こんなときにもCDP
COP26における「GFANZ」発足以来、エンゲージメントによって投融資先の脱炭素を推進すべきという金融機関への要求、期待が高まっています。
これについては、金融機関であれば事業規模にかかわらず、相当程度認識が進んでいるようで、算定の問い合わせも増えております。いよいよ、企業の評価軸が、金銭価値でなく環境価値にシフトするのかもしれません。
さて、金融機関だからと言って、GHG排出量の算定方法が変わることはありません。基本は同じです。ただ、スコープ3排出量における算定対象が、ほとんどカテゴリー15である点が異なるだけです。
それでも、連結におけるGHG排出量を算定する場合、組織境界の決定方法として「出資比率基準」あるいは「支配力基準」という基準を採用しますが、そのうちの「出資比率基準」と同じような概念である「帰属係数」を「投融資先の排出量」に掛けるだけなので、難しく考える必要は無いです。
とはいえ、「投融資先」が多岐に亘るため、一般の事業会社がスコープ3排出量を算定する場合よりも、ハードルは高いといえるでしょう。
融資しているからといって支配力があるわけではありませんから、データの提供もお願いベース。複数の金融機関から融資を受けているかもしれません。マンションの管理組合などだったら、どうしましょう。個人情報も関係してくるかもしれません。
そんなときには「CDP」
何と言っても、世界中のGHG排出量データが集まってきます。
そのCDPが、報告されたデータを元に、報告していない企業の排出量や、セクター毎の排出係数を提供してくれるのです。
金融機関としてCDPに署名することにより、「CDP Full GHG Emissions Dataset」にアクセスすることができます。これを用いて、投融資先の排出量が算定できます。CDPは情報開示だけじゃないんですね。
CDPは、SBTやTCFDなどの要求事項を質問書に盛り込み、情報開示のプラットフォームを目指していることは繰り返しお伝えしていますが、さらに、PCAFともm連携できるように設計されているそうです。「金融セクターが将来の新しい経済を切り開くことを支援します」と謳っているくらい。
今後、さらにその連携を加速させる予定としています。
その目玉は、データ品質のスコアでしょう。
PCAFは、投融資先排出量計算のもととなるデータの品質を開示することを推奨していますが、CDPが提供する排出量データセット内のデータ品質スコアをPCAFと整合させ、計算までできるようにする計画だとか。
なるほど、CDPを使えば、直接入手不可能なデータが得られることに加え、PCAFが要求する適切な開示まで行えるんですね。ワンストップサービスの最たるものでしょう。(褒めちぎっていますが、CDPの回し者ではありません)
そのPCAFのデータ品質のスコアは、このように、Score1からScore5まで5段階に分かれており、Score1が高品質、Score5が低品質となります。
Option1は投融資先から直接提出されたデータ、Option2は活動量ベース、Option3は金額ベースで算定されたデータという意味です。
前者では産業連関表を用い、後者ではIDEAなどの積み上げ式のDBを使うことが多いですね。Option1は、今まさに、産業毎に算定システムを構築しようとしのぎを削っている段階かと。
Option1のデータの使用が最も推奨されるのは当然ですが、もちろん、2及び3でも構いません。さらには、それ以外の方法でも、十分な説明がなされることを条件に、許容されます。
加えて、PCAFのウェブベースの排出係数(Option2、3算定用)も用意してくれています。残念ながら、PCAF賛同企業向けということですが、金融セクターでGHG排出量の算定をする必要があれば、メンバーシップになっておくのも良いのでは無いでしょうか。
ということで、個人的には「こんなときにもCDP」
コストはかかるものの、それ以上のベネフィットがあると実感しています。
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