2024年ベストアルバム (新譜)
理屈で傑作だなと分かるアルバムは大量にあるけど、聴いている間本当に楽しくて、聴くたびに毎回感情を動かされて、そのアルバムを聴きたいがために朝起きるような、そんなアルバムは決して多くはない。
※下線は個別レビューへのリンク
20位 Jembaa Groove 『Ye Ankasa | We Ourselves』
優しいアフロジャズ。ベルリンのパパ友が結成。まろやかで穏やかだけどレイドバックし過ぎない絶妙な塩梅で聴きやすい。Kokoroko好きなのでこれもすぐ好きになった。アフロビートを演奏しているグループとして、現代のアフロビート第二勢力を痛烈に批判しているのも実に筋が通っている。
19位 Humdrum 『Every Heaven』
シカゴのインディロックバンドのデビュー作。2010年前後に隆盛していた青春ギターポップが一度廃れ、そして再び「あり」になった。いちジャンルが一周するのを見届けてるんだから自分もそりゃ歳取るわなと思わされた。毎朝シャワー浴びながら聴いていた。すっきりとした目覚めを迎えられる気がしたから(通勤中にまた寝るんだけど)。
18位 Been Stellar 『Scream From New York, NY』
90年代後半のUSエモ/オルタナ(Humとか)や、90年代終盤のUKロック(Marionとか)を思い出させる懐かしい感じが好き。曲も良い。Dirty Hit所属ということも含め今後どのように進化していくのか想像つかないけど、シーンに迎合せず、レーベルの言うこと聞き過ぎず、やりたいことをやり続けてほしい。
17位 Casey 『How To Disappear』
王座を取りかけた2018年に突如活動停止して多くのエモファンを驚き悲しませたが、本作で完全復活した。ポストロックからの影響も公言している通り優雅で壮大な作風。それにしても"Unique Lights"はめちゃくちゃ良い。このジャンルの歴史に残るほど良い。
16位 Twenty One Pilots 『Clancy』
大ヒットするような曲は入っていないが、代わりに2人(+Paul Meany)の真摯さ・真面目さがよく出たと感じさせる作品。Bishopsとの決戦を終え、Clancyはどこへ向かうのか。そしてTylerの個人的な闘いは次の物語へどのように反映されるのか。早くも次作が楽しみ。
15位 Julian Lage 『Speak To Me』
アメリカーナ路線をさらに進め、アコースティックギターを多用した新機軸。6人のバンドの中でアコギの音を他楽器に掻き消されないように録音するのには相当苦心したという。"Omission"のアコースティックジャムは自分も参加してるつもりで下手なギター弾いてるとすこぶる楽しい。
14位 Jordan Rakei 『The Loop』
彼の実力や長所が一番分かりやすく発揮された傑作。小手先のテクニックや雰囲気だけに頼らない、しっかりしたグルーヴと良い曲に彩られたソウル。歌詞も家族への愛に溢れていて幸せな気持ちになれる。インタビューも楽しそうに受けていて、まさに順風満帆。
13位 Drug Church 『Prude』
ポストハードコアの正解が正しく力強く鳴らされている。鬼のような完成度。ポストハードコアってもうこれでいいじゃん。これ以上なんかやることあんの?なんて言ってしまいたくなる。人生の不条理を身近な題材(失踪、偽装誘拐、OD等)で描く歌詞も切迫感が伝わってきて良い。
12位 Addriene Lenker 『Bright Future』
一緒の時代を歩めるのが幸運だと思わせる数少ないアーティスト。ただ、今この人は賛否の「賛」が集まりすぎててこの路線ではこれ以上いけない気がするので、次は一般人にはもう理解されないような、「失敗作」という烙印を押されかねないような、そんな作品も聴いてみたい。Big Thiefの方でやってもらってもいいし。
11位 The Jesus Lizard 『Rack』
話が通じなさそうなヤバい奴らが鬼気迫る演奏をしている。自分たちにしか分からないような冗談をニヤニヤしながら嘯き、周りを煙に巻く。進んで一線を越えようとする。普通ならまず近づきたくないが、いかんせん音が魅力的すぎる。勘弁してほしい傑作。
10位 Wild Pink 『Dulling The Horn』
ハートランドロック、オルタナカントリー、インディロックの良さを全てバランスよく兼ね備えている。曲も演奏も安定感抜群。この手の音をやるアーティストは今年多かったけど、一番出来が良いと思う。ストーンヘンジやドラキュラにまで想いを馳せる歌詞はやや不思議系。
9位 Real Estate 『Daniel』
「成熟とは何か?を追求した」と語っている通り、奇を衒わず、新しいことに挑戦せず、自分達の長所に注力した印象。録音は更にクリーンでハイファイになっている。それが完全に功を奏している。どんなサウンドをどんな時代にやろうとも本物は残るという、当たり前すぎる事実を改めて見せつけてくれた。
8位 One Step Closer 『All You Embrace』
ここ数年活発なハードコアシーンの中でも特にメロディが強い。ここまで強いメロディを全曲で揃えられるバンドは滅多にいない。いつぞやのLinkin Parkを彷彿とさせるほど強い。Title Fightとか初期Biffy Clyro的な薄暗いエモの要素があるのも高評価ポイントだし、スターウォーズでは『シスの復讐』派だと言ってるのも共感できる。
7位 DIIV 『Frog In Boiling Water』
このジャンルの美点を全て表現出来ている。誰もやってない新たな表現ではないけど、これくらい高い質と雰囲気を作り上げられる存在は非常に貴重。2010〜20年代のインディバンドの中ではトップクラスの実力だと思う。Real Estateと同じく、やっぱ生き残る奴らは生き残るんだなという当たり前の事実。
6位 Foxing 『Foxing』
ファンやレーベルや評論家のことなど全く気にせずただやりたいことをやりたい放題ブチまけた爆発的なアルバム。もっとこういうものがオルタナティヴロックバンドから聴こえてきてほしい。私がロックを聴くのはファック、ファック、ファァァァァック!!の絶叫を聴きたいからだ。他は暇つぶしにすぎない。
5位 Mat Kerekes 『To Dream Of Something Wicked』
感傷的なアルバムだけど、元々バンド本体(Citizen)ではカラッとしたロックをやっている人だけあって、過度にナヨナヨしすぎず、どこか爽やかな雰囲気がある。そしてとにかくメロディが良い。"Morningstar"は今年最も好きな曲の一つ。録音とコーラスワークが非常に優れていることも付け加えておきたい。
4位 The Cure 『Songs Of A Lost World』
優美さとヘヴィさ、そして孤独を併せ持った、正しくThe Cureのオリジナルアルバム。こんなキャリアを持つバンドに軽々しく言えることではないけど、まさに集大成の作品だと思う。既に用意しているという姉妹作は作風がガラッと違うようなので、そちらも楽しみ。
3位 Cigarettes After Sex 『X’s』
いつも通りの世界が広がっている。このバンドとかLana Del Reyに影響されました的なアンニュイ風ポップスは2024年のムードとして世に蔓延していてその大半は没個性だが、その始祖はやっぱり格が違う。率直に言って、私はこのバンド、そしてこの世界が大好きで、7年前から抜け出せていない。
2位 Wunderhorse 『Midas』
2024年、ロック系新人バンドはもちろんのこと、メインストリームポップアーティストまでもが見境なく「オルタナ」「グランジ」「シューゲイザー」のどれかを嬉々として取り入れている。既に陳腐化してきているが、まだ終わる気配は無い。
だがいつだって私が聴きたいのはブームに便乗することしか考えていないアーティストなんかではなく、たとえ逆風の時代であっても確実に姿を現していたであろう真の才能だ。Wunderhorseは私のためのバンドだ。
1位 Christopher Owens 『I Wanna Run Barefoot Through Your Hair』
冒頭で書いた「聞くたびに感情を動かされる」というのはこのアルバムのためにあるような言葉で、一音一音に魂が宿る生々しい演奏と美しすぎるタイムレスなメロディに毎回毎回感動させられている。デビューから15年近くたった今がピークにあるように思う。本来得るべき評価と称賛を得られるよう切に願っている。
◉番外編
Loyle Carner 『hugo: reimagined (live from the Royal Albert Hall)』
ライヴ盤だからランキング外にしたけど、今年はこのアルバムがダントツで一番私の感情を突き動かした。詳しくはレビューを見てもらえばと思うけど、言葉の力と音楽の力を切実なまでに信じている1人の誠実な男がRoyal Albert Hallの大観衆を虜にしている。ヒップホップの歴史に名を残すパフォーマンス。
◉ベストソング
◉来年は
今年はそんなにだったけど、来年は2017年とか2023年を超えるくらい好きなアーティストが新譜リリースするかもしれない当たり年なので、来年に切り替えていく。
◎リリース発表済み
Architectsなど
○高確率(新曲出してるなど)
Black Foxxes, Hard Life, Knifeplay, Oscar Jerome, Peace, Steven Wilson, These New Puritans, Tom Misch
△期待(サイクル的にそろそろ)
Biffy Clyro, Big Thief, Deafheaven, Deathcrash, Deftones, John Mayer, Loyle Carner, Mystery Jets, The Strokes, Turnstile, Wolf Alice, The 1975