Foxing 『Foxing』 (2024)
8/10
★★★★★★★★☆☆
確かに前作に対しては「メインストリームに目配せし過ぎ」だの「もっとぶちまけてほしい」だの思ってはいたけれども、さすがにここまで爆発的なアルバムを作ってくるとは思ってもみなかった。感動している。
開始の”Secret History”と”Hell 99”からいきなりギッタギタのフルスロットル。ノイズまみれの爆音ディストーションの中で明日の寝起きを考えないシャウトの連続。特にシンセに導かれて謎の高揚感と快感が脳を貫く"Hell 99"はこのバンドの最高傑作曲と言ってしまいたい。この曲が気に入らなかったら、ここでもう立ち去った方がいいだろう。
その後も、8分間の爆発四散ドリームポップ"Greyhound"、前作路線のキャッチーな"Barking"、名曲を装ったクライマックス"Hall Of Frozen Head”、ピアノバラード”Cry Baby”など、あらゆる方向にベクトルを伸ばしながらヘヴィな感情を乗せた爆音&シャウトが続く。
このスクリーモ路線で56分は疲れるだろうなと聴く前は思ったし、そして実際に聴いてみると削っても良い曲が幾つか(10,11)あるなとは思ったが、ただ不思議と全曲聴いても長すぎてダレる感じは全然しない。理由は幾つかある。
まず上に書いたように意外と曲ごとのサウンドにバリエーションがあるし、ボーカルメロディにも何かしらのフックがしっかりある。そしてギターのEric Hudsonが手掛けたエンジニアリング/プロデュースも、爆音を爆音のまま、かつ超精細に仕上げていて素晴らしい。音質面でのストレスが全く無いというのは大きい。
そして何より、曲に込められた激情は怒りよりも悲しみ由来のものが実は多く(ペットの死など)、そのせいで何だか切なくなってくる感覚があり、その感覚を味わいたいがために何度も再生ボタンを押してしまう。Julian Casabrancas+The Voidz『Tyranny』やBrand New『Daisy』なんかと同じ感覚。「泣ける」ということに躊躇が無いのはエモ出身バンドの美点だ。
一聴するとただ暴れているだけの悪趣味なアルバムに聴こえがちだが、元から持っているセンスと10年以上バンドをやってきた経験が巧みに織り交ぜられている。このバンドの最高傑作だと思う。最高。
新作リリース発表の記者会見に各メディアを招いたのに誰も来なかった、というネタを映像にしたMV。よく見たらPitchforkやStereogum等に混じって音楽レビューYouTuberのAnthony Fantanoやナショナルジオグラフィックチャンネルの椅子まで用意してあって笑った。それはさておき名曲。
インスタに上げられたバンドからのコメント。黄色のところなんて、まさに私はそういうのが聴きたいんだよと思ってしまった。