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”副市長の悩み”を追体験ーどのように公約達成と財政を両立する?組織の生産性向上を図るには?_2024年度キャリアアップセミナー

今回は6/28に開催しましたキャリアアップセミナー「自治体経営ケーススタディ~何に悩んで、どう判断したか~」の内容をお届けします。

企画部門・財政部門・DX部門など組織横断の部署には、事業担当部署とは違った苦労があります。皆さんの中にも、どんな方針を立てればよいか、どうしたら他部署を巻き込めるか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

今回、 講師に迎えた及川涼介さんは総務省とスタートアップ企業を経て、2022年に静岡県裾野市の副市長にご就任されました。
副市長就任後、新市長の公約達成や財政非常事態宣言の解除、自治体DXの推進などに幅広く取り組んでこられたご経験があります。
これらの経験から、市役所全体の経営に対して何に悩み、どう判断してきたのかについてお話しをしていただきました。

参加者の皆さんからは

・副市長がどう考え、何をやってきたかを具体的に知ることができた
・とても分かりやすい説明で、副市長という立場で細かい部分まで把握されていて衝撃を覚えた
・DXの取組み方針について、同じ考え方をもっていたとしても、実現するにはそれ相応の努力や工夫が必要であることを痛感した
・行財政改革は喫緊の課題である中、どうアプローチしたらいいのか、難しい部分があったが、良いヒントをいただけた

などの感想が届いており、とても好評をいただいております。

本記事では、講演中の質疑応答の内容をお届けします。

なお講演会本編は、弊会公式YouTubeにて会員限定で公開しています!
財ラボ会員で視聴をご希望の方は、下記URLから会員HPにログインすると動画を視聴できます。

まだ会員登録をしていない方は、下記から会員にご登録(無料)ください。

【会員対象】
・自治体財政部門職員
・自治体政策・企画部門職員
・財政課での業務の経験がある自治体職員
・財政に関心のある自治体職員

【質問者】参加者の皆さん
【回答者】及川涼介さん


Q1.裾野市ではデジタル部を新設されたとのことでしたが、全職員数に対して何人程度デジタル部に配置されましたか?

市職員全体の人数は、(保育士さんなどを除くと)正規職員が250人程度です。デジタル部は正規職員7人ですので少ない配置となっています。

Q2.当市では、正規職員が千人規模に対して担当部署の職員が8人程度と割合から見ても少なく、申請関連の電子化が上手く進んでいないというDXの課題があります。その点、裾野市ではかなり進んでおり、その要因は「伴走支援」 をしている部分が大きいと感じました。他に何か要因として挙げられるものはありますか?

確かに「伴走支援」をコンセプトにしていることは、ひとつ要因として大きいと思います。例えば裾野市では「なんでも相談会」を実施していて、さまざまな課の職員が相談に来るのですが、そういった場で「そんなことも分からないのか」といった言葉は絶対に使わず「伴走支援」に徹してください、と伝えています。その結果、個々の行政手続きの電子化が進んでいった経緯もあります。
あとは、デジタル部にいる7人の正規職員のうち2人がデジタル庁のBPRアドバイザーを務めるなど、他市町の方とも交流しつつ他自治体の事例を取り入れて仕事をしていることも、裾野市のDX推進の要因としてはあると思います。副市長の立場で言うと、そういう方々が活躍できる環境を整えたっていうのも良かったと感じています。
最後に、この「伴走支援」という考え方は、例えばPFI、公民連携の手法など、何か新しい挑戦をするときには使えるものだと思います。何を聞いても 絶対否定されない相談先があると「ちょっと聞いてみよう」 という気分になりやすいので、もし何かそういう組織設計を考えることがあれば、ひとつのアイデアとして参考にしていただけたらと思います。

Q3.窓口の直営化は財政健全化にどう影響しましたか?経費を抑えることができたのか、市民満足度向上のため逆に経費が掛かってしまったのか知りたいです。

窓口直営化をしたことで、2千万円程度の経費が浮き、財政健全化にはプラスになりました。これは、委託業者と市職員のダブルチェックをするのに、一定数の人数が必要となっていたことなどが要因のようです。ただ、この結果はまだ初年度だけのものなので、今後どうなるのかはまだ分からないところです。また、これはもともと財政健全化を狙った施策ではなく、市民満足度向上のための施策であったのが、結果として財政健全化にも寄与した、というところもあります。

Q4.裾野市の資産状況をお聞きしましたら、人口規模が同程度の当市よりも健全だったことが分かりました。改めて当時、財政非常事態宣言を発出した理由を知りたいです。

財政非常事態宣言発出と行財政構造改革第2期計画策定までは、今の市政以前のお話なので推察も含めてお伝えすると、これ以上短期的に減らせるものがない中で対外的にも更に踏み込んだ削減をしていくために、宣言という形にしたのかなという風には思っています。
後から振り返る立場から見ると、(財政破綻するのではないかと誤解する市民の方々も相当数いて、メリットよりデメリットが大きかったので、 )もう少しちゃんと見通せていれば、宣言まで出さなくても良かっただろうなと思うところもあります。

Q5.当市では5年先どころか来年の財政見通しもなかなか合わず、見通しを立てることが困難な中で(裾野市のように)15年の財政見通しを立てて限りなく精緻化していく、というのは非常に難しいと感じるのですが、その点はいかがですか?

「限りなく精緻化」というのはあくまで姿勢の話で、当然、税収はブレがあるので正確には見込めませんし、精度には限界があると思います。しかし、歳出やそれに見合った交付税がどれぐらいかなど、市役所として努力をすればきちんと見込める要素もある訳で、その範囲を可能な限り精緻化しよう、という考えで取り組んでいます。
更に、完全な精緻化は難しいからこそ、毎年度財政見通しを更新することを前提にしています。毎年度更新することによって、収支が合わなくなってきた時には、例えば「これを先延ばしにしましょう」とか、そういう代替案を合わせて持っておく必要があるかなと思います。
これは「将来投資と財政健全化」という市長の大きな方針を達成するためにも、財政健全化を進めつつ、抑制的すぎて将来投資ができなくならないよう、ギリギリのラインで取り組んでいる感じです。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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