にも最近らしい。

アルバムはまずSimon Oscroft (One Republic, Naked And Famousなど)のプロデュースの下LAで録音され、その後ロンドンでIain Berryman (Wolf Alice, Beabadoobeeなど)によって整えられた。適切なサウンドを見つけるプロセスは難産だったようで、”Thinking About You”などは何度もサウンドがガラッと変わったという。先行シングル”Perfume”は最初に書かれた曲の一つで、コーラス部分はシンプル過ぎるとも思ったらしいが、スパイスガールズを見習ってそのままいくことにしたそうだ。

HeatherのボーカルやHugoの安定感抜群のギターなどを別にすれば、このバンドの最大の魅力はキャッチーなメロディを量産できることだと思っている。本作でもそれは健在で、大きな名曲こそ無いが、どの曲もメロディがただただ良い。The 1975のメンバーによってプロデュースされDirty Hitからデビューしたが、彼らのように先進的で時代意識に自覚的なタイプではなく、むしろシンプルに良い曲を作り続けることに集中するタイプだと思う。そういう意味ではジャンルこそ違うが、Teenage FanclubTravisThe Viewなどに共通するものを感じている。そういうバンドは20年代においては貴重な存在だ。

単調だとか歌詞が甘ったるいなどの指摘もあるようだが、気にせず今後もひたすら金太郎飴のようにキャッチーな曲を量産していってほしい。前にも書いたけど、時代を超えて支持されるのは結局そういうバンドだし、リアルタイムの今はもちろん、20年後のティーンエイジャーにこのバンドが再評価される未来も全然見える。




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