「確実な削減活動」応援します
2023年、COP27開催中の11月9日に、ケリー米国気候問題担当大統領特使、ロックフェラー財団及びベゾス・アース・ファンドが「Energy Transition Accelerator (ETA)」という仕組みを発表していました。
私も、興味深い取り組みだと思い、採り上げていました。
途上国において電源の再エネ化を目的とするファンドだと思うのですが、いわゆる、サスティナビリティリンク債でもなければ、ビル・ゲイツ財団が設立した「Breakthrough Energy Catalyst(BEC)」のような特定セクター向けのベンチャーキャピタルでもない。
再エネ化によって削減できるGHG排出量をクレジット化、それを積極的に購入することによって、再エネ化を加速していこうというスキーム。つまり、「削減クレジット」なのです。
私が「興味深い取り組み」だと思ったのは、その「削減クレジット」の購入によって、バリューチェーン外の排出量削減(BVCM)だけでなく、自社の短期排出量削減目標に利用できる、としていたからです。
「それって、非化石証書と同じでしょ」と思った方、鋭いです。
ですが、非化石証書は、再エネで発電した電力を使用することにより発酵される証書です。「再エネ発電設備」は自前で建設しなければなりません。そう、非化石証書は後払いなのです。
資金的、技術的に乏しい途上国においては「先立つものが無いから、再エネ化が進まない」というところにメスを入れるのが、ETAだと理解しました。
すると、GHG排出量削減をコミットすることを条件に融資する「サスティナビリティリンク債」と同じかと見えるかもですね。でも、オフセットという概念はここには無いのです。
敢えて言うなら、環境省が実施している「SHIFT事業(旧 ASSET事業」が近しいところかもしれません。
このETAの成功の鍵は、2つあると思います。
1つ目は、クレジットの収益により、当該国の再エネ化が加速するかという「追加性」です。RE100が、電気事業者との小売供給契約、証書による再エネ利用では、「稼働15年内」という制限を設けたのも、そのためでした。
2つ目は、そもそも「クレジット利用による削減が認められるか」
GHGプロトコル、ISO、CDP、SBTiなどの環境NGOや、UNのNet-Zero Campaignは、「削減クレジット」によるオフセットは認めない立場。
どのような進展を見せるのか、興味津々でウォッチングしていたところ、2023年1月15日、アブダビで開催されたアトランティック・カウンシルのグローバル・エネルギー・フォーラムにおいて、ETA開発における次のステップが発表されました。
ETAを導く一連の大原則、その開発に情報を提供するハイレベル協議グループの設立及びETAの設計に貢献する専門家や機関のコアチーム結成が明らかになったのです。
まず成功の鍵2について。
今回のプレスリリースでは、利用方法についての表現がありませんでした。
なので、この議論がどのようになっているかは不明。関連していると思われる記載はこちら。
ネットゼロの中和とは違う形での、「削減貢献開示ルール」のようなものが生まれるのでしょうか。企業としてみれば、ネットゼロに向かって最大限の努力をしているわけで、ステークホルダーから、その努力が評価され、事業に寄与するのであれば、どんなスキームであってもウェルカムでしょう。
成功の鍵1については、昨年より高まっている「グリーンウォッシュ批判」を受け、6項目からなる「ENERGY TRANSITION ACCELERATOR GUIDING PRINCIPLES」が示されました。
IC-VCMのCCP(Core Carbon Principle)やCORSIA、パリ協定6条の関連ガイダンスなどの「高品質なクレジット」定義とダブるところがありますが、「短期」であることと「電力の脱炭素化」に特化しているところがポイント。
逆に言うと、電力の脱炭素化、再エネ化は、資金さえ手当てできれば、「短期的」に達成できる、「確実な削減活動」ということでしょう。技術的に困難なセクターの脱炭素化をにらみつつ、できることをできるだけ早くやろう、というイニシアチブと言えるかもしれません。
COP27開催中に発表、公表された、様々なイニシアチブ。
ほとんどは、アドバルーンのようなものという印象を受けました。
現在は、制度の作り込みが始まっているところでしょうか。
これから続々と明らかになっていくでしょう。
COP28へ向けて、ウォッチングも忙しくなりますね。
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