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“もっと知りたい!枠予算のススメ”①『対象事業の選定、配分額の計算』_財ラボ分科会2024

みなさん、こんにちは。
一般社団法人新しい自治体財政を考える研究会(通称:財ラボ)事務局です。

今回は、財ラボ分科会2024「“もっと知りたい!” 枠予算のススメ①対象事業の選定、配分額の計算」の内容をお届けします。

分科会とは、講演会とは異なり狭く深く、財オタと会員が一体となって考えるワークショップです。
本会では、福岡市に枠配分予算を導入した財オタの今村寛さんをお招きし、

「枠配分予算の仕組みは分かるけど、うちの自治体に導入する時にはどうしたら良いんだろう」
「枠配分予算を導入しているけど上手くいかない。何を改善したら良いんだろう…」

など、講演会では質問しにくいあなたの自治体が抱える枠配分予算に関する個別の課題・疑問について今村さんが相談に乗ります!

全4回各テーマは、財ラボ会員の皆さんから募集した枠予算に関する課題や疑問を基に、下記の通り設定しております。
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第1回:対象事業の選定、配分額の計算
第2回:制度の柔軟な運用
第3回:政策推進・財政健全化と枠配分予算
第4回:自律経営と枠配分予算
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各回先着応募のあった会員(5自治体)が、オンライン上で講師との対話を通じて枠予算に関する疑問点などを解決できる場となっています!

第1回目のテーマは『対象事業の選定、配分額の計算』

参加した皆さんからは、

・共通する悩みを持った自治体職員が少人数で集まり、講師の方に直接相談することができて良かった
・他市町の予算配分状況を知り、本市での問題点の原因が掴めて良かった

などの感想が届いており、とても好評をいただきました。
ご参加いただいた自治体の皆様、ありがとうございました。

本記事では、
分科会第1回目の質疑応答の内容をお届けします。


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【会員対象】
・自治体財政部門職員
・自治体政策・企画部門職員
・財政課での業務の経験がある自治体職員
・財政に関心のある自治体職員


【質問者】参加者の皆さん
【回答者】財オタ 今村さん


①(講師が紹介した福岡市の)枠配分予算の編成スケジュールの中で7月頃支出見込みの事前調査時に、ヒアリングも実施していますか?ヒアリング出席者の役職は?

だいたい7月第1週目で事前調査を締め切り、その後の約1か月間(7月中)にヒアリングを実施しています。
ヒアリング内容は、下記2点に絞って議論しています。
・枠内/枠外予算の議論
・枠内の当然増減として認めるか

出席者は、財政課係長以下と原局の財務係長係員、現場の係長係(課長以上は出席しない)です。

②(講師が紹介した福岡市の)支出見込み調書の提出対象は『枠内で小事業ごと一財1000万円以上の増減を伴うものを提出』とおっしゃっていましたが、1000万円以上の設定理由はありますか?

一般財源全体の金額に対し、どのくらいなら枠の中で調整できるか経験則で照らし合わせながら設定していました。自治体ごとの規模感や全体とのバランスで決めると良いと思います。

③(②の質問内容に付随して)当市は50万円で線引きしていますが、公用車更新や情報機器更新等について自然増としてみるか、政策拡充として対応するべきか悩ましいです。

枠内か枠外かの議論にも関わってきますが、枠内の経費は後で圧縮率がかかるために例えば土地の賃貸賃借料は圧縮してしまうと支払いができなくなってしまいます。かといって義務的経費として枠外で要求していいのか、という議論は長らく福岡市も行ってきました。結果的に、枠内にシーリングをかける経費とかけない経費に分けて対処しています。
整理しますと、
・枠外経費は、政策判断が必要なもので市長まで上げていくようなもの
・政策判断ではないものは全て枠内の中に一旦収めつつ、その中でも準義務経費(賃貸賃借料や労務単価上昇が見込まれる委託料等)は一律的なシーリングを掛けない

福岡市ではこのような概念を取り入れて調整しています。

④枠配分していた修繕料について、各部局で修繕料を圧縮するので、緊急修繕を予備費で対応することが増えた結果、予算だけ見かけ上小さくなり、執行で多くなってしまいました。そこで近年は枠外で対応していますが、枠内で対応するべきか悩んでいます。

枠内経費にすると維持修繕費に影響が出てしまうのは、どの自治体においても一緒です。
そこで福岡市では、同じ枠の中でも”アセットマネジメントでしか使えない枠(通称アセット枠)”と”その他の枠”に分けています
公共施設総合管理計画などで必要な金額を基に、来年度必要な金額を調査して、財政課とは別のアセットマネジメント推進課という部署が財源配分を決めています。
これを財政課が担うかどうかというのは、自治体ごとの組織の大きさや事務分掌によりけりだと思います。

⑤枠内予算の中でアセット枠の他にも、別枠で設けている経費はありますか?またアセット枠はどのタイミングで設定していますか?

シーリング計算上で準義務経費を別枠として設けています詳細は③回答を参照)。
なお、準義務経費は執行段階での制限はしていませんが、アセット枠は執行段階で他の枠からの流用は認めるが、アセット枠からの流用は認めないというルールを福岡市は敷いています。
アセット枠の設定時期は、①で回答した通常の7月の所要額を算定時に合わせて同じタイミングで調査し、8月末までに全体の財源フレームの中で調整し配分しているため7月・8月で行っています(他の枠スケジュールと変わりなし)。

⑥物価高騰の影響による委託料等の増額が起きていますが、来年度予算枠を設定するうえでこの物価高騰をどのように整理していくべきでしょうか。

やはり枠配分で手立てを打つ必要はあると思います。各部局に物価高騰分まで所要額として提出してもらい、圧縮率を掛けて配分した中で検討してもらうのが良いのではないでしょうか。

⑦当市でも圧縮率を毎年掛け続けていますが、何年かのスパンで圧縮自体を見直すような考えはありますか?

圧縮を掛ける取り組み自体を見直すことは考えていません。
福岡市の場合は、常に経常で5-10%圧縮率を掛けることにして、ビルド&スクラップを前提に事業をきちんと見直してもらうことを計画的にやらないと立ち行かなくなることを所管課に伝えています。自分たちの既存事業が、同じ経費で未来永続的にできると思い込んでいる意識を変える必要があります。

⑧当市はこれまで決算ベースで枠配分してきましたが、来年度からは予算ベースに切り替える予定です。庁内の文化として根強くある「使い切り予算」から脱却するために執行見直しのインセンティブ制度など既に取り組んでいることはありますか?

福岡市では、年度途中で判明した単なる契約落差等による不用額についてはインセンティブを与えていませんが、例えば委託の仕方や事業のやり方を変える等の創意工夫をし、執行残が出る場合には”節約インセンティブ制度”という制度で評価するようにしています。
なお、この制度は下記の通り年2回調査しています。

・9-10月
当年度上期の執行見込から見て、創意工夫により財源を生み出せたもので認めたものの半分を追加上乗せし、翌年度の予算要求ができるようにしています。
翌年度予算編成時に必要な枠が足りない場合に、当年度事業の中で創意工夫して節約すれば、その半分は翌年度の枠予算として追加配分する仕組みです。
翌年度予算要求枠の不足が判明し、最も所管課の節約モチベーションが上がるこのタイミングで調査しています(制度自体は通年で周知)。

・1月
この時期になると当年度の執行見込がかなり見えてくるので、制度利用の件数も増えます。
当年度下期の執行見込から見て、創意工夫により財源を生み出せたもので認めたものの半分を認定額として通知をしたうえで、当年度の計数整理の財源として返しています

本制度の実績件数や内容は、9‐10月は件数で言うとひとケタで数件、1月は二ケタを超えます。1件あたり10~20万円程度です。
なお、本制度の運用により判明した当年度の不用額については翌年度の予算編成時には算出せず、2月の減額補正もしていません。

執行中の当年度予算のインセンティブを、当該年度または翌年度へ迅速に反映できる制度設計となっています。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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