日高 剛 20周年記念ホルンリサイタル(2019/7/13)
『日高 剛 20周年記念ホルンリサイタル』に伺いました。(2019/7/13@東京文化会館小ホール)
ホルン奏者の日高 剛さんは、N響団員を経て現在は東京藝大准教授、日本センチュリー交響楽団首席客演奏者などを努めています。
プログラム冒頭はパターソンの「ナチュラルホルンのための4つの小品より”悲しげに”」でしたが、日高さんはステージ上に登場せず舞台裏で演奏し、遠くから幻想的で柔らかいホルンの響きが届いてくるという趣のあるオープニングになりました。
ステージに日高さんとピアノの三輪 郁さんが登場し、バッハの「3つの前奏曲とコラールBWV743」(コダーイ/西下航平によるホルンとピアノ版)と、リースの「ホルンソナタ」が演奏されました。しっかりと音に芯があって遠鳴りする日高さんのホルンに三輪さんの美しく劇的なピアノが華を添えました。
前半最後は作曲家の山田栄二氏に委嘱され世界初演となった「酔う人」でした。ホルンとピアノのための作品ですが、花見の席で酔っていく場面が描かれています。なんと、ステージ上にはレジャーシートが敷かれ、二人の黒子が一升瓶で酒を酌み交わします。なぜか演奏している日高さんもだんだん酔っていき、途中でネクタイを頭に巻いてホルンを吹いていました。そして、最後には酔いつぶれて黒子に舞台裏に連れて行かれるという演出で、満場の聴衆から笑いと拍手が起こっていました。
後半最初はサロネンの「無伴奏ホルンのための演奏会用練習曲」。フィルハーモニア管の首席指揮者であるエサ=ペッカ・サロネンはホルン奏者から指揮者に転向しました。作曲家としても活動しており、この作品はコンクールのために作曲されたということで、非常に高度な技法が多用されています。演奏前に日高さんがホルンの構造や奏法を実際に吹きながら説明されました。バルブを使わず開放だけでの自然倍音、右手によるゲシュトップ奏法、フラッタータンギング、声を出しながら吹くことで和音を作る重音など。これらのテクニックを駆使したサロネンの楽曲の演奏はとても見事なものでした。
次は宮沢賢治が作詞作曲した「星めぐりの歌」。演奏前に日高さんによる詩の朗読がありました。西下航平氏によるアレンジでしたが、幻想的なピアノと素朴なホルンの響きが混ざり合い感動的でした。
プログラム最後にはボウエンの「ホルンと弦楽四重奏のための五重奏曲」が演奏されました。ヴァイオリンの戸原 直さん、福田 俊一郎さん、ヴィオラの安藤裕子さん、チェロの奥田なな子さんが登場しました。印象的なホルンのパッセージからスタートし、少しずつ弦楽器が呼応していきました。藝大フィルのコンマスでもある戸原さんのリードにより、非常に充実した熱演になりました。
満席の聴衆からの拍手に応えて、アンコールにはピアソラの「忘却/オブリヴィオン」がピアノと弦楽全員が入ってしっとりと演奏され、盛りだくさんで素晴らしいコンサートは幕を閉じました。
皆さんもぜひコンパスを使ってコンサートをお楽しみください!