マガジンのカバー画像

忘れ物市

15
電車内に忘れられた様々な物達が売られている「忘れ物市」に並んでいたウェディングドレスに想いを馳せた人間達の物語。 心の片隅に、忘れていた思いがありませんか。 -恋愛オムニバス小説…
運営しているクリエイター

#浮気

月子と太一9

月子と太一9

 荒っぽいだけで全然良くないな。

 偽物の夜の中で、またも乾いた喉を潤すためにビールを一気飲みすると、月子はそんな風に思っていた。

 カズシとのセックスについての感想に自分を誇らしく思いながらも、こうしている自分にまるで現実感が湧かなかった。

 あれ以来、何度かカズシから非通知で電話があり、そのどの誘いも断らず、月子はカズシと逢瀬を重ねていた。その度に、なんでこいつと会ってんだっけ?と夢から

もっとみる
月子と太一7

月子と太一7

 意思薄弱ってこういう事かな。

乾いた喉を潤すためにビールを一気飲みすると、月子はそんな事を思いながら、いくら弁当をかき込むカズシを見下ろした。

「うまいね、コレ。」

月子と目が合うと、ニッと笑ってカズシは言った。

真昼間のラブホテルの、偽物の夜の中で、力無く月子も笑ってみせる。

 いったいどうやってこの男の誘いを断れるっていんだろう。

ここへ入る前に言い訳みたいに思った事を、月子はも

もっとみる