2020年 次点、ガッカリ、旧譜
ここでは、10位に入るほどではないけど好きなアルバム、逆にガッカリしたアルバム、そして今年よく聴いていた旧譜を挙げたいと思う。
■次点......5枚
Braids - Shadow Offering
Radiohead『In Rainbows』の影響が感じられるまろやかな音響と静かな緊張感。Ulrich Schnaussや彼が加入した後のEngineersを思わせる控えめでクリアなシンセ。好きな世界。ただ、BjorkやPhoebe Bridgersとも似たハイトーンで声を張り上げるボーカルが、そのせっかく丁寧で豊かなサウンドをぶち壊す場面が多いように個人的には感じたので、少し残念感。
Kllo - Maybe We Could
クールだなあ〜。無機質な打ち込みとボーカルがカッコいい。容赦なくトラップリズムを使うのも好き。もう少しこの人たちならではの個性が強ければ、10位以内に全然入ってた。いいとこ取りで上手くまとめ過ぎた感が強いかも。去年のThe Japanese HouseやHatchieとの違いはそこかな。
Mac Miller - Circles
盟友Mac DeMarcoのアルバムと同じくゆったりと、でも確実に浸らせてくれてめちゃめちゃエモいから好き。曇り空の下でブツブツと歌い続ける独特の陰鬱さが癖になる。音もメロディも特に優れてるわけではないと思うけど、他には無いこの世界が気に入った。
Mura Masa - Raw Youth Collage
これまたエモい名作。表面的に取り繕う優等生らしさが消え、この人ならではの個性が見え始めた。こっち(インディロック)方面に来たばかりの良い意味でのチグハグ感というか、手作り感、真心感が良い。特に終盤、女性ボーカル起用三連続は前作までの彼自身だったら華やかに仕上げているだろうに、どうしようもなくダサくてエモくなっちゃっているのが良い。
Moses Boyd - Dark Matter
昨今のUKジャズの盛り上がりを象徴するダークマター。トラップみたいな人力ドラム、エロいトランペット、浮遊間のあるキーボードが絡む一曲目からして明らかに次元が違うことかはっきりとわかる。私個人の好みとして、もう少しクラブ色の強い音だったらもっと好きだった。
■ガッカリ......1枚だけ
LANY - Mama's Boy
ソングライティングが凡庸。誰でも思い付くような安易なメロディばかり。覚えやすく鼻歌しやすいが、それ以上のものが全くない。前作は深いアンビエンスの中に印象的なメロディが散りばめられ、でも簡潔に仕上がっているという好バランスな作品だったが、今作は似たような薄い曲を14曲並べられても…という印象。アーティストになりたいのかアイドルになりたいのか、本作では非常に中途半端。留学帰りの洋楽かぶれ女子しか聴かんぞこれでは。
■その他......今年よく聴いた旧譜5枚
DIIV - Deceiver (2019)
これは去年聴き逃していた。キャラや話題性ではなく、シンプルにクオリティ勝負の一作。最近のシューゲイザーの中では完成度が明らかに一段も二段も上。曲や場面によってギターノイズを何種類も使い分けてるけど、決してゴチャゴチャせずクリアな音響で聴かせることが出来てるのは実力と工夫の賜物だと思う。
Alfa Mist - Structualism (2019)
昨今のUKジャズの中でも特に好きな人の2ndフル。去年買ってたけど良さに気づいたのは今年。上品で親しみやすいんだけど、忘れられない特徴的な静かさが支配していて、このアルバムにしかない独特の緊張感、空気感が漂っている。ローズピアノの音が綺麗。管楽器の熱量は高くなくクール。ストリングスは要所要所でシネマティックに効果的な使い方。
Prefab Sprout - Jordan: The Comeback (1990)
いまだに私のオールタイムベストの一つ。今年BlueSpec2のCDを買って聴きまくっていた。とんでもなく似非ロマンチックで似非ファンタジックなのに、本人は至って大真面目。メロディも完全に天才のそれ。ぶっ飛んでいる。
Tears For Fears - The Seeds Of Love (1989)
この時点までのロックの総決算とも言うべき歴史的名盤。アメリカ大陸の男性的な力強さと欧州の女性的な柔らかさが完全に融合。必然と確信に満ちた選ばれし者の音楽。『To The Born』(2017)以降のSteven Wilsonも、この美意識は多いに参考にしたんだろう。
The Police - Reggatta De Blanc (1979)
2020年に出回っているどのロック音楽よりも知的で、アイデアに溢れ、無性にカッコいい。特にAndy Summersのギターは発明以外の何物でもない。1980年代の音楽は今では殆どが古臭く聴こえるが(それも良いんだけど)、The Policeの2nd〜5thは今のロックより遥かに新しい。ロックの完成形の一つだと思う。