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忘れ物市

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電車内に忘れられた様々な物達が売られている「忘れ物市」に並んでいたウェディングドレスに想いを馳せた人間達の物語。 心の片隅に、忘れていた思いがありませんか。 -恋愛オムニバス小説…
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#昔の男

月子と太一9

月子と太一9

 荒っぽいだけで全然良くないな。

 偽物の夜の中で、またも乾いた喉を潤すためにビールを一気飲みすると、月子はそんな風に思っていた。

 カズシとのセックスについての感想に自分を誇らしく思いながらも、こうしている自分にまるで現実感が湧かなかった。

 あれ以来、何度かカズシから非通知で電話があり、そのどの誘いも断らず、月子はカズシと逢瀬を重ねていた。その度に、なんでこいつと会ってんだっけ?と夢から

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月子と太一7

月子と太一7

 意思薄弱ってこういう事かな。

乾いた喉を潤すためにビールを一気飲みすると、月子はそんな事を思いながら、いくら弁当をかき込むカズシを見下ろした。

「うまいね、コレ。」

月子と目が合うと、ニッと笑ってカズシは言った。

真昼間のラブホテルの、偽物の夜の中で、力無く月子も笑ってみせる。

 いったいどうやってこの男の誘いを断れるっていんだろう。

ここへ入る前に言い訳みたいに思った事を、月子はも

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月子と太一6

月子と太一6

 いいんじゃない?お花フリフリ。似合うよ。

 昼休み中に送ったらしい太一からのメールで、月子は二度寝から目覚めた。
 起き抜けの頭で、この前ホテルで試したドレスの写真を、母が太一に直接メールしたのだと理解すると、月子は告げ口されたこどものような気持ちになった。

「ま、いいけど。」

と、誰に対してかわからない独り言を呟くと、ベッドから飛び起きその場で全裸になって浴室へ向かった。

 何も予定の

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