忙しい人向け要約版!&事務局コラム―第1回新しい自治体財政を考える対話会

Q:参加自治体の皆さんからの質問
A:今村さんの回答

Q.枠配分を超えた予算要求への対応は?

A.枠予算を導入した自治体がよく悩むところですが、枠を超えた要求を受け取ってしまうと、枠を守った人が損したことになってしまうので「枠を超えたら受け取らない」を徹底する。
大きな見直しがある場合は、枠とは別に議論するテーブルを作ることが必要です。
枠予算だけで行革はできません。

Q.公共施設マネジメントのこつは?

A.福岡市では枠配分の枠を普通の枠とアセットマネジメントの枠に分けました。
公共施設総合管理計画の前身であるアセットマネジメント実行計画中で計画修繕費用を積みあげており、この6割~7割程度の一般財源をアセット枠として財政局でプールしました。
建替えや統合という大きな話は、枠では議論できないので、別の政策決定のテーブルに乗せて、市民の意見も取り入れながら進めることが大切です。

Q.市が向かうべきビジョンが明確でなく必要経費の集約が難しいです。

A.首長がビジョンを示さないことで職員が悶々とするのであれば、職員や心ある市民で「自分の市がどうなったらよいか」を語り合ったりするところから始めてもいいと思います。
首長がビジョンを示すのを待っていたら、次の選挙まで待たないといけないかもしれませんし、もしかすると、次の選挙でもビジョン無しで当選するかもしれませんし。

Q.枠予算を上手に導入する秘訣は?

A.枠予算は、財政課がやっていることを、みんなにやってもらうこと。
現場に権限と責任を委ねる。
その代わり、市民に一番近いところで、市民が望む判断ができるようになります。
そこを理解してもらわないと進みません。
取捨選択を自分でしなければいけないという責任感を、どのように自覚してもらえるかが、ほぼ全てです。

Q.義務的経費の削減方法は?

A.福岡市は一般財源が4千数百億円で、そのうち、枠配分予算は450億円程度です。
10パーセントくらいしか枠配分にしておらず、「財源を確保しよう」という観点だと、枠配分予算は寄与はしない。
でも、7割もある義務的経費に充てている一般財源は、3千億円弱あり、経費の積算方法の精度を高めていくことで、それなりの財源が出てきます。

Q.事業の順位付けの方法は?

A.毎年、区分調査を事前に行い、「去年までは枠だったが、今年からは枠外にしてほしい」とか「新しい政策案件が出てきたので個別調整で要求できるようにしてほしい」といった要求が夏場に出てきます。
それを財政課でマル・バツの判断し、秋の枠配分の前に、市長に対し、新たに「枠ではない」と判断した新規政策案件の相談をします。
このマル・バツの是非は、首長にしか聞かない。
裏のルールとして、予算編成の過程でどうしても枠に収まらないときや、首長の注文がついた案件は、枠外にしたり、後で係数整理でつけてあげたりします。

Q.財政課から言われて事業の順位付けをしたものの、いざ削減するとなった時は優先順位の低い事業から削減できるわけでなく、また新たな議論が始まってしまうということがあります。

A.例えば、200万円の削減が必要な場合に、200万円の事業をゼロにするよりは、1億円の事業を9千800万円にした方がハレーションは少ないです。
その意味では、事業の優先順位と予算査定は、ほとんど関係がないです。
それよりも、枠予算で、全体枠にキャップをはめて、「絶対にこの金額を守らなければいけません。ただし、どのように守るかは、お任せします」という方が、局の優先順位が如実に反映されます。
優先順位そのものに異を唱える必要がある事業であれば、枠ではなく個別に首長の前で議論した方が良いと思います。

Q.トップマネジメントで配分された予算。次年度以降はどうしたら…?

A.トップマネジメントは、あくまでも単年度の措置です。
翌年度は、財源そのものがゼロになる、という整理をしています。
翌年度以降も継続する場合には、枠の外側で対応するのか、個別調整で毎年査定を受けるのかを各局が選んで、事前調整の段階で財政課にあげてきます。


Q.シーリングを全うするために、かなり無理な見直しをしているケースがあり、これをこのままトップにあげると「こんな見直しは聞いていない」と怒るので、どうしても二重に査定をすることになってしまいます。

A.私は配分した枠の中に収めたときは財政課では一切手を入れない、枠をオーバーした要求調書は絶対に受け取らない。というルールを貫いていました。
ただし、原課がつくった予算をチェックするために、10月から12月にかけて、枠配分の経費でも調書を見て、明らかに削りすぎなものやハレーションが起こりそうなものは「説明が必要」という事項でフラグを立てます。
財政課に対する説明を求めることもあれば、首長に対する説明を求めることもあります。
なので、査定はしませんが、市長にきちんと説明をしてもらいます。
市長が「だめ」と言えば、他の事業を削って枠に収めるなど折り合いをつけます。

Q.義務的経費でも削減対象としてカットしてきましたが、政策的に削れないものや人口動態などに左右されるものがあり、削った翌年にまた増えることがあります。

A.事業の廃止・縮小が進まないという話は枠予算であっても、一件査定であっても出てくる問題です。
これを解決するためには、時には市民も含む関係者の中で
「何をやめますか?」
「どのサービスを切り落としますか?」
と議論することができる環境をつくることが一番大事で、この環境を作ることが事業の廃止・縮小を進めるための課題となっています。

**********************************
本記事の詳細はこちら
枠を超えた要求はどうしたら?―第1回新しい自治体財政を考える対話会1/3
首長にビジョンはある?―第1回新しい自治体財政を考える対話会2/3
事業の順位付けが難しい…―新しい自治体財政を考える対話会3/3
**********************************


事務局コラム

事務局コラム

枠予算は土台としての制度でありその運用にこそ深みがあるという認識を新たにしました。
例えば、今村さん時代の福岡市の枠配分予算においても、枠内の経常経費調書に対して一応目を通しているという事でした。(査定はせず、サポートという位置づけ)
確かに、苦し紛れに現場が「絶対に切ってはいけない事業を切ってくる」という話はよく聞きます。
例えば、そこに印をつけて首長に説明をしてもらうプロセスを踏むことで、財政がなんとかしてくれるかもしれないという潜在的な甘えを排除≒枠予算の質的な完成を目指しているのかもしれません。

今後開始される愛好会ではその辺りの「神宿るプロセスの一般化」に挑戦してきます。


いいなと思ったら応援しよう!

新しい自治体財政を考える研究会
ありがとうございます!