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最近聴いているアルバム2024.04


Biffy Clyro 『Blackened Sky』(2002)

“57”

MineralSunny Day Real Estateといったオリジナルエモからの影響と、Karate, Braid, The Dillinger Escape Plan, ひいてはJesus Lizardみたいな奇怪なコアバンドからの影響をごちゃ混ぜにしている。しかし何より良いのはアンセミックなメロディ。この界隈ではどのバンドも持ち得なかったビッグなメロディ、彼らの後の大躍進を容易に想像できるようなメロディを、既に”Justboy”や”57”などの曲ではメンバー3人で一生懸命歌い上げている。ただし、この後2ndではストイックなハードコア、3rdではより奇怪な方向に進んだので、アンセミックなメロディは4thまで一旦お預けとなった。


Deafheaven 『Sunbather』(2013)

今となってはブラックゲイズを大衆層に知らしめた決定打として歴史的名盤の評価を欲しいままにする作品。しかし当時の米国のメタルファンのレビューを読むと、賛否両論を通り越して阿鼻叫喚となっていたことがよく分かる。「ヒップスターによるシューゲイザー要素の注入によりブラックメタルが単なるおしゃれアイテムと化してしまった」という論調が多い。大したことか?と思うが、割と本気で大論争になっていた。リスナーのみならず他バンドからも同じような批判が出ており、関係性の深いNothingDominic Parelmoなどは「Pitchfork読者へのプレゼント」と皮肉っている。

当時のバンドのインタビューを読むとボーカルのGeorge Clarkは想像以上の反響の大きさに面食らい、「私たちは自分たちのやりたいことをやっているだけで、それについて謝る必要など何も無い」とコメントするのが精一杯といった様子。真に革新的な傑作は拒絶反応も巻き込んで巨大化するんだなと言うことがよく分かる好例。私も本作の革新性は10年代ロック最大の出来事の一つだと思うし、より洗練させた『Infinite Granite』(2021)に至ってはさらに凄まじく、オルタナティヴロック史を代表する傑作と思っている。新作まだかな。


Coldplay 『Everyday Life』(2019)

“Flags”

普通のバンドなら気合い入れ過ぎて難解なアルバムになってもおかしくない方向性だが、彼らの最大の特徴である軽さ・薄さ・浅さが功を奏し、肩肘張らず気軽に楽しめるちょうど良い塩梅のアート風作品に仕上がっている。彼らは自分たちのファン層がロックオタクなどではなくミーハー層であることをよく理解しているし、そこに届かないと意味が無いこともよく理解しているのだ。
※それでも「何これ意味不明」みたいな感想は大量にあった。だから次作はより目線を下げたアルバムになっていた。”伝わるかどうか”を最重要視するバンドなのだ。

ちなみにアート志向な感じが『Viva La Vida』に似ていると思ったら、実際にあのアルバムの後に作り始めたがスクラップにした幻のアルバム『The Wedding Album』を下敷きにしている曲が多いらしい。どうりであの頃の雰囲気を感じると思った。


Nothing But Thieves 『Moral Panic』(2020)

“Real Love Song”

誰が見ても順調なキャリアを歩んでいるバンドだが、二枚目でいようとする思いがちょっと強すぎる気がする。音の表面上の「かっこよさ」や「完成度」を重視し過ぎている感じがするし、アルバムを追うごとに歌い方のクセも強くなってきた(カッコよく歌おうとし過ぎている?)気がする。

表面的な「かっこよさ」「完成度」や「既存ファンベース」「キャリア形成」といった俗念から離れ、失敗しても良いから爆発的な実験作や迷作を作ってみてほしい(たとえばMuseArctic MonkeysIceageFountains D.C.はそれをキャリア通してやっている。Fountains D.C.の新曲なんてまさかのスカスカヒップホップだよ)。リスク管理を徹底するロックバンドからは驚きの傑作は生まれ得ないし、このままでは「ライヴが上手い二番手バンド」で終わる気がする。


DMA’s 『The Glow』(2020)

“Silver”

このバンドには複雑な思いを抱いている。何しろサウンドが退屈だ。アコースティックな1stと2ndは叙情的な感じもあって良かったが、この3rdと4thは打ち込みやシンセが増え、軽薄な印象が強い。ソングライティング能力はずっと高いし特に”The Glow”や”Silver”なんかは明らかに名曲の域にあると思うが、サウンドが悪い意味で親しみやす過ぎて曲の輝きを活かしきれていないように感じる。もっと本格的で質の高いサウンドを見つけられたら格段に大きな存在になれると思う。

尤も、根っこがサウンドへの拘りをあまり感じないUKラッド系バンドなので、良い曲と良い声さえあれば、そしてフェスで盛り上がれば、まあそれでいいかという気もする。成熟を求めるのは数作先でいいかもしれない。


Pale Waves 『Unwanted』(2022)

“Unwanted”

自宅ジムでのジョギング中によく聴いている。このバンドの1stアルバムはゴスとポップロックという別に誰も結び付けようとしなかったのを結び付けたのが新しかった。今後どういう風に進化していくんだろうと好奇心を刺激する存在だった。その後リリースされた2ndはまさかのアヴリルオマージュで心底ガッカリしたけど、その路線を突き詰めた本3rdまで来ると、逆に清々しく感じられてくる。

曲は非常にキャッチーで、ほぼ全曲アップテンポで突き抜ける。方向性について外野が何と言おうが、本人のやりたいこととやってることが100%一致していれば、それが正解なのだ。今後も金太郎飴のようにキャッチーなポップロックを作っていって欲しい。ゴスメイクはやめるタイミング見失った感あるけどね。


Holy Fawn 『Dimentional Bleed』(2022)

“Sightless”

ポストロックとブラックメタルの間をふらつく暗いバンド。メインの演奏と同じくらい、シンセや効果音による背景の構築に気を使っている。もはや映画サントラ的な部分もある。ミックスも含め完成度は逆にもう少しロウな方がいいんじゃないのと思ってしまうくらい異常に高い。ボーカルは、通常時はMartin Doyle (Cloakroom)やTJ Strohmer (Knifeplay)に近い虚ろさで、シャウトすると完全にGeorge Clark (Deafheaven)。今後も追い続けたい。


Binker Golding 『Dream Like A Dogwood Wild Boy』(2022)

半分くらいアメリカーナ、カントリー、ブルースになったUKジャズの意欲作。没個性だとか古臭いサントラの伴奏みたいだとか言われてそこまで評判の良くないアルバムだが、私は大好き。映画『ミッドナイト・ラン』の田舎で朗らかで旅情がある感じによく似ている。あの映画が好きな人は絶対好きになるはず。ジャズって敷居が高いとか格式張ってるとか思い込んでる人も多いけど、本来は聴いてて気持ちいいかどうかだけが評価軸というある意味分かりやすい音楽。それを思い出させてくれる。




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