【EMARF】ワンルームの中に多様なふるまいを生む家具 設計編
EMARF学生アンバサダー
VUILDが開発したEMARFというクラウドプレカットサービスを使って、
作品を作るという活動をしています。
一連のnoteでは、作るという行為によって、どんなことを考えて、どんなことが起こったのかをなるべく丁寧に言葉にして伝えます。
動機ー何を作るかを考え、テーマを決める。
対象は自身の住む学生シェアハウス(はとやまハウス)のワンルームの個室。スーツケース一つで引っ越してきたため、部屋にはベッドの他に家具がなく、一階の共用部を活動するONのスペース、個室を寝るためのOFFのスペースとして生活している。
しかし、昨今の新型コロナウイルスの影響で住民が基本オンラインとなり、音が衝突する場面が多々発生するようになった。
そこで、OFFとして使っていた自室もONの空間として使用できるようにすることを目的に、
「ワンルームの中でどのようにON空間を構成するか」
を設計のテーマとして、机を設計することとした。
移動手段が少ない土地柄、さらに移動がしづらい時勢もあって、オンラインで加工・見積もりが可能で発送まで行ってくれるクラウドプレカットサービスのEMARFを活用することとした。
設計プロセスー必要な情報を作りながら発見する。
ひとつの空間の中にON/OFFを発生させるには、部屋を分けることを始めに考える。しかし、一般的な六畳の部屋ではそれをしてしまうとより狭くなってしまうなど、この方法は現実的ではない。
どんな机がいいだろうと考えながら、まずはシェアハウス一階にある壁に細く連続してついた机(写真左/写真出典:RFA-はとやまハウスより)を、同様に置いてみるところから始めた(001)。
平面図と3Dモデリングを同時に作りながら、検討した案をハウスメンバー(建築、非建築)に見せて、二人から意見をもらいながら設計を進める。
長く連続した机は、座る位置が少しでも変わると気分が切り替わることの実感があった。ワンルームをぐるりと半周するような机は、収納スペースも巻き込みながら、連続的に広く活用できそうである。一方、全て壁に正対する形で座ってしまい、ふるまいに変化がない。
「正対している」という自分と壁の向き合い方を変えるというきっかけを発見し、次に角度を振ったかたちを検討してみた(002)。すると、一つの机に対して、二つの異なる居場所が見つかった。壁と角度が異なることは、机の一つの辺に対し異なる距離での壁への向き合い方が生まれている。
部屋の中で、自分の振る舞いを如何に増やすことができるかが重要であることがわかってきた。
これを軸にして検討を繰り返し、複数の座り方が得られつつも、机自体も全体として一体になるように更新していった(007-最終形)。
作りながら発見できた情報、つまりこの設計において発見できた設計意図は下記のようなことだとわかった。
(命題)
ONの空間を構成するために
(軸ークライテリア)
一室の中での振る舞い(居場所)を如何に増やすかによって応える
(設計意図)
①居場所が一様 →分節する → 角度を振った自律な形
②せまさ →幅広く活用できる → 連続的な構成
そして、今回の「ワンルームの中に多様な振る舞いを生む家具」に対し、できた形に言葉を添えると、
それぞれが自律的なかたちを持ち、
居場所を生むかたちを取りつつも、バラバラでなく一体的な構成とした机
であるということが作りながら考えることによって整理され、応えることができた。
設計の進める中での気づき
自身で使用する家具のため、モデリングで形を作っては並べて検討していた。しかし、たくさんの形は生み出せても、感覚的な良い・悪いの自己評価のみで、テーマに相応しいと思う形に近づかない。そこでシェアハウスの同居人に思い切って見せてみることにした。
すると、「001案の形と002案の形では何が良くなって、何が解決されているの?」のように問われ、少し悩んだ。ある形が前よりも良さそうだと思っていても、形だけでは他者に伝えられない。問われ続ける形で、一番はじめに作った案から順に寄り添うように、わかったこと・必要だと思ったことを言葉にする(させられる)と、自分がこのテーマにおいて、何を重要視していて、何を作るべきかがハッキリしてきた。
「なんとなく」を形にしてもよい。ただし、その後にその意図を汲みなおし、言葉にしておく。そして、何を重要視して次の案を考えるか、あるいは何を観察のポイントにするかを、形を見ながら整理しておく。そうすると、その形と共に、形を伝えることが出来るようになる、ということに気づかせてもらった。
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