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まちづくりから見た自治体財政 ビルド&スクラップ!! ― “スクラップ”の決断はいつ・誰がするの?_2024年度分科会

みなさん、こんにちは。
一般社団法人新しい自治体財政を考える研究会(財ラボ)事務局です。

今回は、6/27・7/4に開催しました財ラボ分科会2024「まちづくりから見た自治体財政 ビルド&スクラップ!!~スクラップの決断は、いつ、誰がするの?~」の内容をお届けします。

分科会とは、講演会とは異なり狭く深く、財オタと会員が一体となって考えるワークショップです。
今回は第1回・第2回それぞれ8自治体・6自治体の参加がありました。

1回目(6/27)は、”まちづくりのシミュレーションゲーム”を参加自治体の皆様とともにオンライン上で体験。
参加者の皆さんが架空のまちの幹部職員となり、次々に迫ってくるまちの社会課題を自治体財政の目線で乗り越えていきました。
これまで、このゲームを自治体職員や学生などに実施してきた財オタの田中弘樹さんを講師に招き、ゲームを通して自治体財政の全体像を学びました。

1回目に参加した皆さんからは、

・増大する社会保障費のほか、公共施設の整備、国・県が推進する施策等、避けられない出費(ビルド)は毎年次々と発生するものであり、全員で今ある事業を絶えず厳選しなければ財政が立ち行かなくなるということを再確認した
・シミュレーションゲームの内容を財政課以外の職員にも体験してもらうともっとよい予算編成に繋げることができると感じた

などの感想が届いており、とても好評をいただきました。

2回目(7/4)は、講師である財ラボの田中さんが砥部町職員時代に取り組んできた財政健全化を図るための庁内外での取り組みを共有していただき、田中さんを中心とした財政経験豊富な財ラボメンバーが参加者からの質問に対し回答しました。

2回目に参加した皆さんからは、

・事業を評価する際の具体的な視点や財政分析の仕方を知れて良かった
・全国的な課題解決の手法について、講師の実体験をもとに講義を聞けてよかった
・講義内容がわかりやすく、イメージが持ちやすい内容でよかった

などの感想が届いており、こちらもとても好評をいただきました。
ご参加いただいた自治体の皆様、ありがとうございました。

本記事では、
分科会2回目の質疑応答の内容をお届けします。


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・自治体政策・企画部門職員
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【質問者】参加者の皆さん
【回答者】財ラボ事務局:田中(財オタ)、定野(財オタ)、栁澤


Q1.講演中に触れられていた『留保財源』について、もう少し詳しい説明をお願いします。

>田中
分かりやすく説明するために、下の図を参考に説明します。

(参考図)引用先:総務省資料

まず、どの自治体でも合理的水準で行政事務を遂行するために必要な経費を推計した『基準財政需要額』というものがあります。
次に、自治体の標準的な地方税収入見込み額である『標準税収入額』のうち75%に当たる額を『基準財政収入額』と言います。
普通交付税は、『基準財政需要額』から『基準財政収入額』を差し引いた部分に対し、交付される仕組みとなっています。
そして、先ほど申し上げた『標準税収入額』残り25%は、『基準財政需要額』とは別の使い道、自治体の手元に残る財源として『留保財源』と呼ばれています。
よって、自治体としては税収入が増えれば自動的にこの留保財源も増える、いわゆるインセンティブ的な要素もあるのかなと思います。

>定野
専門誌『財ラボvol.9(2024年6月号)』財ラボ厳選TIPS集でも“留保財源”を取り上げていますので、ぜひご覧ください。

Q2.来年度予算編成に向けて、このまま枠配分予算制度を継続するべきか、枠配分予算制度を撤廃して予算を組んでいくべきか検討中ですが、具体的に以下の疑問点があります。
① 当市の枠配分予算の規模(全体予算の3割程度)が適切か
② 枠配分予算制度を講じるメリット・デメリット

>定野
① 全体予算の枠配分予算が3割程度では、自由度が少なすぎると思います。もっと大きくやらないと原課(各部・課)は動きづらい。一番大きい枠は財政課の単位ですから、予算を動かすという点では財政課は仕事しやすいと思いますが、個々の事業を見ているのは原課なので、原課にどのくらいの自由度を与えられるのか、という点がポイントになるのではないでしょうか。私がいた足立区では、そうやってもう25年も枠配分予算制度(包括予算制度)を実施しています。

枠配分予算制度のメリットは、財政課では考えられないような様々な手立てが講じられるところでしょう。反対に枠配分から一件査定に戻ってしまう大きな理由は「原課で予算編成できなくなったので、財政課にお願いしたい」という気持ちが強くなるためですよね。 “庁内分権”と、それを支える職員の仕事に対するモチベーションを維持する制度上の意味合いも、枠配分予算制度にはあります。「一件査定で当てがえればいい」となってしまったら、原課は思考停止になってしまいます。これは一件査定の大きなデメリットでしょう。
一件査定にしても枠配分予算にしても、予算編成権は最終的に首長にあることは変わりませんが、(首長への説明を)財政課が全て行うのか、各原課がエビデンスを持って説明するための政策的な会議や話を首長にすることを可能にするのか、制度の選択によりそういった違いは生じます。

Q3.国や県から降りてくるビルドの事業は増加の反面、スクラップが進まず、優先順位がつけられても事業の廃止や縮小の決断がなかなかできないのが実情です。市民の声や首長の思いを忖度すると決断が難しいことは理解できますが、それでは一体誰が決断するのか、財政担当としては何を基準に考えていったらいいのかアドバイスいただけると嬉しいです。

>田中
まさに今回の分科会のテーマになっているご相談ですね。スクラップの決断をする人が居ないとなると、財政担当でも事業課に「これを辞めなさい」というのは中々言えないものですから「全体的に〇%カット」という「皆が取り組むのだから頑張りましょう」みたいな話になりがちです。そうして、行きつくところまで行きついたら、施設や事業ごとに何か廃止しないと財源捻出できなくなるかかもしれません。また、廃止を内部で決定しても住民から反発が出て決定したことが覆ってしまって結局廃止できないケースも結構あるかもしれないですね。
そういった面からも、私の場合は、中長期の財政見通し情報を作成し内部外部問わず多くの人に共有していくことを大切に考えました。さらに、セグメント分析みたいな情報をできるだけ早いうちから公表し、上層部や住民に現状と将来像を伝えました。
内部上層部に説明する時には『中長期の財産見通しを駆使しながら、1億円掛かる事業をした場合は、見合いで1億円分のどの事業を辞める廃止するのか考えていかないと長期的に財政がもちません。』という形で話すことになりますが、どの自治体でもなかなか「-1億円はできない」という結論に至るケースは多いと思います。難しい問題ですよね。

>定野
財政課の職員がスクラップ判断の重責を負ってしまったら、それは気の毒です。本来は、首長もしくは部長クラスが議論して決めるべきものですよね。

>栁澤
財政課としては、事業を廃止する決断をするための材料を用意できますが、決める判断は難しいので、そのための庁内や市民の組織を作るというのも一つの手ですね。

Q4. 講義の中で、(講師の田中が砥部町職員の時に)若手職員が公共施設更新の問題について優先順位をつけて検討した取り組みを紹介されていましたが、その取り組みの目的と当時の取り組みが今現在、どのように分析されているのか教えてもらいたいです。

>田中
当時、月に1回程度若手職員が集まって勉強会を開いていました。テーマはいろいろで、税金や時効の援用(時効の完成によって利益を受ける者が、時効の完成を主張すること)まで取り扱っていたところです。その中で公共施設の更新問題を考えて施設更新の優先順位表を自分たちで作成してみることになりました。
結果的に、この表作成の取り組みは内部では理解されず、ほぼ機能はしませんでした。ただ、この表を作成した若手職員が今現在は中堅どころの職員になっており、今後年齢とともにまちを背負っていく職員になってくる段階ですので、このような内容を若手の時に考えたことは、非常に大きな糧になると思います。

Q5.深刻な財政状況にも関わらず、幹部職員が保守的な方針(例えば施設の統廃合ではなく改修など)を取りがちな現状とのギャップに対し、財政担当として大変危惧しています。このギャップを埋めるために、財政状況の情報を共有すること以外にも何か重要なツールがあれば教えていただきたいです。

>田中
これは政治的な側面も入ってくると、非常に難しい問題だと思いますが、私としては下記に示すような情報やデータをセット(バラバラだと効果薄くなるかもしれない)にして、多くの人に機会があれば話したり、プライベートでイベント開催したりして様々な人に伝え続けていきました。
ちなみに、プライベートでイベントもできるようにするために、これら財政情報をかたっぱしからまちのホームページで公開していました。公開しているデータであるからこそ、いつでも、誰でも、どこでも、みんなで議論しやすくなります。興味を持ってくれる人もいましたので、やはり伝え続けていくことがやはり重要だと思います。
<財政情報・データの具体例>
〇将来像~中長期財政見通し~
〇施設別・事業別のセグメント情報
〇上位施策への貢献度評価
※さまざまな会計・財務データを、住民に分かりやすい順序にしてホームページに公開する(ホームページそのものを企業で言うアニュアルレポート化する)。

仲間を少しずつ増やしていき、多くの人を巻き込みながら進めると良いと思います。情報を出すだけでなく、理解してもらって、納得してもらうまで説明をするというスタンスが大事かと思います。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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ありがとうございます!