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High Vis 『Guided Tour』(2024)

7/10
★★★★★★★☆☆☆


前作の時点でこのバンドの折衷志向は明白だったが、更にそれを強めている。ハードコア要素は更に減り、ポストパンク/ニューウェイヴ/ブリットポップに近いがそのどれでもない、サブジャンルの隙間を掻い潜る、もはやただ「ロック」としか形容の出来ない領域に進んでいる。

オーソドックスでクセの無い演奏をする。リズム隊は至ってスクエアで6/8拍子や3/4拍子すら叩かないし、シンセや管楽器が全く存在しないのも今どき珍しい。核となるのはツインギター。1990年前後のバンド群のギターを思い出させるプレイと音作りで、若干エコーかけたディストーションを敢えてフロントピックアップで弾くのが気持ちいい。前作もそうだったが、敢えてここを攻めてきたかと唸らされる。

例えば一曲目の"Guided Tour"はイントロでHouse Of Love風のリヴァーブがかったアルペジオを弾いたかと思えば、2:05〜ではDave Navarroが初期Jane's Addictionで弾いていたような、あるいはSimon Hinkler(The Mission)が『Carved In Sand』で弾いていたようなプレイを見せるし、さらに3:08〜ではThe Edge(U2)のディレイミュートカッティングにも挑戦している。

"Drop Me Out"や"Mob DLA"や”Gone Forever”はKilling Jokeがヘヴィに寄った時のメタルとポストパンクを合わせたような迫力を、あくまで上述の音作りで軽快に聴かせる。"Drop Me Out"のブリッジでフィードバックノイズをオカズにするテクニックも地味にセンスが良い。

"Untethered"や”Deserve It”ではどっしりしたリズム隊の上で柔らかなギターが躍動する。マンチェスター風、あるいは初期The Verveのような自由な雰囲気がたまらない。物憂げなインスト"Farringdon"や女性コーラスをサンプリングしたクラブ調の"Mind's A Lie"といった新機軸も主役はあくまでギターで、ブレがない。

「ここから何かが始まる」という雰囲気を感じる。逆に言えば本作はまだまだ決定版ではない。ボーカルのGraham Sayle(37歳)はバンドに人生を賭ける覚悟を決め、長年勤めてきた私立高校の技術教師を辞めたという。もう37歳。まだ37歳。元先生の挑戦し続ける姿は生徒も誇りに思うだろう。








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